表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/455

図書館

ラーブルク龍王国に来て3日目になった。

今日から、エレオノーラさんが騎士団の訓練に参加する事になったので1日中留守にしている。

アンさんとリビアさんも、この滞在期間中に魚料理をマスターすると言って、朝から調理場に行っていた。

俺とアリーは、朝食を食べた後やる事がなく、暇を持て余していた。


「どうしよう、今日一日何もする事ないね」


「そうですね、ティーフェン様も今日中に魔道具を作成すると言って、部屋に籠りっきりですからね」


「ん〜何かないかな〜」


と考えていると1つの案が浮かんだ。


「そうだ!城の中にあった図書館に行ってみない?」


「名案ですね!私も入ってみたいと思ってたんです」


そういうわけで、俺とアリーは3階にある図書館へとやってきた。

装飾の施された扉を開けると、そこには沢山の本棚が立ち並び、びっしりと本が敷き詰められていた。


「うわー、すごいね」


「そうですね、マゼル王国の城内にも図書館はありましたが、それ以上の大きさかもしれません」


「これくらいの大きさだと、司書さんとかいそうだけど、誰1人見当たらないね」


「そうですね、今は不在なのでしょうか?」


と話していると奥の方から、バサバサという大きな音が聞こえた。

なんだろうと思い、音がした方に行くと本の山ができていた。


「本棚から落下してきたのかな?」


とりあえず本を拾おうと近づこうとした瞬間、本の山の中からいきなり手が出てきた。


「うわっ!」


「きゃあ!」


俺とアリーはびっくりして尻餅をついてしまった。

出てきた手は引っ込んでいき、次は本の山がモゾモゾと動き山が崩れ出していった。


すると、中から茶髪で眼鏡をかけた少女が出てきた。


「ふぅ、危なかったぁ〜」


その少女は、服についた埃を払い山から出ようとした所で、こちらの存在に気がついた。


「あれ?こんな所に人がいる?」


「えっと、こんにちは」


とりあえず立ち上がって挨拶をした。


「はじめまして、何か御用でしたか?」


「俺達、2日前からこの城に滞在してて、図書館があるって聞いて来てみたんですけど・・・」


「あっ!ティーフェン様が連れて来たお客様ですよね?私、メルシュと言います。こちらの図書館の司書をしております」


「司書さんでしたか、俺は、コタケ ワタルと言います」


「私は、アリシアと申します」


「お二人ともよろしくお願いします」


メルシュさんは、活発で元気な人だった。


「ところで、メルシュさんは何をしていたんですか?」


「高い所にある本を取り出そうとしたら、バランスを崩して倒れて落ちて来た本の下敷きになっちゃいまして」


「怪我とかされてませんか?」


「大丈夫です!こう見えて丈夫ですから!お二人は何かの本をお探しですか?ここには何でもありますよ!」


「特には無いんですけど、オススメの本とかありますか?」


「そうですね〜、ではこの国の建国のお話が書かれている物とかどうでしょうか?」


「なるほど、面白そうですね。それ読んでみたいです」


「分かりました。アリシアさんは何か読みたいものありますか?」


「では、お料理の本とかありますか?」


「ありますよ!じゃあ持って来ますね」


そう言い、奥の方に行った。


「アリーって料理するの?」


「いえ、一度もしたことはないのですが、私も料理をできた方が良いかなと思ってまずは本で勉強しようと思って」


「そうだったんだ。アンさんとリビアさんもいるし、アリーならすぐ上手くなれるよ」


「はい頑張ってみます。あの、料理ができるようになったらワタルさんも食べてくださいますか?」


「もちろんだよ!楽しみしてるね!」


そこで、ちょうどメルシュさんが本を持って戻ってきた。


「こちらがラーブルク龍王国の歴史書で、こちらが料理の本になります。あちらに椅子と机がありますので、ゆっくりお読みください」


俺とアリーは椅子に腰掛け、本を読み始めた。

歴史書には、ラーブルク龍王国の始まりについてこう書いてあった。


“はるか昔、ドラゴンの頂点として君臨する龍王が各地で暴れ回っていた。

龍王を討伐しようと各国は討伐隊を結成したが、誰1人龍王を倒す事は出来なかった。

そんなある日、小さな村に1人の勇者が誕生した。その勇者は瞬く間に力をつけていき、そのうち勇者に敵う者はいなくなった。

そして、勇者は各国から龍王の討伐を依頼される事となる。勇者はそれを引き受け、龍王が住むとされる森へと足を踏み入れた。

すると龍王はすぐさま勇者の気配を察知し、戦いが始まった。

お互いに激しい攻防を繰り返し、そこには何人たりとも近付く事は出来なかった。

戦いは三日三晩続き、森の木々は薙ぎ倒され元の地形とは大きく変わり果てていた。

両者ともに疲れが見え始めてきた所で、突如龍王の腹から大きな音が鳴り出したのだ。

それを見兼ねた勇者は自身の食糧のほとんどを龍王へ分け与えた。

龍王は勇者の強さとその優しさにより、暴れない事を約束し、勇者に助力する事を誓った。

戦いを終えた後、龍王を制した勇者の元には多くの人々が集まり、いつしか国が出来ていた。

国は元々龍王が住んでいた森だった場所に作られ、龍王から名を授かり勇者を初代国王とするラーブルク龍王国が誕生したのだった“


(これが、ラーブルク龍王国の始まりか・・・なんかご飯あげて和解するってつい最近もあった様な気がする・・・)


