夕食会
城に到着して、夕食まで時間があったので仮眠をとっていると、コンコンと部屋の扉をノックする音が聞こえたので、
「はーい」
と返事をすると、ガチャと扉が開いた。
「コタケ様、もうしばらくで夕食のお時間になりますので、起きた方が宜しいですよ」
執事のハウザーさんが起こしに来てくれた。
「ハウザーさん、ありがとうございます」
俺は眠たげな声で返事をした。
「よく、お休みになられましたかな?」
「それはもうぐっすりと」
今日は起きた時間も早かったので仮眠のつもりがしっかりと寝てしまった。
「今って何時ですか?」
「15時30分になります。夕食の前に一度お風呂に入られた方が良いかと思い声をかけさせて頂きました」
「そうですね、一度スッキリしておきたいのでそうさせて貰います」
「それでしたら、お部屋のお風呂でも良いのですが、せっかくですので大浴場の方へご案内致しましょう。この時間帯であれば、入っている者もいないかと思いますので広い所でゆっくりくつろげますよ」
「なかなか良さそうですね。ぜひお願いします」
その後、ハウザーさんの案内で大浴場にやってきた。
「では、ごゆっくり」
脱衣所で服を脱ぎ扉を開けると、そこには100人ほど入れそうな大きな浴場が広がっていた。
「おぉ、広いな・・・」
あまりの広さに驚嘆した。
我が家のお風呂も5人くらいは入ることができる広さだが、それ以上の広さな上に大理石の様なもので作られており、所々に石像も飾られており内装も凝った作りで凄まじかった。
俺はひとまずシャワーで体を軽く洗ってから風呂へと入った。
「はぁ〜、気持ちいぃぃ〜」
やはりお風呂に浸かると疲れも取れてスッキリする。
これだけ広くて誰もいないと泳ぎたくなるが、行儀が悪いので流石にやめておいた。
30分程、湯に浸かり体を洗いお風呂から上がった。
「お風呂はいかがでしたか?」
「とっても良かったです!」
「満足して頂けて何よりです。あと1時間ほどで夕食になります。15分前にまた声をかけさせて頂きますので、それまではまたゆっくりおくつろぎ下さい」
「そういえば服装はこのままで大丈夫なんですか?」
俺はカジュアルな服装をしていたので、夕食会というともう少ししっかりとした服装の方が良いのではと不安になった。
「そちらの服装のままで結構と国王様より伺っております。夕食会と言ってはいますが、国王様一家とコタケ様ご一向しかおりませんので、気にする者はおりませんので心配なさらずとも大丈夫ですよ」
「そうだったんですね、ホッとしました」
テンメルスさんの家族だけしかいない事が分かり、一安心した俺はまた部屋へと戻って行った。
それからしばらく外の景色を眺めボーっとしていたら、約束の時間の15分前になりハウザーさんが呼びに来た。
ベッドの下で休んでいたスライム達を連れて部屋の外に出ると、ちょうどアリー達も出てきたので一緒にハウザーさんの案内に付いて行った。
「アリー達も窓からの景色みた?」
「はい、見ました!とても綺麗で感動しました!」
「俺、海に来た事自体無かったから、初めての景色ですっかり見惚れちゃったよ」
「夜になると、家の明かりが点いて日中とは違った雰囲気になるみたいですよ」
「そうなんだ、楽しみだね」
少し話していると、ハウザーさんが扉の前で立ち止まった。
「皆様、到着致しました」
そう言い扉を開けると、中には30人程が座れそうな長いテーブルがあり、その両サイドに椅子が並べられていた。
そして、テーブルの奥の方にテンメルスさんの他に5人が座って待っていた。
「皆様、どうぞお座り下さい」
そう言われ、テンメルスさん達の向かい側に座った。
向いにはテンメルスさんの横に銀髪の女性が、その隣にはティーが、そしてその隣には男の子が1人と女の子が2人座っていた。
テンメルスさんは、立ち上がって紹介をし始めた。
「では、まず食事の前にこちらの紹介をしましょう。私の隣にいるのが妻のヴァルナ・ラーブルクです。先程1度お会いになられた方もいると思います」
ヴァルナさんは先程のメイド姿とは違い、ドレスを着ていて雰囲気も違っていたので全然気付かなかった。
