帰宅
この街に来て5日が経った。今日は遂に拠点へと戻る日だ。
朝食を食べた後に、拠点に戻る為の荷造りをした。荷造りといっても、マジックバックに買った物などを放り込むだけで大丈夫なのですぐに片付いた。
そして、宿屋を出て街の門へと向かった。
「さて、帰るにあたって1つ問題があるのだが・・・」
とエレオノーラさんが切り出した。
「魔の森までは距離があるが、馬車を持っていない我々の移動手段は徒歩のみになる」
来た時は運良く通りがかった馬車に乗せてもらえたが、帰りにも馬車が通るとは限らない。
どうしようかと悩んでいると
「あの〜、すみません」
と後ろから声を掛けられた。
後ろを振り返ってみると、そこには年老いた男性が立っていた。
俺がどこかで見たことある人だなと考えていると、
「もしかして、この街に来る際に乗せて頂いた馬車の方ですか?」
とアリーが言った。
「えぇ、そうです。見覚えのある方達の後ろ姿が見えたので、声をかけさせて頂きました」
どうやら、アリーの言った通り行きの際に馬車に乗せてくれた人だったみたいだ。
「皆様はこちらに集まってどうされたのですか?」
「実は、魔の森の近くまで行きたいのですが、馬車が無く歩きで行こうか迷っていた所なんです」
と俺は答えた。
「そうですか・・・それでしたら帰りも私の馬車に乗って行かれますか?」
「迷惑ではないですか?」
「いえいえ、迷惑ではないですよ。実は帰りの時も護衛がいないのでどうしようかと思っていた所なんです。なので、皆様が居てくださるとこちらとしてもありがたいんです。それにこれも何かの縁ですし、是非私の馬車にお乗り下さい」
「では、お言葉に甘えて」
こうして、行きと同様に馬車に乗せてもらことになったのだ。
男性は、すぐさま馬小屋に停めてあった馬車を持ってきてくれた。
俺達はそれに乗り、街を出発した。
街を出てしばらく経った。
行きの際には数回、魔物に遭遇したが、今回は魔物の気配が全くなかった。
「魔物、全然出ませんね」
「この辺にいた魔物達は、先日街に攻めて来た奴らなんだろう」
とエレオノーラさんは言った。
「そういえば、エレオノーラ。先日ギルド長とは何をお話ししていたのですか?」
「そうでした、実はどうやら王都の方では、お嬢様とその従者が失踪したというのが広まっており、ギルド長もその話を聞いていたみたいで、何故私が見たことのない男とこの街にいるのかと聞かれました」
「なるほど、そうなのですね。ちなみにエレオノーラはなんとお答えしたのですか?」
「正直にお嬢様が生きている事を伝えましたが、秘密にしてもらうようには約束致しました」
「そのギルド長は信頼できるのですか?」
「はい、私が冒険者になった頃からお世話になっている人物ですので、信頼はできます」
「エレオノーラがそういうのであれば、私も信頼致しましょう」
「それと事後報告ですまないが、コタケ殿の事も必要最低限のことは伝えさせて貰った」
「さすがに、素性の知れない男が知り合いの側にいるのは不安でしょうし、大丈夫ですよ」
「そう言ってもらえると助かる」
と色々と話している内に、魔の森まで来ていた。
ただ、魔の森の途中で降りると不思議に思われるので、少し通り過ぎた所で馬車を降りることにした。
その後、魔の森を過ぎて20分程が経った。
馬車の男性にはここで降りることを伝えた。
あと2時間程で彼の住む村に着くみたいで、そこでお礼をしたいと言われたが、時間も無いので気持ちだけで十分と伝えた。
そして俺達は、そこから30分程歩いて来た道を戻り、前回この森から出てきた所に到着した。
森に入る前に、お昼時になっていたので、街の屋台で買ったご飯を食べて一休みしてから、森の中へと入っていった。
そこからは、特に魔物と遭遇することも無く無事に拠点へと到着した。
ここから離れてから、5日しか経っていないがとても久しぶりに来た感じがした。
拠点を囲っている壁には見た所異常はなさそうなので、茶スライムに封鎖していた入り口を開いて貰った。
中に入り、周りを見渡したが建物にも被害はなさそうだった。
俺とアリーとエレオノーラさんとアンさんとリビアさんは家へと入り、クロ達スライム組は自分達の小屋へと戻っていった。
「それにしても疲れましたね」
「買い物だけのつもりが、予想外のハプニングがあったからな。今日はしっかりと休んでおこう」
これでやっと一息つけると思った矢先に、家のドアを誰かがドンドンと叩く音がした。
それを聞きドアを開けると、小屋に戻ったはずのクロ達がいた。
何やら、慌てているみたいで俺について来いと言っているみたいだ。
クロ達に連れられてやって来たのは、彼らが寝床にしている小屋だった。
「この小屋がどうかしたのか?」
どうやら中に何かあったみたいで、入って確認することにした。
小屋の中に入ってみると、ガサガサという音と共に何やら人影のようなものが見えた。
「誰かいるのか?」
と声をかけてみると、
「誰じゃ、わらわの眠りを妨げるのは!」
という声と共に、ツノの生えた1人の少女が現れたのだった・・・
今回で街編は終了です。
次回からまた新展開です。
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