一通り読み終えた所で休憩していると、


「おっ?なんじゃお主らもここに来ておったのか?」


後ろからティーがやってきた。


「あれ?魔道具作ってるんじゃなかったの?」


「少々調べ物があってな、ここにやってきたんじゃ。それよりもお主は何を読んでおるのじゃ?」


「あぁ、この国の歴史の本を借りてたんだ」


「ほぉ〜なるほどのぉ。で読んでみてどうじゃった?当事者の妾がなんでも答えてやるぞ」


「やっぱり、ここに書かれてる龍王ってティーの事なんだな」


「勿論じゃ、そもそもこの国のラーブルクという名前自体、妾の名前なんじゃから」


「そうだよな、所で昔は色んな所で暴れ回ってたみたいだけど?」


「そ、それはな妾もまだ若かったわけじゃしな・・・」


ティーは少し焦ったようにそう言った。


「若かったって、これ何年前の話なの?」


「大体1000年くらい前じゃの」


「その時には2000年間は生きてるんじゃん!」


「2000年というても、人間の年齢からしてみたら20歳くらいなんじゃぞ、まだまだ若いわい」


「いや、それでもちょっとは自重しようよ。それとなんか勇者との和解の仕方がつい最近も見たことがある感じなんだけど」


「いや〜あの時は、長時間の戦いで腹が減ってしまったんじゃ。そんな中で、あやつからご飯を貰って申し訳なくなっての・・・」


「なんか意外な展開でちょっと拍子抜けだったよ・・・」


「それでも3日間は本気で戦闘しておったぞ」


「この場所は元々森があったんだっけ?」


「お主達が住んでいる程の物ではないが、それなりの大きさの森があったな。全て消し飛んだのじゃがな」


「ティーも大概凄いけど、それに張り合う勇者も中々だよね」


「あやつは今まで会った人間の中で1番強かったのじゃ」


「どんな感じの人だったの?」


「まぁ意外と自由奔放な奴じゃったのぉ」


「自由人なんだ?なんかイメージと違うな」


「逆にどんな奴をイメージしておったんじゃ?」


「屈強で正義感溢れる人かな?」


「屈強って、あやつも乙女なんじゃが」


「ん?乙女?勇者の人って女の人?」


「そうじゃぞ」


「まじか!男の人だと思ってた」


「妾と張り合ったというだけでよく間違えられるが、れっきとした女じゃ」


「すごいな・・・そういえば勇者の人が初代の国王様なら、テンメルスさんにもその血が流れてるっていうこと?」


「いや、あやつは国が安定し出した所で信頼できる部下を国王に任命して旅に出たんじゃ」


「確かに自由人だな・・・」


「じゃからテンメルスの先祖は2代目国王じゃ、結局あやつは結婚もしておらんし子供もおらんからの」


「やっぱり本だけじゃ、分からない事もあるな」


「まぁ知りたくなったらいつでも聞くが良い」


「うん、ありがと」


「それじゃあ、妾は魔道具作成に戻るとするのじゃ」


そう言って、ティーは本を持って部屋へと戻って行った。

ティーが戻ると同時に、ちょうどお昼ご飯の時間になったので、1度部屋に戻る事にした。


「アリー、お昼になったし一旦部屋に戻ろう?」


