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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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喋る鳥

「ママ〜買ってよー」


「え〜、ちゃんと飼育出来るの?」


「出来るもん」


そんな会話がリビングから聞こえて来る。

皇女に会ったあの日以来、ベルが喋る鳥を買って欲しいとねだっているのだ。


「餌もあげて、フンの掃除したりって色んな事をしないといけないんだよ?それに鳥さんの命を預かる事になるんだからね?」


犬の様に散歩などは必要無いだろうが、それでもお世話は大変だろう。


「うん・・・」


ベルはオルフェさんの言葉を考えながら、少し大人しくなった。


〜〜〜〜〜〜


それから数日後。

コンコンと誰かが玄関をノックし、扉を開けに行くとクロが居た。


「どうしたの?」


クロは来て欲しいと言う様な動きをして、俺は後をついて行く。

連れて来られたのはクロ達の寝床の小屋だったのだが、中から叫び声が聞こえる。


「俺の側に近寄るんじゃねぇー」


一体中で何が起きているんだろうと扉を開けると、そこでは1匹の雀がドラちゃんとスライム達によって角へと追いやられていたのだ。


「えっと?どういう状況?」


俺がそう尋ねた瞬間、


「お前がコイツらの親分だな!くらえー!」


なんと、その雀が喋りながらこちらに突進して来たのだ。

しかも無駄に渋い声をしている。

しかし、スライムに阻まれてしまいポヨンと跳ね返されてしまう。


「グハッ!やるじゃねぇか」


「ねぇ、本当にどういう状況なの?」


俺が混乱していると、急にヒルズが側に現れる。


「妙な気配がすると思えば、雀の精霊でしたか・・・」


と現れるなりそんな事を言った。


「えっ?精霊?」


「はい、そこにいる雀は明らかに精霊ですね」


「クソッ!まさか精霊まで配下にしているとは!」


その雀の精霊とやらは1人で盛り上がっている。


「精霊ってなんでもアリなんだね」


「えぇまぁ、犬の精霊も居ますし、雲の精霊なんかも居ますね」


改めて精霊の世界は広いなと思う。


「そもそも何処から連れてきたの?」


クロ達に聞くと、どうやらドラちゃんがそこら辺に落ちていたの見つけて拾ってきたらしい。

あまり何でもかんでも拾って来て欲しくはないのだが・・・そんな事を考えていると、


「くっ、こうなったら一か八か無理やり脱出を!」


雀の精霊はそう言って羽ばたこうとした。


「ぐあぁ!」


しかし、上手く飛べずに落下する。


「どうやら、羽を怪我しているみたいです」


ヒルズの言う通り、羽の先が変な曲がり方をしていた。


「俺はこのままコイツらに食われちまうのか」


「いや食べたりしないから。それよりも羽治してあげるよ」


「そんな甘言には騙されんぞ」


「コタケ様の言う通り、大人しく治療を受けて下さい」


「ううむ・・・」


同じ精霊の言葉を聞いて大人しくなったので、両手で持ち上げて家の中に運ぶ。


〜〜〜〜〜〜


「はい!これでもう大丈夫です!」


「ありがとうアリー」


「いえいえ、それにしてもまさか喋る雀がいるとは驚きです」


「ありがとうな嬢ちゃん。お陰で羽が軽くなったぜ」


「雀といっても精霊だけどね」


「でも、この方をベルちゃんが見たら・・・」


そう話していると、丁度玄関の方から、


「「ただいま〜!」」


と買い物に出掛けていたオルフェさんとベルの声が聞こえる。

そしてそのまま、俺達のいるリビングまでやって来ると、


「ただいまぁ・・・って、何その雀?」


「わぁ〜鳥さんだ」


テーブルの上を見てそう言う。


「クロ君達のエサ?」


なんてオルフェさんが言うと、


「誰がエサだぁ!」


