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魔法サムライ

ある日、ヒノウラにて定期的に行っている米の調達をした帰り、


「やぁー!やぁー!」


城内の中庭にて、大きな声を出しながら刀を振り下ろす、黒髪ポニーテールの袴姿の女性が居た。


「シオリさん、あの方は?」


「あぁ、彼女は・・・」


「あっ、姫ー!」


こちらの話し声に気付いた女性が振り返ると、その姿に目を見張る。

何故なら右目に黒い眼帯を付けていたのだ。


「姫、そちらの方は?」


「こちらは私の命の恩人のコタケ様ですよ」


「あぁー!貴方がコタケさんなんですね!初めまして」


「初めまして・・・」


「コタケ様、すみません。彼女は私の護衛の1人のコマチと言う者です」


「コマチです!」


「えっと、コマチさんは刀の練習中ですか?」


「そうなんです。これも姫を守る為の訓練です」


その割には動きが大雑把で素人っぽく見えた。


「そうです。コタケ様、良ければコマチの相手をして下さいませんか?」


「急にどうしたんですか?」


「コタケさんも剣を使うんですか?」


「少しだけ」


「なら、戦いましょう!さぁ、早く早く」


強引に中庭に引っ張られて、何故か戦う事になる。


「行きますよー」


真剣そのままで始まり、勢い良く突っ込んで来るかと思いきや、


「はぁ!」


いきなり氷の魔法を放って来た。

予想外の行動に驚きはしたが、魔法無効化のネックレスを付けていたので当たる直前に消え去る。


「あれ?なんで効かないんですか!」


「コタケ様、彼女は火・水・風・土の4つの属性の魔法を使えるのでお気を付けて」


「姫、敵に情報を与えないで下さいよー」


「なら代わりに、俺には魔法を無効化するアイテムがあるので攻撃しても意味ないと思いますよ」


「そんなの反則ですよ!そうなったら・・・この刀のサビにしてあげます!」


今度は勢い良く刀を振り上げて突進してくる。

そこで、聖剣を構えて防御すると、


ガキンッ


鈍い音と共に、刀が折れてしまった。


「「あっ」」


「これは、コタケ様の勝利ですね」


シオリさんは刀が折れた事を気にせず言う。


「コマチさん、刀・・・」


「し、し、し・・・師匠と呼ばせて下さい!」


「えっ?」


「その強さ、おみそれしました。是非とも私に稽古を付けて下さい」


何から何までいきなりでビックリする。


「あの、俺自身は全く強く無くて武器が強いだけなので、人に教えれる事は何も・・・」


「いえ、師匠!そんな謙遜なさらずに!」


「うーん・・・あっ!俺よりも強い人が居るのでその人の方が良いですよね?」


「師匠より強い人ですか?」


「連れて来るので待っていて下さい」


1度家に戻り、エレオノーラさんを連れて来る。


「それで、私を連れて来たと?」


「エレオノーラさん以外に適任はいないので」


「師匠、この人が師匠より強いんですか?」


「俺に剣を教えてくれた人です」


「おぉー!」


「おいおい、そんなに期待値を上げないでくれ。剣と刀は扱いが方が違うんだ」


「そうなんですか?」


「もちろんだ。そもそも形状も違うだろ?第一、私自身もそんなに扱った事は無いんだ」


「とりあえず、一旦どれくらいの実力か彼女に見て貰いましょうよ」


「まぁ、別に構わないのだが。あの人形を使っても良いか?」


「良いですよ」


刀を借りたエレオノーラさんが、打ち込み用の人形から5mの位置立つ。

ちなみにさっきの壊した刀はなまくらで、練習で使っていただけなので問題無いそうだ。


「ふぅ・・・」


エレオノーラさんは刀を鞘に収め、一呼吸置いた所で刀を抜く。

すると、コトッと5m先の人形が真っ二つに切れたのだった。


「居合斬りだったか?私が見た事のあるサムライがやっていたの真似してみたが、私にはこれが限界だな。そいつは、抜刀の瞬間すら分からせずに切っていつの間にか納刀していた」


