土探し
「ねぇねぇ、ドラちゃんが手伝って欲しい事があるんだって!」
ある日、ドラちゃんを連れたベルがそう話しかけて来た。
「どうしたの?この前みたいに栄養剤が欲しいとか?」
「ううん、今度は土が欲しいんだって」
ベルは首を横に振りながら言った。
「土・・・今の畑の土じゃ駄目なの?」
「今のも悪くないけど、もうちょっと高級な土が良いかなぁだって」
ベルは、身振り手振りで伝えてくるドラちゃんの通訳をする。
「高級な土って何・・・?」
「そこは自分で見極めるから移動だけお願いって言ってる」
「まぁ、それくらいなら良いけど」
そう言うと、ドラちゃんは両手を上げて喜んだ。
〜〜〜〜〜〜
翌日。
まずは家の周りに良い土が無いかを確かめる為に、ホープのダンジョンの近くまで来る。
「どう?」
ドラちゃんは険しい表情をしながら、土を手に取りパラパラと落としたり、自分の体に付けている。
前日に街の花屋などで良い土の条件を聞いた所、水はけや水もちが良く重くも軽くも無い物との事だった。
ちなみにその花屋で1番良い土を買って来たのだが、ドラちゃんの肌には合わず無しとなった。
こんなので本当に分かるのだろうかと思いつつ見ていると、俺に何かを指示してくる。
「水を出して欲しいんだって」
ベルが通訳し、言われるがままに魔法で水を出して土を濡らす。
再び土を触り始めて少し経つと、ドラちゃんは両手でバッテンを作った。
「土が固くて重いんだって」
「まぁ、確かにそんな土だと野菜とかもあんまり育たなさそうだし分かるかも」
そして、ドラちゃんはすぐに次の場所に行こうとジェスチャーするのだった。
次に訪れたのは砂漠だ。
ドラちゃんは何でこんな所にと不思議そうな顔をしているが、乾燥した場所でもサボテンなどの育つ植物もあるので、一応やって来てみたのだ。
ドラちゃんは先程と同じ様に、砂を手に乗せてサラサラと落としていき、水を出して欲しいとジェスチャーをする。
出した水は、土の様に地面に染み込まず砂の上を流れ出して行く。
砂漠の砂は水の吸収率も悪く、砂漠での死因の1位は溺死だと聞いた事があるが、これを見たら本当なのだろうと思う。
当然ながらドラちゃんからはバッテンの判定が出る。
「まぁ、そうだよね。それじゃあ次に行く?」
うんと頷き次の場所に向かう。
「う〜、さむ〜い!」
次にやって来たのは、雪の積もった場所だ。
雪を掘っていくと、少し白っぽい土が出て来て更に掘ってみると赤みがかった土が出て来る。
ドラちゃんは土を手に取って頷いている。
「ドラちゃん、はやく〜!」
一応着込んでから来たが、ベルは寒いとドラちゃんを急かす。
さっきまでと同じ様にして、水を流して再び触る。
そして、バッテンを作る。
「水もちがあんまり良く無いんだって。さっ、寒いから戻ろ!」
理由の説明はそこそこに、急いで家に戻って行く。
その後も数箇所回ってみたが、お気に召すものは無かった。
「あとは何処があるかな?」
考えてみると、ある事を忘れていた。
「そう言えば、専門家みたいな人が1人いるの忘れてたよ」
思い出したその人の元へと向かう。
「ん?今日はどうしたのだ?まさか、また木々を無駄に倒したのではあるまいな?」
「その節はご迷惑をお掛け致しました・・・」
訪れたのは、ドリアードのエムネスさんの所だ。
「まぁ、その件についてはしっかり説教をしたから許すとして・・・どうやら、用事があるのはその小さい生き物の様だな」
と既に土を確認しているドラちゃんを見ながら言い、俺は事情を説明する。
「確かに植物にとって土は重要だからな。ただ、その様な動くマンドラゴラなぞ私も初めてだからな、満足するかは分からない」
真剣な表情で土の良し悪しを見極めるドラちゃん。
同じ様に水を要求して、水分を含んだ状態も見極めると・・・
ドラちゃんは両手で大きく丸を作る。
どうやら気に入った様で、自身の体に塗りたくっている。
「えっと、この土ちょっとだけ貰っても良いですか?」
「まぁ、良いだろう」
エムネスさんの許可も貰ったので、家に持ち帰り庭の一部の土を交換する。
満足そうに土の上でゴロゴロしている。
そんなに良い土なのかと見ていると、いつの間にか大の字で眠っていた。
その姿を見て、思わず笑ってしまうのだった。
翌日、ドラちゃんの体は少しツヤツヤになっており元気に走り回っていたので、本当に良い土なのだろうと実感するのだった。
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