喧嘩の原因
投稿遅れて申し訳ないです。
今月は少しバタバタして、いつもの時間に投稿出来ない事もあるかもしれないので宜しくお願いします。
「・・・」
「・・・」
俺は気まずい雰囲気に包まれながらダイニングの椅子に座っている。
黙ったままのメアさんと隣にはエレオノーラさんとシルアさん、その前には父で国王でもあるラウター・ストラウドさんと後ろには宰相の男性が立っている。
「メア・・・」
「何でしょうか?」
「その・・・」
何かを言い渋っている。
それを見かねた宰相が、
「王よ、貴方に非があるのですから素直に謝って下さい」
と窘める。
「うむ・・・コホン。メア、すまなかった」
謝って頭を下げる。
「メア、そろそろお父様を許してあげても良いのでは無いですか」
シルアさんがフォローすると、
「もう、あの様な事は言いませんね?」
「約束する」
「分かりました。今回の事は全て水に流します」
メアさんから許しを得た国王は安堵した表情になる。
「お父様もお父様ですが、メアも周りの方に迷惑を掛けているのですから反省する様に」
「「はい」」
しっかり者のシルアさんに怒られた2人はショボンとしているが、そもそも喧嘩した原因をまだ聞いていなかったので、尋ねてみた。
「発端はお父様がメアにお見合いの話を持って来たからなのです。メアがエレオノーラ様の事を好いている事は知っていましたが、お父様はそれを一時期の気の迷いだと思っていたらしく、それに怒ったメアが家出をしたのです」
シルアさんが説明してくれた。
「全ては私の責任だ」
父として娘の事を心配していた面もあるのだろう。
お互いしっかりと話していれば、すれ違いは起きなかっただろうと思う。
「メアもお父様が心配してくれているのは、分かっているでしょう?」
「はい」
「お互い、今後はしっかりと話し合う事。分かりましたか?」
「「分かりました」」
「それじゃあ、仲直りにハグをしましょう!」
パンと手を叩いたシルアさんがそう言う。
「そ、そこまでしなくても・・・」
「いいえ、お父様。仲直りの証として必要です!」
力強く言うシルアさんに負けて立ち上がり、メアさんの横に行って手を広げる。
メアさんも立ち上がり軽くそっとハグをする。
「うむ、これはなかなか気恥ずかしい」
「これで2人とも仲直りですね」
「ぶふっ、良かったですね王よ」
恥ずかしそうにしている王様を見て、笑いを堪えながら少し噴き出す宰相の男。
「お前を連れて来るんじゃなかった」
「なかなか良いものが見れました」
「師匠、笑わないで下さい」
「いえいえ、メア王女は大変可愛らしいので大丈夫ですよ。ただ、王のこんな姿を見れたと思うと笑いが」
宰相はなかなか良い性格をしている様だ。
「騎士団を連れて来るべきだったか」
「何を言ってるんですか、大勢を連れて行けば迷惑になると私を連れて来たんじゃないですか」
以前、王城に行った際にメアさんがこの宰相が剣の師匠だと言っていたので、かなりの実力者なのだろうと思いながら見ていると、こちらの視線に気付いたのか、
「そう言えば、私だけは自己紹介がまだでしたね」
と言った。
「宰相として王の補佐と、そしてメア王女の剣の師範も勤めております、アゼス・シーハートと申します」
「以前にもお話ししましたが、私の師匠で剣の達人です!」
「剣の達人なんてお恥ずかしい。今ではすっかりメア王女には勝てませんし、全盛期も過ぎ去ってしまいましたから」
「それでも、この場所まで護衛をしながらやって来たのは凄いと思うんだが」
エレオノーラさんがそう言い、俺も同じ事を思った。
「そう言えば、お父様達はどうしてこの場所が分かったのでしょうか?確かに行き先はお母様にお伝えはしましたが・・・」
「セルツから話を聞いて、森の外までは騎士団を連れて中に入ってからはアゼスを伴って、お前達の匂いを辿って来たんだ。特にメアの匂いが森の至る所にあったからな」
獣人は鼻が良く、それで探し出せたらしい。
「皆さんと正式な場以外で話すのは初めてだったな。改めて、ストラウド王国の国王でそこの2人の父でもある、ラウター・ストラウドである。此度は迷惑を掛けた」
「いえ、お気になさらず」
「今は手持ちがない故、また王国に来た際にお礼を渡そう」
コクンと頷く。
「そして、エレオノーラ殿。どうか、これからもメアの事をお願いしたい」
「えぇ、分かりました」
国王にここまで言われてしまっては、エレオノーラさんの外堀も完全に埋まってしまった様なものだ。
「しかし、危険な場所とは聞いていましたが、この家に居る限りメア王女に危害が加わる事は無さそうですね。場合によっては王城よりも安全かもしれませんね」
リビングで寛いでいるティー達を見ながら、宰相のアゼスさんが言う。
「師匠もこう言ってますし、私もここに住む事にします!」
「駄目に決まっているでしょう。貴女にも王族としての務めがあるのですから、今はまだ王城で暮らしなさい」
「はーい・・・」
シルアさんが、まだと強調したのを俺とエレオノーラさんは聞き逃さなかった。
「そう言うわけだ。そろそろ城に帰るとしよう。ずっと居ても皆さんに迷惑だからな」
「「えー・・・」」
メアさんだけでなく、シルアさんもそんな反応を示す。
「なぜ、シルアまでそんな反応なんだ?」
「お父様、ここには研究しがいのある物が沢山あるのです!」
「うぅむ」
王様は研究者気質と聞いているので、シルアさんの言葉に揺り動かされる。
「ダメですよ?もう、全員で帰る手筈は整っておりますので」
「いや、しかしシルアがここまで言っているのだ。ちょっとくらい・・・」
「ダメです」
アゼスさんの力強い言葉に3人がうなだれる。
「良かったら、また来て貰っても構わないですよ」
俺の言葉に3人共、嬉しそうな顔をする。
「それでは、この度はご迷惑をお掛け致しました。次に、王城にお越し頂く時は連絡を頂けると、歓待の準備を致しますのでよろしくお願いします」
アゼスさんさんが丁寧に挨拶し、メアさん達にも別れを告げてエレオノーラさんに森の外まで見送って貰うのだった。