「す、凄い。斬撃を飛ばしたって事ですか?」


「そうだな。慣れれば誰でも出来ると思うぞ。だから、私に稽古を付けて貰う程でも・・・」


「師匠!」


コマチさんは、エレオノーラさんに向けてそう言う。


「流石です!あの居合斬りまで習得されているとは!是非とも稽古をお願いします!」


「私も見よう見まねで・・・」


「師匠!」


勢い良く頭を下げてお願いする。


「うーん・・・はあ、仕方ない少しだけなら」


「やったー!これから毎日お願いします!」


「ま、毎日?」


「んんっ!」


コマチさんが大喜びしたのも束の間、シオリさんが咳払いをする。


「コマチ、あまり無理を言うものではありませんよ」


「姫・・・」


「シオリ殿、私も最近は暇な時間が出来て手持ち無沙汰だから心配しないでくれ」


「エレオノーラ様がそう言うのであればよろしいのですが、こちらも教えて貰うからには報酬を出させて頂きます」


「日程に関しては週に2、3回が限度だがな」


「もちろん、それで構いません。コマチ、よろしいですね?」


「はい!」


稽古を付けて貰うのに変わりは無く、もう一度大喜びする。

そんな彼女を尻目にシオリさんが小声で、


「本当は諦めて貰う為に戦わせたのですけどね」


そう言った。


「それはどういう事ですか?」


「コタケ様も見た通り、彼女の魔法は強力でしたでしょう?」


「4つの属性持ちですもんね」


「その強さも城の中でも1番だったのですが、つい最近になり魔法サムライを目指すと言い出しまして・・・」


「それは魔法剣士みたいな?」


「えぇ、その様です。ただ、刀に関しては全くのど素人で、負けを機に諦めてくれないかなと思っていたのですが、まさか弟子を懇願するとは思いませんでした」


これで、刀の振り方なども大雑把だった理由が分かった。


「でも、エレオノーラさんに教えて貰えるので大丈夫ですよ」


「先程の居合斬りは見事な物でしたね。これで、コマチも強くなるなら何もしません」


諦めさせるのを止める様だ。

そんな話をしている最中も、喜びながら刀を振っていたコマチさんに、エレオノーラさんがある事を聞く。


「聞いても良いのか分からないが、その右目の眼帯は何があったのだ?」


俺も初めから気になっていた。


「実はこの右目は・・・」


敵にやられた過去でもあるのか、重い雰囲気の中・・・


「オシャレで付けてるだけですよね?」


シオリさんがそう言った。


「あっ、姫〜言わないでくださいよ〜」


「眼帯を付けていた方が舐められず、強そうに見えるし格好良いと言っていたじゃないですか」


「まぁ、そうですね。ただのファッションです」


まさかのそんなくだらない理由だった。


「ちなみに聞くが、それで右目は見えているのか?」


「あはは、見えてる訳無いじゃないですか」


「ほぉ〜・・・」


「あの、師匠?」


「よし、初めての稽古を付けてやろう」


「おぉー、お願いします!」


「なら、まずはその眼帯を取るんだー!」


「えー!嫌です!私のアイデンティティが!」


「アホか!まともに刀を振った事の無い奴が、片目が見えない状態でどうする!」


「でも、ほらやってうちに上手く・・・」


「まずは両目の状態で上手くなってから言えー!」


エレオノーラさんは素早くコマチさんの後ろに回り込み腕を掴む。


「コタケ殿、彼女の眼帯を取ってくれ」


そう言う。


「嫌だぁ!離して下さい師匠ー!」


「大人しく師匠の話を聞くんだな」


「えーっと、失礼しますね」


「いやぁぁーーー!」


そんな悲鳴が城内に響き渡り、初めての稽古?は完了し、両目で刀を見ながら振るコマチさんの姿が見られるのだった。





次回の更新、1日遅れて2月16日となります。

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