城内探索
ラーブルク龍王国に来て2日目になった。
こちらの世界に転移してからは朝の7時に起きるのが習慣となっていたので、今日もいつも通り目を覚ましていた。
ベッドから出ようとした所で、コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
「コタケ様、朝になりましたので起こしに参りました。入っても宜しいですか?」
どうやらハウザーさんのようだ。
「どうぞ」
ハウザーさんが入室してきた。
「おはようございます」
「コタケ様、おはようございます。もう起きていらしたんですね」
「この時間帯に起きるのが習慣になってるので」
「それは素晴らしい事です。是非ともティーフェン様に見習って頂きたいです」
と笑いながら言った。
確かに、我が家にいた時もティーは起きてくるのが遅かったし、誰かが呼びに行ってもすぐ起きる気配は全く無かった。
「ティーって昔からそうなんですね・・・」
「えぇそうですね。ただこちらに滞在している間はヴァルナ様がいらっしゃるので、嫌でも朝早くに叩き起こされるでしょう」
やはりヴァルナさんは強い。
「さてそれでは、朝食の準備ができておりますのでお部屋にお持ちしてもよろしいですか?」
「はい、お願いします」
ハウザーさんが合図するとメイドさんがワゴンを運んできた。
朝食は、パンと目玉焼きとウインナーとサラダだった。
スライム達も匂いで察知したのか、ベッドの下から出てきて食事を始めた。
「お食事中に申し訳ないですが、本日の日程をお伝えしても宜しいですか?」
「今日は会議があるんでしたっけ?」
「はい、コタケ様には本日の会議に出席して頂きます。ただ時間が14時からとなっておりますので、それまでは自由に過ごしていただいても結構です」
(ということはそれまで暇だな・・・)
「もし、なさりたい事がなければお城の案内を致しますがいかがでしょうか?」
「それは楽しそうですね!ぜひお願いします」
「かしこまりました。時間になったら呼びに参ります」
「あっ!アリー達も誘っても大丈夫ですか」
「勿論、構いませんよ」
その後、朝食を食べ終えた俺は隣のアリーたちの部屋に行った。
俺が扉をノックするとアリーが出てきた。
「おはようアリー」
「ワタルさん、おはようございます。どうかされましたか?」
「今日の午前中にハウザーさんに城の中を案内して貰うことになって、みんなも一緒にどうかなと思ったんだけど」
「まぁ、楽しそうですね。ぜひご一緒させて頂きたいです」
ということで、アリー達の参加も決まった。
それから9時頃になった所で、再びハウザーさんが部屋に訪ねてきて城内の案内が始まった。
「では、まずは1階に参ります」
階段を降りていくと、とても広い場所に着いた。
「こちらが1階のエントランスホールになります。この階には主に使用人の部屋や調理場がございます」
エントランスホールの左右には大きな階段があり、中心には大きなドラゴンの像が建っていた。
(なんかあのドラゴン見覚えあるな?)
「こちらのドラゴンの像はティーフェン様をかたどった物となります」
見覚えあると思ったらティーだった。
「こうも自分の事を大きく飾られたら恥ずかしいですね・・・」
「ティーフェン様はむしろ喜んでおられましたよ」
「そうなんですか・・・」
ティーの性格なら喜びそうだが、いくらなんでも大きすぎるのだ。
実際のティーの半分くらいの大きさがあったのだ。
(まぁ本人が喜んでるのなら良いのか・・・これ、あっちの家でも作ってとか言わないよな・・・)
続いて、俺達は調理場の方を覗いた。
台の上には、たくさんの食材が並んでいて、その中でも目を引くのは様々な種類の魚たちだ。
「王都ハウセンは海に近いこともあり、漁業が盛んなのです。ですので城内の食事でもよく魚の料理が振る舞われております」
前世で見たことのある魚もいれば、全くわからない魚もあった。
するとここで、
「あのお嬢様、私達こちらの調理場を見学していたいのですが、宜しいでしょうか?」
アンさんとリビアさんが、そうアリーにお願いした。
「勿論構いませんよ」
ニコッと微笑んでそう答えた。
ここでアンさんとリビアさんの2人とは別れる形になった。
「では、次に参りましょうか」
エントランスホールに戻り、階段を上り2階へとやってきた。
2階には中庭があり、それを囲う様にして廊下が続いており、部屋がいくつも並んでいた。
「2階には主に、経理などの様々な部署の部屋が並んでおります。流石に中をお見せすることはできませんが、各部署の建物から送られてきた要望をここで確認し、国王様の承認が必要な物があれば会議などに提出しております」
説明を聞きながら歩いていると一際大きい扉の前に来ていた。