と声をかけてみたのだが、無反応だった。


「あれ?おーいアリー?」


気づく気配がないので目の前で手を振ってみた。


「はっ!すみません気づきませんでした」


「そんなに良かったの?」


「はい!とても参考になりました!」


「ますますアリーの料理が楽しみになってきたよ」


メルシュさんに戻る事を伝えて、部屋に行きハウザーさんにお昼ご飯を持ってきてもらった。


「あれ?クロしか出てこないな?」


いつもなら食事の匂いに気づき、スライム達全員すぐにベッドの下から出てくるのだが、今日は一向に出てこなかった。

不思議に思いベッドの下を覗いてみると、そこに他のスライム達はいなかった。


「あのハウザーさん、他のスライム達がどこに行ったか知りませんか?」


「あぁ、お連れのスライム様達でしたら、騎士団の訓練に参加しております」


「いつの間に・・・」


「先程エレオノーラ様が、手が足りないと言ってこちらにやって来て連れて行かれました」


「そうだったんですね」


(スライム達、騎士団相手に大丈夫なのかな・・・)


俺はスライム達の事が少し心配になったが、エレオノーラさんも付いてるし大丈夫だろう。


その後、お昼ご飯を食べ終えた俺は、再び図書館に戻ってきた。

ちなみにアリーは、午後からアンさん達と一緒に調理場の方に見学に行った。


「メルシュさん、次は魔法の本を読みたいんですけど、初心者にオススメの本とかありますか?」


「もちろんありますよ」


そう言い、すぐさま本を持って来てくれた。

俺は椅子に腰掛け、本を読み始めた。


Lesson1

目を閉じリラックスして、自身の体に流れる魔力を感知してみましょう。


俺は本に書いてある通り、魔力を感知しようと頑張ってみたのだが、全く感覚が分からなかった。


「うーん魔力ってどんな感じなんだろ?」


その後も何回も試してみたのだが、全く実感が湧かなかった。

そうこうしているうちに、夕方になったので諦めて部屋に戻っていった。

ちょうど、スライム達も訓練を終えて戻ってきた。


「俺って魔法使う事できないのかな・・・」


結局魔力を感知できなかったので少しテンションが下がっていた。


「コタケ様、夕食をお持ちしました。おや何かお悩みですか?」


「実は、図書館で魔法の勉強してきたんですけど、1番最初の魔力の感知ができなくて落ち込んでたんです」


「そうでしたか・・・私は魔法を使うことができないので何とも言えませんが、コタケ様の周りには魔法を使える方がいますので、コツなどを聞いてみてはいかがでしょうか?」


「そうですね!確かにアリーとかティーも魔法使えるし、今度聞いてみることにします」


「応援しております」


ハウザーさんに励まされ元気も出た俺は夕食を食べ終えて、再び魔力感知の練習に励み1日を終えた。





















ブックマーク登録も少しずつ増えてきて、とても嬉しいです!

気に入ってくださったら、是非登録お願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