初めての友達
「ど、どうしましょう〜」
インコの飼い主らしき人物に盗人と勘違いされ、兵士に囲まれ大ピンチとなっていた。
「一点突破でなんとかするしかないですかね?」
「転移はゲートを開くのに少し時間が掛かるし、最悪かなり目立つけどシェリーに乗って逃げるのも手かもね」
逃げるの作戦を立てていたその時、
「何をなさっているのですか!?」
少女の後ろから見覚えのある、金髪縦ロールの女性が走って来た。
「フランさん?」
「コタケ様では無いですか!?皇女様、兵士達に武器を下すようにお伝え下さい」
「あの下民が、私の大切なピーちゃんを攫ったのよ!」
「逃げたインコと言うのはそちらの・・・?」
「そーよ!この子よ!」
「コタケ様達がその様な事をする筈がありません!私の大切な友人の旦那様なのですから!」
フランさんは俺達を庇ってくれる。
「っ〜!分かったわよ。兵士達、武器を下ろしなさい」
兵士達は武器を下ろし警戒を解く。
そして、フランさんが側に寄って来る。
「申し訳ございません。お怪我は無いでしょうか?」
「大丈夫ですよ。むしろ助かりました」
「まさか、少し目を離した隙にこの様な事になっていたとは・・・」
「フランさんとあの少女は知り合いなんですか?」
「実は・・・」
話を聞くと、あの少女はバーシュタット皇国という国の第3皇女で、名をミューレ・バーシュタットというらしい。
今回、お忍びでマゼル王国にやって来ていたらしい。
「でも、どうしてフランさんが案内を?」
「詳しい事はあちらの宿でお話ししましょうか」
俺達は宿の食堂に通される。
皇女が来るという事もあり、完全に貸切の状態で他の客はいない。
俺達は皇女と離れた所に座り話を聞く。
「えっと、まず私が皇女様を案内しているのは職業が関係してますね」
フランさんの職業と言えば学校の教師だが・・・
「皇女様の年齢は9歳で、貴族で教師もしている私が候補に上がり案内役となったのです」
「なるほど、確かにフランさんなら慣れてますもんね」
「そうなのですが・・・」
あまり浮かない表情をしている。
「その、皇女様は末っ子で兄や姉とも年齢がかなり離れているそうなのです。なので、昔から遊び相手もいなかったそうで、内気な性格であまり心を開いてくれないんです」
「そうは見えなかったですけどね?」
今の話を聞いてリッヒさんがツッコむが、確かに高圧的な態度で詰め寄られたし、ペットのインコの高笑いのマネからもそうは思えない。
「皇族としてのプライドもあり、そう取り繕っているのですよ。なので、御付きの騎士の方から聞いた話だと通っている学校でも、あの高圧的な態度のせいで友達が居ないと・・・」
皇族なので関係持ちたい者は寄って来るだろうが、友達となると別だろう。
「そんな時に、あのインコを飼いだした様で大切にされていたのですが、ケージの鍵を閉め忘れてその間に脱走してしまい探していたのです」
「そこに俺達がやって来て怪しまれたと」
「はい、盗まれたと勘違いしたそうで。皇女様には信用に足る方達なので、嘘は言ってないとお伝えしておきましたので、安心して下さい」
「あの歳で友達がいないと将来が心配ですね〜。まっ、私は彼氏とかは居た事無いですけどね!」
相変わらず余計な一言が多いシェリーだが、確かにそう言う通り友達が居ないのは辛いだろう。
その証拠にインコを飼い出し寂しい思いをしない様にしたのだろう。
今もインコを手に乗せて、さっきまでとは別人と思う様な笑顔を見せている。
「う〜ん・・・ちょっと席はずしても良いですか?」
「構いませんよ?」
俺は1人で宿の外に出て、ある所に向かい再び戻って来た。
「ただいま戻りました」
「何かあったのですか?」
「あの子の友達になってくれそうな子を連れて来ました」
