飼い主探し
コンコン コンコン
朝、目を覚ますと外から窓を叩く音が聞こえた。
重い瞼を擦りながら外を見てみると、窓の側に1匹の鳥が居た。
それは、水色の羽に黄色の羽が混じったインコだった。
「なんでこんな所にインコが?」
疑問を口にし、隣で寝ていたアリーを起こそうした時・・・
『オーホッホッホ!』
インコがいきなり高笑いを始め、俺はビクッと体を震わせた。
「ん〜・・・フラン、その勝ち誇り方はちょっと」
今の高笑いを聞いてか、アリーの夢の中でフランさんが出て来た様だ。
フランさんもあんな高笑いをするのだろうかと思いつつ、今度こそアリーを起こす。
「ワタルさん、おはようございます」
「おはよう」
「何故かフランが凄い笑い方をしている夢を見たのですが・・・」
恐らく先程の寝言の事だろう。
「多分、原因はこの子だね」
外のインコを指差す。
「綺麗な色のインコですね。何故この様な場所に?」
アリーがそう話した時、
『オーホッホッホ!』
インコが再び高笑いをした。
「!」
高笑いを聞き驚いた表情になるアリー。
「夢のフランにそっくりですね・・・」
「でも本当に何でこんな所にいるんだろうね?」
「何処かで飼われていたのが脱走したのでしょうか?ここまで無事だったのは良かったですが、放置しておくのも可哀想ですよね」
「確かにそうだね。中に入れて保護しようか」
俺は窓を開ける。
インコは逃げ出す事もなく、すんなりと俺の手に止まる。
「かなり人間慣れしていそうですね」
「やっぱり何処かで飼われてたのかな?」
「そんなに長距離を飛べるとも思いませんが・・・」
「ひとまず1番近くの街に調べに行ってみるよ」
俺は脱走しない様に、急ごしらえの木製のケージを作成して、街の方に出掛けた。
〜〜〜〜〜〜
「どう?何かそれらしい話とか聞こえた?」
「ん〜?何も聞こえませんね。主人がグータラしてるだとか、主婦の悩みしか聞こえませんね〜」
「そ、そうなんだ」
「私の方もそれらしい話は聞こえませんね」
「ダメか〜」
耳の良いリッヒさんとシェリーの3人で、近くの街中を歩いてみたがペットの迷子の話などは聞こえないそうだ。
「違う場所から飛んできたのかな?」
「あんな高笑いをするのって貴族とかじゃないんですかね〜?」
「確かにそんなイメージはあるよね」
『オーホッホッホ!』
「冒険者ギルドに行ってみましょうか?あそこに依頼を出しているパターンもありますから」
リッヒさんの提案でギルドに行き、依頼の掲示板を見てみたがそれらしい依頼は貼っていなかった。
「地道に探した方が良いんですかね〜?」
「逆にこっちから見つけましたって、貼り紙を出した方が手っ取り早いよね」
そう話しつつ道を歩いていると、近くにあった宿屋の前に高そうな馬車とその周りに沢山の兵士が並んでいた。
「何かあるのかな?」
「あの宿はこの街で最も高級らしいので、貴族が良く泊まるそうですが・・・って、そう考えたらあの宿に居るかもしれませんね」
「でも、なんか仰々しいですよ〜?」
兵士達は少しピリピリしている。
すると、高級そうな馬車のドアの前で、
「早く探して来てよ!」
灰色のロングヘアをなびかせ、ドレスを身に纏った少女が何やら声を荒らげていた。
「しかし、新しいのを買った方が早いのでは・・・この近くには魔の森と言われる危険な場所があるので、そこに行ったりでもしていたら・・・」
「新しいのじゃ駄目なの!」
側に居た御付きと見られる、黒髪の女性騎士がなだめようとしていたが、効果は無さそうだった。
その時、
『オーホッホッホ!』
とインコが高笑いをした瞬間、少女がこちらに視線を向ける。
「ピーちゃん?今のピーちゃんの鳴き声よ!」
声を上げて、周りの兵士達に指示を出し一緒にこちらに向かって来る。
「そこの下民!そのケージを渡しなさい!」
と言い、兵士の1人が近づき奪っていく。
「やっぱり!見てピーちゃんよ!戻って来たわ!」
その少女は嬉しそうな表情を見せるが、すぐに真顔になりこちらを見つめ、
「下民!この子を何処で見つけて来たの!」
高圧的な態度に少々イラッときたが、騒ぎを起こしたくないので素直に答える。
「近くの森で保護して来ました」
「森?魔の森と言う所かしら?」
「えぇ、まぁ、そこです」
周りの兵士達が少しザワつき、御付きの騎士が耳打ちする。
「聞けばかなり危ない所らしいじゃない?本当にそんな所で見つけたのかしら?」
「本当です」
面倒だなと思いつつも答えると、
「下民がそんな所にワザワザ行くとは思えないわ!」
流石に住んでいるなんて言っても、信じてくれないだろうなと考えていると、
「怪しいわね!兵士達、その下民共を捕えなさい!」
「「えっ?」」
少女が指示すると兵士達は一斉に動き出し、俺達は一瞬で周りを囲まれてしまうのだった・・・