「そして、ティーフェン様の隣にいるのが、息子のベルム・ラーブルクと娘のアウエ・ラーブルクとユリア・ラーブルクになります」
ティーの隣に座っていたのは、テンメルスさんの子供たちで、ベルム君は金髪でアウエちゃんは銀髪、ユリアちゃんは金髪で、顔見ると確かにテンメルスさんとヴァルナさんに似ている。
続いて、俺達も自己紹介をした。
両者の紹介を終えた所でちょうど料理が運ばれてきた。
パンとサラダ、スープにメインにはムニエルが出てきた。
「それでは早速食べましょうか」
貴族のマナーなどは知らなかったが、我が家だと思って気にせず食べてもらっても構わないと言われたので安心した。
ムニエルを一口食べてみると、外はパリッとして、中の身は柔らかく、とても美味しかった。
「それにしても、お子さんいらしたんですね」
「えぇ、ベルムは10歳でアウエは8歳、ユリアは7歳になります」
「とても可愛らしいですね」
「えぇ、可愛すぎて仕事に手がつかない程ですよ」
「本当ですよ、この人ったら仕事部屋にこの子達が入ってきたら一切仕事をしなくなるんです」
テンメルスさんに対してヴァルナさんはそう言った。
「仕方がないじゃないか、この子達が甘えてくれるのは今しかないんだから」
「それにしても限度というものがあります。毎度毎度2時間は仕事を止めて遊ぶのはいかがなものかと思います」
「そう言う君だって、あの子達を甘やかして、いつもお菓子をあげてるみたいじゃないか」
とテンメルスさんは得意げに言った。
「なぜその事を・・・まさか!?」
とヴァルナさんは、ティーの方を見た。
ティーは下手な口笛で自分じゃないと誤魔化していた。
「ティーフェン様〜、後で少しお話があります〜」
「なんでじゃ!」
「皆さん本当に仲睦まじいですね」
とアリーが言った。
「我がラーブルク家の家訓は、家族を大事にですからね。もちろんティーフェン様も含めて」
「私も我が子は勿論のこと、ティーフェン様も自分の子の様に思っておりますので」
「妾そなたらより年上なんじゃが!?」
「では、仕事もして下さいますよね?」
ヴァルナさんは笑顔でティーを見ながら言った。
「あー、それとこれとは別じゃし・・・」
ティーはヴァルナさんから視線をそらしそう言った。
「主人からも聞きましたが、私が少し厳しくしすぎたというのもありますので、今後はもう少し仕事の量も減らしていきます」
ヴァルナさんのその言葉を聞いてティーは嬉しそうにしていた。
そんなこんなで、夕食も食べ終わり各々自由に話していた。
テンメルスさんの子供達3人がスライムを触らせて欲しいと言ってきたので、クロ達の許可も取り触らせてあげた。
ぷにぷにで柔らかいと喜んでいた。
ちなみにティーもその中に混じってクロ達をつついていた。
ヴァルナさんが言っていた通り子供の様だったので、つい笑ってしまった。
それとエレオノーラさんも子供達に連れられスライムの所に居た。
アリー曰く、
「エレオノーラは昔から子供達に好かれやすいのです」
との事で、エレオノーラさん本人も子供達と楽しそうに遊んでいる。
アンさんとリビアさんは、夕食を作った料理人の元にいき色々とレシピを聞いているみたいだ。
料理のバリエーションが増えるのは良い事なので是非とも習得してもらいたい。
アリーとヴァルナさんは、少し離れたところで何やら話しているようだ。遠いので何を話しているのかまでは聞こえなかった。
そして、俺とテンメルスさんは明日以降の予定について話していた。
「明日は、我が国の大臣達と今後のティーフェン様についての事を話し合おうと思いますので、是非ともコタケさんにも出て頂きたいのですが大丈夫ですか?」
「元々そのつもりで来ているので大丈夫なんですが、貴族の言葉遣いとか礼儀が分からないんですが大丈夫なんでしょうか?」
「その点については私から先に話をしておくので安心して下さい」
「わかりました。明日はお願いします」
他にも、結婚生活はどんな感じかと色々と話をして、夕食が始まってから3時間程が経った所でお開きとなった。
皆打ち解けたようで仲も深まったようだ。
その後、各自部屋へと戻って、俺は部屋の風呂でもう一度体を洗ってから、ベッドに潜り眠りについた。




