メイド王妃
ドラゴン形態のティーの背中に乗って5時間。俺達は目的地である、ラーブルク龍王国の王都ハウセンに到着した。
「このまま王城の庭に着陸するから掴まっておれ」
そう言って降下し始めた。
ドォォンという音ともに城の中庭に降り立った。
「皆様、お待ちしておりました」
降りた先には、すでにテンメルスさんが待機していた。
「二日ぶりですね」
「えぇ、道中皆様に何も無かったようで安心しました」
「当然じゃ、妾が連れてきたんじゃ、何も起こるわけなかろう」
ティーもいつの間にか少女の姿に戻っていた。
「私が初めてティーフェン様に乗せて頂いた時は、防御用の魔法なども無く死にかけましたよ」
とテンメルスさんは笑いながら言った。
「うっ、あの時は失念しておったんじゃ。今回はしっかり魔法で保護しておったわ」
「景色も良くて、気持ちよかったですよ」
「それは何よりです。私なんかは空を飛ぶのが少しトラウマになりました」
と少し話をしたところで、
「このまま皆様とお話ししておりたいのですが、本日の仕事がまだ残っておりますので、そちらが終わり次第夕食をご一緒させて頂きたいのですがよろしいですか?」
「もちろん大丈夫ですよ」
「では先に皆様の部屋へとご案内いたします。こちらの執事長とメイド長にご案内させます。ではまた後ほど」
そう言ってテンメルスさんは城の中へと戻って行った。
「滞在中の皆様のお世話をさせて頂きます、執事長のハウザーと申します」
「同じくメイド長のラシュデーテと申します」
「こちらこそ、お願いします」
ハウザーさんは、白髪でダンディーなおじさまで、ラシュデーテさんは黒髪のショートで凛とした感じで年も若そうだった。
「では皆様こちらへどうぞ」
俺達は、ハウザーさんの案内に続いて城の中へと入って行った。
城の中には、歴代国王であろう人の絵が飾られていたり、シャンデリア等の装飾も凄かった。
先程まで何も気にせず話していたが、こんな凄い所に住んでいるテンメルスさんはやはり王様なんだなと再確認して少し緊張した。
「アリーはやっぱりこういう場所慣れてたりするの?」
「そうですね、国でもよくお城の方には行ってましたので慣れてはいますが、他国のお城の中には入った事がなかったので、私も少し緊張してます」
「慣れてるアリーでも緊張するんだ・・・なんかもっと不安になってきた・・・」
「私たちは招かれてる立場なので、そんなに緊張されなくても大丈夫だと思いますよ」
と笑いかけてくれた。
「皆様、お部屋に到着いたしました。こちらがコタケ様とスライム様達のお部屋でそのお隣がアリシア様達のお部屋になります。私どもはお部屋の外で待機しておりますので何かあればお申し付けください。また夕食のお時間は17時からとなっております。その際はまたお呼び致しますのでそれまではごゆっくりおくつろぎ下さい。それとティーフェン様は自室にお待ちになってる方がおられますので一度お戻り下さい」
「なんじゃ?妾もこっちでくつろぎたかったのに・・・まぁよい一旦戻るとするかの。じゃあお主達もまた後でな」
そう言ってティーは1人で自室に戻って行った。
「じゃあアリーもまた後でね」
そう言いスライム達と部屋へと入った。
部屋は広く中には数人が寝れそうな大きなベットがあり、トイレやお風呂なども完備されていた。
窓からの景色も街と海が一望できて最高だった。
ちなみに街には白色の建物が並んでいた。前世でも海外に似たような場所があった様な気がする。
「高級なホテルみたいだな」
現在は13時頃で夕食までの4時間は暇なので、とりあえずベッドの上にダイブした。
とてもふわふわで気持ち良かった。
スライム達はベッドの下に入って行った。
(暗い所が好きなのかな?)
俺が何をしようかなと悩んでいると、突然部屋のドアが開け放たれた。
「妾を匿ってくれ!」
そう言いながらティーが突然部屋に飛び込んできた。
「どうしたの?」
「妾の部屋に悪魔が・・・」
悪魔ってどういう事?と思っていると、
「誰が悪魔ですって?」
銀髪ロングのメイド服を着た女性が入ってきた。
「ぎゃーあやつじゃあ!」
彼女の姿を見てティーが大きな声を上げた。
「えっと、こんにちは?」
「こちらはお客様のお部屋でしたか、申し訳ございません。お見苦しいところをお見せ致しました。私ティーフェン様のメイドをしております、ヴァルナと申します。」
ヴァルナさんは丁寧にお辞儀なお辞儀をした。
「ご丁寧にどうも。コタケ ワタルと申します」
「おや貴方がコタケ様でしたか」
「あれご存知でしたか?」
「主人から聞き及んでますので」
「あっ!もしかしてテンメルスさんの奧さんですか?」
「はい、ラーブルク龍王国の王妃ヴァルナ・ラーブルクにございます」
この前、テンメルスさんと話した時に奥さんがティーのメイドもしていると聞いていたが、王妃様がメイドの格好をしているのは驚きだった。
「ワタルさん、今しがた大きな声が聞こえたのですが?」
先程のティーの声を聞きつけて、アリーも部屋にやってきた。
「あら?そちらのメイドさんは?」
「ティーのメイドをしている、ヴァルナさんでテンメルスさんの奧さんなんだって」
「まぁ!ということは王妃様ですか!」
「はい、ヴァルナ・ラーブルクと申しますが、今はメイドの身ですので、ただのヴァルナとお思い下さい」
そう俺たちが話している内に、ティーがこっそり部屋から出ようとしていたが、
「ティーフェン様、どちらに向かわれようとしているのですか?」
ヴァルナさんが一瞬で行く手を阻んだ。
「ちょっとお手洗いにじゃな・・・」
「先程もそう言って、こちらまで逃げてこられましたよね?」
ヴァルナさんの圧にティーも冷や汗をかいている。
ティーが助けてといった風にこちらに目配せしてくるので、
「ヴァルナさんは、ティーに何か用事があるのですか?」
と聞いてみた。
「ティーフェン様が不在の間に溜まったお仕事を今の内にやって貰いたいのですが、遊びたいと言ってやってくださらないのです」
「帰ってきていきなり仕事とかしたくないのじゃ」
「まぁティーの気持ちも分からなくはないけど・・・」
「ティーフェン様が不在の間は私がほとんどの仕事を終わらせましたが、ティーフェン様でしか出来ない物もあるのです」
「なるほど、そういう事なら仕方ないですね・・・ティー頑張れ!」
俺は潔くティーを差し出した。
「なっ!裏切り者ぉぉ〜」
「では、ティーフェン様行きますよ」
そう言いヴァルナさんはティーを引っ張って行った。
「助けるのじゃ〜」
というティーの声がだんだんと遠ざかって行った。
「王妃様なのにメイドの仕事もしているなんて驚きでしたね」
「俺もテンメルスさんから聞いてたけど、メイド服まで着てやってるのを実際見たらびっくりしたよ」
「それはそうと、ワタルさん。このハウセンで3日後にお祭りが開かれるみたいなんですが、ご一緒にどうですか?」
「そうなんだ?俺でよければ」
「はい!ぜひ!それでは、また夕食会で」
そう言いアリーは笑顔で戻っていった。
また暇になった俺は夕食の時間まで仮眠を取ることにした。
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