ルインの怖い話
今回、短めのお話です。
「あれは暑い日の夜の事でした」
家の明かりを消し、1本のロウソクを立ててルインが語り始める。
「深夜2時くらいでしょうか。私は既に幽霊になっていた時で、やる事もないし暇だなぁと街中で姿を現しながらフワフワと徘徊していました」
普通の人が見たら、それが既に怖い話だろう。
「住民が寝静まり、シーンとした街中を徘徊するのは楽しかったです。しかしそんな時、ペタペタと私の後ろを誰かが歩いている音がしたのです」
「さっきまで周りには誰も居なかったのにする足音に、怖いなぁと思いつつ、私は意を決して振り返って見る事にしました」
ゴクリと固唾を飲む。
「バッと一気に振り返った先には・・・何もいなかったのです」
皆んな、ホッとする。
「それで、私は気のせいだったのかなと思い再び進み初めました。しかし、私が進み始めるとまたペタペタと後ろを付いて来る音が聞こえたのです」
「逃げようと進む速度を上げました。でも、後ろの足音もペタペタペタペタと速度を上げて来たのです」
「「ひぃぃ」」
「そして、私はもう一度振り返ってみるのです!すると、そこに居たのは・・・首から上が無くなったスッポンポンの男の体が歩いていたんです!」
「「ん?」」
「怖くないですか!?頭が無いスッポンポンの男ですよ!」
「あれ?今日はゾッとする様な怖い話をしてくれるんだよね?」
俺はルインに聞いてみる。
「今してるじゃないですか?私なんて、男の人の体を見るのがそれが初めてだったんですよ!本当にゾッとしましたよ。でも、私は覚悟を決めてその体に話しかけてみたんですよ」
「頭が無いのに聞き取れる物なのでしょうか?」
「それが驚く事に何故か言葉が聞こえるみたいなんですよ。でも、喋る事は出来ないので地面に文字を書いて意思疎通をしてきたんです」
「目も無いのに芸達者な奴じゃな」
「それで、貴方は誰なんですかって聞いたら、生前斬首刑に処せられて未練が残ってデュラハンとして彷徨ってたみたいなんです」
「魔物にも馬に跨った首無しの騎士のデュラハンが存在しているが」
「その体は幽霊だったので魔物ではないですね。私はどうして斬首刑になったのか聞いたら、なんて答えたと思います?」
「殺人とかですかね?基本は大罪を犯した者が受ける刑ですから」
アリーがそう言うと、
「なんとですね!夜な夜な女性に背後から抱きついたりといった行為を繰り返し行ってたからだそうなんです!」
「「えぇ・・・」」
「聞けば何百回も逮捕をされたそうで、国も面倒になって処刑したのだとか」
「とんでもない変態だったていうこと?」
「そうなんですよ!想像に容易いと思いますが、未練と言うのもまだまだ抱きつき足りないとかそんな理由で、私の後をついて来た理由も女性の姿が見えたからなんですって!」
「ルインも危なかったんじゃないの?」
「私も幽霊なのに身の危険を感じましたからね。それを聞いた瞬間に姿を消して逃げ出しましたよ」
「世の中にはそんな変態幽霊もいるんだね」
「でも、そんなのが居ると思うと夜の街に出歩けませんね」
とリビアさんが言うと、
「そこは大丈夫です!」
ルインは自信満々にそう言う。
「何故なら、翌日に教会に変態幽霊が居たと置き手紙を残したんです。そしたら、その日の夜に教会の人達が除霊に動いて、しっかりと除霊された瞬間もこの目で確かめましたから!」
「同じ幽霊なのに容赦無いんじゃな」
「たとえ同族でも、あんな変態は女の敵なので生かして?おく必要もありません!それが私の1番の恐怖体験でした!」
皆んなパチパチと手を叩くが、少し暑くなって来た日々に怖い話で皆んなを涼ませようという俺の考えが、変態幽霊のせいで打ち砕かれるのだった。