いきなり叫んだ雀の精霊に、2人とも目をパチクリさせる。


「えっ?今の声、コタケ君?」


「違うよ」


「じゃあ・・・」


「俺だ!俺!」


雀の精霊は羽をバタつかせる。


「わぁ!喋る鳥さんだぁ!」


案の定、ベルは大喜びだった。


「何その生き物?」


「雀の精霊なんだってさ」


「精霊・・・にしても喋るのは不思議すぎない?」


確かにそうだが、魔法もある世界だしそういう事もあるだろう。


「ふ〜ん、てっきりエサかと思ったよ」


「雀なんか食っても美味くねぇ」


「そうでもないんじゃない?俺の居た国じゃ、雀の丸焼きって雀を串に刺してそのまま焼いた食べ物があったくらいだし」


「「えっ?」」


「俺も食べた事は無いから味は分からないんだけど、そのまま焼いてるから見た目が凄いんだよね・・・」


「おっ、おい、まさか俺を食おうって訳じゃねぇだろうな」


「流石に人の言葉を喋る動物を食べるのは精神的にキツいかな」


俺がそう言うと、雀の精霊はホッとする。


「ワタルさんの国もなかなか凄いですね」


「世界には変な食べ物って結構ある物だよ」


などと話していると、


「ねぇ、ママ?この子、飼いたい!」


と予想していた通りの事を言った。


「おっ?なんだ、嬢ちゃん。俺と契約したいのか?」


精霊として主従の契約を組みたいと思ったのか、何故かノリノリだった。

しかし、オルフェさんは当然ながら反対する。


「ベル。前も言ったけどね、しっかりとご飯を与えたり・・・」


「俺はエサなんかいらねぇぞ?」


オルフェさんの言葉に被せて精霊はそう言う。


「そもそも精霊だから、周囲の魔力を吸ってれば大丈夫だしな」


「えっ・・・え〜っと、コホン!それ以外にもね、フンの掃除だったり・・・」


「いや、フンもしねぇよ。精霊だし、エサも食ってねぇんだから」


「・・・でもね、命を扱うからしっかり覚悟を・・・」


「精霊だからほぼ不死だぞ?」


「そうですね、精霊に寿命はありませんから」


雀の精霊の言葉に続いてヒルズもそう言う。


「もー!なんなの、君!?」


「はっはっは、悪いな」


ベルに伝えたい事を全て否定されたオルフェさんは地団駄を踏む。


「ママ、私もちゃんと分かってから。きちんとお世話するから飼っても良いでしょ?」


ベルは目をウルウルさせながらそう言う。


「うーー・・・はぁ、分かったよ」


オルフェさんが折れるのだった。


「わーい!ありがとうママ!」


「おっ!じゃあ契約って事で決定だな!」


と雀の精霊はベルと契約を結ぶのだった。


「ベルちゃん、名前はどうするんですか?」


「うーん・・雀だからスーちゃん!」


分かりやすいが安直なネーミングだった。


「おいおい、ちゃんって俺は男だぜ」


「あれ精霊に性別ってあったの?」


「人間の様に生殖はしませんので本来はありませんが、大抵はどちらかの姿をとっていますね」


「形だけみたいなものか」


「まぁ、いいぜ!これからはスーちゃんって呼んでくれよな」


「ちなみに、契約を結んだベルには何か特別な力が使えたりするの?俺は、ヒルズのお陰で魔法を使える様になったけど」


「おいおい雀に何を期待してるんだよ。そんな力がある訳ないだろう?」


「えぇ・・・」


「あっ、でも待てよ。視力はちょっと上がるぜ!」


「それってどれくらい?」


「今までボヤーッと見えてた遠い物が、ちょっとハッキリ見えるくらいだな」


「それって数十km、先の物とか」


「そんなに良くなる訳ねぇだろう。1kmあるかないかくらいだ」


それはそれで凄いのだろうが、正直契約するメリットが見当たらない。

それでも、ベルは喋る鳥を飼う事が出来て喜んでいるので問題はなさそうだった。


そんなこんなで、雀の精霊スーちゃんが加わる事になるのだった。

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