俺の言葉に3人は不思議そうな顔をしていると、
「キャッ!」
突如、皇女は悲鳴を上げてテーブルの下を覗く。
すると、そのテーブルの下から、
「こんにちは!」
茶髪の女の子が現れる。
「初めまして!ベルだよ!」
「何奴!?」
騎士達は当然警戒するが、皇女は手で制す。
「落ち着きなさい、まだ子供です。それにここに居ると言う事は、恐らくあちらの関係者でしょう」
とこちらに顔を向けて来るので頷く。
「勝手な事を。貴女が何を言われたのかは知りませんが、下民とは仲良くなりませんの」
皇女がそう言うとベルを目をウルウルとさせ始めた。
「仲良くしてくれないの・・・?」
「うっ、そ、そうですわ!私は皇族ですもの、下民とは・・・」
「ひっく、ひっく」
皇女が言いかけた所で、ベルが泣き出してしまった。
「ちょ、ちょっとなんで泣いているのよ!」
皇女はあたふたとする。
「〜っ!もう、分かったわよ!遊んであげるわよ」
「わーい、やったー!」
とベルはケロッとして笑顔になった。
「あ、貴女ね・・・まぁ、良いわ!それで下民は何がしたいのかしら?」
「ベル!」
「はい?」
「ベルって呼んでくれなきゃ嫌!」
「そ、そんないきなり名前を呼ぶなんて・・・べ、ベル」
「はーい!あっ、そう言えば名前聞いてなかった」
「調子が狂うわね。私の名はミューレ・バーシュタットよ。特別にミューレ様って呼ばせてあげる」
「よろしくね、ミューレちゃん!」
「ちゃん!?」
皇女は驚きつつも嬉しそうな表情をしていた。
「ねぇねぇ!その鳥さんは何て言うの?」
「ピーちゃんよ!」
『オーホッホッホ!』
「面白い鳴きかただよね!」
「えぇ、そうよね・・・」
皇女は顔を赤くしながらそう言った。
すると、隣に控えていた騎士が、
「これは皇女殿下が、学校でのキャラを決めかねていた時に覚えてしまった言葉ですね。クセの強いお嬢様キャラでしたが、結局これはやめてしまいましたもんね」
そんな事を言い、皇女がお慌てで止めに入る。
「何で言っちゃうのよ!」
「しかも、ピーちゃんはそれ以外の言葉を覚えてくれないんですよ」
「あははー!おもしろ〜い!」
「そ、そうかしら?」
「オーホッホッホ!こんな感じ〜?」
「まだまだね。声の高さが足りて無いわ、こうよ!オーホッホッホ!」
見事な高音な高笑いを聞かせてくれる。
「わー!本物だぁー」
「私としては喜ばれても困るのだけど・・・」
「ねぇねぇ!次は何する?」
「そうねぇ、次は・・・」
その後も2人で色々な話をしたり遊んだりするのだった。
〜〜〜〜〜〜
「コタケ様、本日はありがとうございました。皇女様の表情も大分柔らかくなったと思います」
「フランさんには助けて貰ったので」
今、皇女はベルとのお別れを惜しんでいる。
「わ、私達の国に来なさいよ」
「ううん、今の場所が気に入ってるから!」
「そ、そう・・・」
「でも、今度遊びに行くね!」
「ほ、本当に!あっ、コ、コホン!まぁ、招待してあげない事も無いわ!」
「うん!絶対だよ!」
ベルがこちらに戻って来る。
「楽しかった?」
「楽しかったー!」
ベルも喜んでいると、皇女がこちらにやって来る。
「?」
「ご、ごめんなさいですわ!」
と一言口早に言って、走って戻って行く。
「犯人扱いした事を謝ってくれたのですかね?」
こうして、ベルのお陰で皇女は少しだけ素直になったのだった。
累計50万PV達成です!
いつも読んでくださり本当にありがとうございます。
もう少しで300話にも到達しますが、まだまだ頑張ります。
それと現在、戦闘がメインの新たな作品を構想中です。
出来れば、この作品の2周年目に投稿したい所ですが、不慣れなジャンルでもう少し後になるかもしれません。
また、投稿がスタートされましたら読んで頂けると幸いです。




