飲み友
テンメルスさんが我が家に泊まる事になった。
夕食を終えて、お風呂に入った後にテンメルスさんが話しかけてきた。
「コタケさん、今から一杯どうですか?」
「嬉しいですが、我が家にはまだお酒がないものでして・・・」
「大丈夫ですよ。私が持ってますから」
そう言って、テンメルスさんは自身で持っていた袋の中を探った。
「もしかして、それマジックバックですか?」
「えぇ、そうですよ。よくお分かりになりましたね」
「実は我が家にも一つありますので」
「基本的に貴族ばかりが持ってるんですが珍しいですね・・・おぉ、あったあった」
テンメルスさんは、グラスを2つ取り出し、そこに液体をそそいだ。
そそがれた物は、赤色で匂いを嗅いでみるとほのかにブドウの匂いがしたので、恐らくワインなのであろう。
「それでは、乾杯!」
「乾杯」
早速1口飲んでみると、香りも良く口あたりも柔らかで、とても飲みやすかった。
「すごい飲みやすいですね」
「えぇ、我が国特産のモルゴーネというワインになります。コタケさんがおっしゃった通り飲みやすいと評判で人気なんですよ」
「ティーに付いて行く時に買って帰ります」
「是非とも購入して行って下さい。ところで、ティーフェン様は、何かご迷惑おかけしませんでしたか?」
「まぁ、いつの間にか家に住んでて、仲間のスライム達の小屋を破壊された以外は特に何も無いですね」
と笑って言った。
「そんな事になってたんですね、申し訳ない・・・」
「いえいえ、小屋もすぐに直すことが出来ましたし、ティーがいる事で俺達も安心して暮らせるので大丈夫ですよ」
「国では、我が妻がティーフェン様の身の回りのお世話をしてるんですが、プライベートでは優しいんですが仕事となると厳しくなるタイプでして、今回それで溜まった鬱憤が爆発しちゃったんですかね・・・」
「そういえばこの前、ティーが敵わないメイドがいると言ってましたけど、それがテンメルスさんの奥さんなんですね」
「はっはっはっ!そんな事を言ってたんですか。確かに国では、妻が言うことに対して反論してもいつも正論で返されて拗ねておりましたな」
「なかなか子供っぽいところもありますね」
「そうですね、ティーフェン様は長い年月を生きていますが、あの少女の見た目の通り基本的には子供の様な言動をとることの方が多いですね」
「確かにこの数日間でも、そんな感じはしました」
「えぇそうでしょうね。でも私達は、そんなあの方の姿を見ていると自然と笑顔になるので今回の事は不甲斐ないばかりです」
「ティーも自分がとても大切にされているのは分かっているでしょうし、1度国に戻った際に良くなる様に考えましょう」
「コタケさん、ありがとうございます。妻にも仕事の時でももう少し優しく出来ないかそれとなく伝えてみます」
こうして、テンメルスさんと話してみると国王であることを忘れそうなくらいとても良い人だった。
「ところで話は変わるのですが、コタケさんとアリシアさんはどういったご関係で?他の方よりも親密な感じに見えたのですが」
「婚約してます」
「おぉ、そうなんですね!結婚はいつ頃されるんですか?」
「まだそこまでは決まって無いんですが、時期を見計らって俺から言おうと思ってて・・・」
俺は少し照れながらそう言った。
「いやぁ、初々しいですなぁ〜。そうだ、私が妻に結婚を申し込んだ時の場所はオススメでして・・・」
そんな感じで話しているうちに、テンメルスさんがいつの間にか眠ってしまっていたので、そのまま毛布をかけて俺は、部屋へと戻りそのまま眠った。
翌日、朝食を食べた後にテンメルスさんは国へ出発することにした。
「皆様、短い間でしたがお世話になりました。一足先に戻ってお迎えの準備をしてお待ちしております」
「きちんと戻るから、はよ帰るのじゃ」
「ティーフェン様もご迷惑をお掛けしない様にお願いしますよ」
「言われんでも分かっておるのじゃ」
「それとコタケさん、昨日の夜は付き合ってくださってありがとうございました。国にきた際にも、また一杯お願いします」
「是非お願いします」
そう言ってテンメルスは森の中へ消えていった。
そして俺たちは、ラーブルク龍王国に向けて出発するための準備をし始めた。
ティーの見た目ですが、少女とだけしか書いてませんでしたが髪色は赤で髪型はショートヘアになります。
そういえば書いてなかったと思って、29話目の方にも追加しておきました。