「こちらが謁見の間になります。国内の貴族や他国の使者との謁見やパーティーの会場として使われております。本日は使用中の様なので、入ることはできませんが、玉座に座られた国王様とその上に鎮座しておられるドラゴン状態のティーフェン様の姿には圧巻です」
扉は他よりも1回り大きい上に豪華な装飾もされている。
(それにしても、玉座に座る王にその上にはドラゴンがいるって、なんかカッコイイな)
「では次に参りましょう」
次は3階に移動となった所で、中庭の方から
「これより訓練を開始する!」
と声が聞こえてきた。
「ハウザーさん、あれは何をしているのですか?」
「あぁ、あちらは国王様直属の騎士団の皆様です。時折こちらの中庭を使い対人戦闘の訓練をされております」
「直属ということはかなりの精鋭ということですか?」
国王直属の騎士団という言葉にエレオノーラさんが反応した。
「はい、国内の騎士団から選抜された精鋭揃いになります」
それを聞いたエレオノーラさんは、どこかソワソワしていた。
「エレオノーラ、もしかしてあちらに混ざりたいのですか?」
アリーがそう聞いた。
「い、いえそのお嬢様達の護衛もありますので大丈夫です」
「遠慮しなくても大丈夫ですよ。ここは城の中なので外よりも安全ですし、龍王様から貰ったお守りもありますので」
アリーはこちらにきた時に、ティーが以前作った魔物除けのお守りを貰っていたみたいだ。
「もしお二人に何かありましたら、私が命をかけてもお守り致しますので、エレオノーラ様も安心して参加されても問題ございませんよ」
ハウザーさんもそう言った。
「うぅ、ではお言葉に甘えて、お嬢様とコタケ殿こと宜しくお願いします。ハウザー殿」
「かしこまりました」
そう言ってエレオノーラさんは騎士団の方へ行き、少し話をした所で訓練に参加し始めた。
どうやら快く受け入れてくれたようだ。
「ふふ、結局2人だけになっちゃいましたね」
「あはは、そうだね」
「では気を取り直して次に参りましょう」
ハウザーさんの案内に続いて、俺達が泊まっている部屋もある3階に上がった。
「こちらの3階には、皆様が泊まっておられます、お客様用の部屋と私とメイド長の個室と昨日コタケ様が入られた大浴場がございます」
3階も2階とほぼ同じ作りになっていて、中庭を中心に周りに廊下があっていくつかの部屋がある。
ただ、部屋の数は2階よりも少なくなっている。
そして、先程の謁見の間の扉に似た場所があった。
「この扉の先には何があるんですか?」
「こちらは図書館となっております。王国の歴史に関する書や魔法に関する書が保管されております。皆様もご自由に入室していただいても大丈夫なので、また時間のある時に一度覗いてみてください」
(魔法に関する本は面白そうだし、暇な時にまた来てみよう)
「さて次で最後の4階になります」
最後の階段を上がり4階へとやってきた。
「4階には、国王様、王妃様、ご子息、ご息女お二人、ティーフェン様のお部屋がございます」
4階には、全部で5つの部屋があった。
「この時間帯は、ご子息達が勉強中ですので、少し静かに致しましょう」
やはり王族の子供という事で、色々と勉強しなければならない事がある様だ。
夕食の時に少し話してみた感じ、真面目そうな子達だったので勉強も頑張っているのだろう。
続いてティーの部屋の前を通ると中から2人の声が聞こえてきた。
「もう嫌なのじゃ〜」
「何をおっしゃっているのですか、まだ仕事を始めて30分しか経っておりませんよ」
「優しくしてくれるんじゃなかったのかぁ〜」
「それにしても限度というものがあります。せめて1時間は頑張ってください」
どうやら、ティーがヴァルナさんに言われて仕事をしている様なのだが、30分で飽きた様だ。ヴァルナさんも怒って当然だろう。
「む、この気配は!」
と声がした瞬間、部屋のドアがバンっと開かれてティーが出てきた。
「おぉ、やっぱりお主達だったか。こんな所で何をしておるんじゃ?」
「ハウザーさんにお城の中の案内してもらってたんだ」
「ほぉ〜、なら妾も一緒に行くのじゃ!」
「ダメに決まっております」
すかさず、ヴァルナさんがティーの行く手を阻んだ。
「そうだぞ、ティーいくらなんでも30分で仕事辞めるのはどうかと思うぞ」
「ぐぬぬ、さっきのを聞かれておったのか・・・アリシアよ其方なら妾の味方をしてくれるよな?」
と次はアリーに助けを求めた。
アリーは少し困った表情して、
「あの私も、もう少し仕事をした方が良いと思います・・・」
「ぎゃー妾の味方がおらんのじゃー」
「はい、では仕事の続きを致しますよ」
そうしてティーはヴァルナさんに部屋の奥へと連れて行かれた。
(仕事が終わったら少し遊んであげるとするか・・・)
こうして一通り周り終えた俺とアリーは部屋へと戻って、昼食を食べて、お昼からの会議に備えた。
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