お蔵入り
「うおぉぉー、凄いのじゃ!」
「これは興奮しますね!」
ある日、庭の方からティーとエレオノーラさんの大きな声が聞こえてきた。
「2人とも何してる・・・の?」
その場に向かうと、真っ二つに切断された木々と翼に何か物騒な銀色の物体を取り付けたシエルさんがいた。
「ねぇ、本当に何してるの?」
改めて問いただす。
「コタケ殿、これはなんというか・・・」
「実験じゃ!」
「実験?」
「うむ、シエルの翼に装備を付ければ強くなるのではと思ったのじゃ」
その装備は翼全体を覆い、翼の先端が尖り外側の風切羽にはナイフ程の刃が連なり殺傷能力が高そうだった。
「シエルさんは納得してるの?」
「言われて付けみただけ」
本人は良くも悪くも思っていなさそうだ。
「それにしても何処でこんな装備見つけてきたの?」
「それは私がヴォグルの親父さんに頼んで作って貰ったのだ」
「よくそんな訳の分からない物を作ってくれましたね」
「かなりノリノリだったぞ。初めて作る武器だったからな」
そこは流石、ドワーフの鍛治士である。
「でも、これは本当に物騒過ぎるような」
「まぁ、待つのじゃ。この武器の力を見てみるのじゃ」
それは真っ二つにされた木々を見れば分かるのだがと思っていると、ティーが10m程の岩を運んで来る。
「よし、シエルよ。やってやるのじゃ」
「うん」
そう言って羽ばたき空へと舞うと、急降下をして岩を目掛けて左の翼を当てると、豆腐の様にスッと切れてしまうのだった。
「うむうむ、想像以上の威力じゃ」
「しかも空からの攻撃となると簡単に対処出来ませんからね、これは本当に凄いですよ!」
「シエルは小回りも効くから、妾も負けるかもしれんの」
2人はかなり興奮気味だ。
確かに格好良いのだが、シエルさんのフワフワの翼の方が好きだ。
「いやぁ〜、オリハルコンで作った甲斐がありますね!」
「そんな物で・・・」
この世界でもトップクラスに硬い鉱物だ。
「能力はこれだけでは無いぞ」
エレオノーラさんの指示に、今度は翼を後ろに引き勢い良く前に振り払う。
すると、風切羽の部分の刃が一斉に飛んでいき岩へと突き刺さる。
「見ろ、遠距離攻撃も容易いのじゃ!」
「凄いには凄いけど・・・」
刃が飛んで行った事で、本来の白い翼が一部分見えてしまっている。
「これは飛んだ刃を回収するか、新たな物を装着するしか無いな」
「とんでもない費用になりません?」
「そこは安心するのじゃ、金は妾の鱗を売って確保しておるからの」
「あとは少しだけだが素材提供者もいるからな」
それはきっとホープの事だろうと思う。
「シエルさんは本当に嫌じゃないんだよね?」
「強くなれてむしろ嬉しいじゃろ?」
「別に強さは求めてない」
「でもほら格好良いだろう?」
「よく分からない」
2人は必死に良さを説明するが、本人は本当にどうでも良さそうだ。
嫌なら嫌って言ってくれるだろうしと、あまり気にしないでおこうと思ったその時、
「何あれー!」
子供達とアリーがやって来る。
「あのシエルさん、そちらはいったい?」
「この2人が作った武器」
「「カチカチー」」
「こら、危ないのじゃ」
「それは取り外し出来るんですよね?」
「もちろん出来ますけど、お風呂や寝る時以外では付けてた方が便利じゃないですか?」
「うーん・・・私はいつものシエルさんの翼の方が良いですね」
「アリシアはそっちの方が良いと思う?」
「はい、私はいつものシエルさんの翼が好きですよ!子供達もそうだと思います」
「「フワフワの方が好きー」」
「うん・・・なら付けない」
「「えっ!」」
エレオノーラさんとティーが驚きの声を上げる。
「いやでもほら、これを付ければ強くなれるし」
「そうじゃ、これは一品物じゃぞ」
「別に強さは求めてないし、それに・・・重いから疲れる」
2人はガーンと膝から崩れ落ちる。
シエルさんは、ガシャンガシャンと装備を脱ぎ翼を伸ばすと、子供達に触らせてあげて喜んだ姿を見て満足そうにする。
こうして、お蔵入りとなったこの武器はヴォグルさんの元で溶かされ、別の武器へと再利用の道を辿るのだった。




