危険な植物
「メアリーちゃん、血分けて貰って良い?」
「あぁ、はい」
ある日、イルシーナさんがリビングに居たメアリーさんに、そう話しかけた。
「ここではあれですので、貴女の家でやりましょう」
「オッケ〜」
「それ、俺も見てもいい?」
気になったので言ってみる。
「構いませんよ。少し痛々しい所を見ると思いますが」
メアリーさんの許可も出たので、イルシーナさんの家の1階に移動する。
「それじゃあ、よろしく〜」
イルシーナさんはそう言うと、メアリーさんの前に1つの植木鉢を置いた。
そこには、赤色のバラの様な花が咲いていた。
そして、メアリーさんは右手にナイフを持ち、花の上でいきなり左腕を切りつけて血をドバドバと流し込むのだった。
「えっ!ちょっ!」
俺は慌てるが、イルシーナさんは落ち着いてと言う。
「何してるの?」
「私の実験に付き合って貰ってるの」
「実験って・・・」
確かに痛々しい所を見るとは言っていたが、ここまでとは思っていなかった。
「いつもこんな事やってたの?」
「時々だよ、時々」
「この人が実験に付き合ってとしつこいので、仕方なく手を貸してあげているのです」
「その代わりに私もお願い事聞いてあげてるじゃーん」
「とまぁ、私も報酬は貰っているので、心配する事はありませんよ」
「そっか、なら大丈夫なんだけど・・・その実験なに?」
ドバドバと流れ落ちる血が植木鉢のスレスレまで溜まると、メアリーさんは切りつけた部分を塞いで血を止めた。
「メアリーちゃんの血を栄養素として、植物を育ててるんだ」
「そんなので育つの?」
「元々、私が改良した植物だから大丈夫なんだよ」
「この人が住んでいた森にいた、切り株のミミックもこの人が原因だそうです」
「あぁ、あのオルフェさんが食べられそうになってた・・・ちなみにこの植物も普通じゃないよね?」
「おっ?見たい?じゃあ、ちょっと待っててね!」
そう言ってイルシーナさんは外に出て、しばらく待っていると外から声がしたので出ると、1匹の魔物を鎖に縛り連れて戻って来ていた。
「メアリーちゃん、植木鉢目の前に置いて」
指示通り俺とメアリーさんの目の前に植木鉢を置く。
そして、イルシーナさんは魔物の鎖を解いて、こちらに向かわせて来た。
すると、バラの花の部分が開き中心から赤い槍の様な物が射出された。
魔物は射出された物体に貫かれて息絶える。
「今のって、メアリーさんが使ってる血の槍だよね?」
「はい。このバラは私の血を吸った事で、私の技を使える様になったみたいなんです」
なかなかとんでもない物を作っていた。
「まぁ、防衛様としてなら使えるのかな?敵味方の判別はつくんでしょ?」
「いや〜?どうだろうねぇ?」
「ちょっと待って、出来ないの?」
「まぁ、結局の所は植物だしね。今の所は攻撃された事は無いけどね」
そう言われて、俺は植木鉢から距離を取る。
「そんな危険な物、勝手に家の周りとかに植えないでよ?」
「普段は私が保管してるから大丈夫、大丈夫!」
「これ以外にも似たような物あったりしないよね?」
「ありますよ」
とメアリーさんが即答する。
「ちょっと出して下さい」
催促し、イルシーナさんはいくつかの植木鉢を取り出した。
1つは真っ黒なダリアに似た花で、残りは色とりどりなチューリップだった。
「これって触っても大丈夫?」
「それは攻撃してこないから大丈夫だよ」
との事で2つの花を触ってみると、ダリアの方は花びらや茎非常に硬く花とは思えず、チューリップの方逆でプヨプヨとして非常に柔らかかった。
「この2つもメアリーさんみたいに誰かに協力を?」
「そうだよ。誰だと思う」
「チューリップは何となく、クロ達だと思うんだよね」
「おっ、正解〜。スライム君達の体の一部を分けて貰って土の代わりにしたんだよ」
触り心地がそれっぽっかったが合っていた様だ。
「もう1個の方は・・・ティー?」
「おー、流石だね〜。そっちは、ティーフェンさんの鱗を粉々にして肥料にしたら出来たんだ」
それならあの硬さも納得だ。
「でも、こんな物を作ってたなんて知らなかった。他にも変なの作ってたりしないよね?」
「まだ、作ってないよー」
「まだね・・・」
「魔女って知的探究心の塊だからさ、何か研究してないとダメなんだよ。特にココは実験材料も豊富だしねー」
学園長や魔女の村の魔女達も、何かしらの研究素材を集めていたから実際にそうなのだろう。
「やるにしても、程々にね」
「分かってるよ〜。次は、レンダちゃんに協力して貰おうと思うんだ〜」
次は、オーガの特性を引き継いだ花を作ろうとしている様で、イルシーナさんは楽しそうな顔をするのだった。




