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継承

「パパ、使わない剣とか持ってない?」


ある日、ユリがそう尋ねてくる。


「急にどうしたの?」


「学校で剣術の授業があって、家に剣がある人は持って来ても良いんだって」


「そんな事もするんだ。でも、剣ならエレオノーラさんがいっぱい持ってると思うけど」


「私の剣は重いから、流石に持てないと思うぞ」


「それなら腕輪を剣に変えて持って行けばいいか。最近は滅多に使わなくなったし、学校に行く時はユリに持たせた方が有効だよね」


「そんな貴重な物を持たせて・・・あんまり自慢するんじゃないぞ?」


「うん、分かった」


「でも、ユリに剣術の授業って必要無いよね」


「普段から私と特訓しているからな」


授業なので受けざる終えないが、昔からエレオノーラさんの特訓を受けているので、同年代の8歳の男の子はまず相手にならない。

それどころか、剣術は不得手だが大人で魔王なオルフェさんに、10本勝負で4本は勝ちを取れるくらいに成長している。


「子供相手だから、ちょっと手加減してあげただけですぅ〜」


その時の彼女は、汗だくになりながらそんな事を言っていた。


「やるからには全力でやって来るんだぞ」


「いやいや、お互い怪我しない程度に抑えてね?」


ひとまず腕輪を持って行く事で話はついた。


「ところで、ユリの学校って貴族のクラスもあるけど、そういう子達って特別な剣を持ってたりするんですか?」


「代々受け継がれてきた剣だったり、親に買って貰った強い剣などを持ってるだろうな」


「そう言えば、剣術の授業だけ合同でやるって言ってたよ」


「講師が足りないのだろうな。流石に平民と貴族で戦わせる事は無いだろうが、やはり何か特性のある剣の方が良いのか?」


エレオノーラさんは再び悩み始める。


「ならいっその事、聖剣でも持ってく?」


「それはやり過ぎだ。第一、コタケ殿以外持たないだろう」


「それもそうですね」


「聖剣?聖剣って銀色の剣の事?」


「そうだよ、ユリはあんまり見た事無いかな」


そう言ってマジックバックから聖剣を取り出す。


「それ、私持てるよ?」


サラッとそんな事を言い、シーンッと沈黙が流れる。


「ごめん、もう一回言って?」


「ユリ、それ持てたよ。前にね、間違って取り出しちゃったんだ。すぐに戻して使わなかったけど」


エレオノーラさんと目をパチパチさせながら見つめ合う。


「何か別の物と勘違いしている可能性もある。一度持たせてみてはどうだ?」


「そうですよね。ユリ、この剣握ってみて」


このマジックバックに他の剣は入れて無いと思いつつ、ユリに剣の柄を握らせると・・・


ヒョイっと木の棒を扱うかの様に、軽く持ち上げるのだった。


「私の目がおかしいのか?それとも実は聖剣では無いとか」


まだ信じられないエレオノーラさんが柄を握ると、全く持ち上げる事が出来なかった。


「コタケ殿、どういう事だ!?」


「俺に聞かれても・・・やっぱり俺の血を受け継いでるからですかね?」


「考えられるのはそれしかないが、それだとあと2人持てるのではないのか?」


ユリが持てるなら、ユウキとリンティアも持てる事になる。


「ユリはこの剣持ってみて重たくない?」


「全然?軽いよ」


俺が持つと大人じゃないと持てない位の重さだが、持つ人によって重さが変わるのだろうか。


「これはこれで喜ばしい事だから良いのかな」


「あの誰も持てなかった聖剣を持ったのに、軽く流すんじゃない」


「もしかして、ユウキ達も持てる様になったら聖剣争奪戦始まっちゃいます?」


「貴族の受け継ぐ剣は基本的に長男が引き継ぐ事になるが、実力を示せば次男達が持つ事もある」


「最初は平和的に話し合いで、それでも決めれなかったらしかないか・・・」


早くも起こるか分からない未来の事に頭を悩ませる。


「そう言えば、さっきは冗談でしたけど本当に聖剣持って行けますね」


「却下だ、却下!そんな物を持って行こうものなら、全生徒の心をへし折る事になる」


「でも盗まれない点では最強ですよね?」


「腕輪だって、使用許可の無い者は使えないから大丈夫だろう」


エレオノーラさんの説得により、聖剣を持って行く案は無しで最初の腕輪を持って行く案のままとなる。


「まさか聖剣を使えるとはな・・・だがこれなら、止めておいたアノ特訓も出来そうだな。よし、早速特訓だ!」


そう言って、ユリに聖剣を持たせて外へと出て行ってしまった。


まさか、聖剣を持てるとは予想だにしていなかったが、何かあった時の保険が増えたのは喜ばしいと思うのだった。




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