クロの災難
「クロー、いるー?」
俺はクロ達が寝ている小屋の扉を開ける。
そこには、クロや他のスライム達もおり呼ばれたクロが俺の元にやって来る。
「今から、ホープの所に行くんだけど付いて来て貰っても良い?」
そう尋ねると、クロは快く了承してくれる。
そうして、クロと庭を歩いていると、
「あっ!危なーい!」
「クロ、避けるんじゃ!」
横からオルフェさんとティーの声が聞こえたと思ったら、前を歩いていたクロに何かが当たり、そのまま吹き飛ばされてしまった。
「クローーー!?」
慌ててクロの側に駆け寄ると、傍らに白いボールが落ちていた。
「クロ、大丈夫?」
クロは体を震わせてから大丈夫と反応する。
「ごめーん!手元が狂っちゃった〜」
「怪我は無いか?」
どうやら、ティーとオルフェさんがキャッチボールをしていて、そのボールが飛んできた様だった。
「2人とも気を付けてよ」
「ごめんなさい」
「気をつけるのじゃ」
クロも特に気にした様子は無く、注意をしてホープのダンジョンへと向かう。
しかし、その道中。
クロが先頭で進んでいると、急に地面にピシピシと亀裂が入り穴が空き、クロがそこに落ちてしまったのだ。
「クロ!?」
穴を覗くと底は深くはなく、クロにもダメージは入ってなさそうだ。
ピョンピョンと壁を跳ねながら上に戻って来る。
「大丈夫?」
大丈夫だと反応を示す。
「なんか今日はついてないね」
さっきの事を思い出してそう言う。
クロも確かにと気落ちしていた。
そんな事がありつつもホープのダンジョンに到着する。
「ホープー?いるー?」
と呼びかけると、少し経ってから壁に取り付けられた小さなドアから眠そうに出て来た。
「もしかして起こしちゃった?」
時刻はお昼を過ぎているのだが、寝ていたとは思わなかった。
「昨日、徹夜しちゃって眠たいのよ」
「そうだったんだ。そんな時にごめんね」
「それで何の用事なの?」
「大した事じゃないんだけど、いつもお世話になってるお礼に」
俺はアンさんとリビアさん、お手製のクッキーを出した。
「本当に大した用事じゃないわね。まぁ、良いわありがたく受け取ってあげる」
「絶対に気に入ると思うよ」
「ふ〜ん・・・ちょっと待って、これ受け取ったから何かお願いを聞いてとか言わないわよね?」
「そんな事言わないよ。今の所は、特にお願いしたい事も無いし」
「今の所ね・・・」
「そう言えば、徹夜したって言ってたけど何かしてたの?」
「ちょっと魔物を生み出すのに試行錯誤していただけよ。何処かの誰かさんが私のダンジョンを修練場と勘違いしてるみたいだから、1回痛い目に合わせようと思ってね!」
恐らくクロの事だろうなと思い、ホープはワハハと笑っている。
「ほどほどにね?」
「ていうか丁度そこにいるじゃ無い。どうせなら今このまま見せてあげるわ!」
そんな事を言い出すと、ホープの前に魔法陣が現れて輝き出す。
「ハハハハ!覚悟しなさい!目に物見せてあげるわ!」
ホープは甲高く笑うのだった・・・
〜〜〜〜〜〜
「はぁ・・・クロ、大丈夫だった?」
ホープのダンジョンからの帰り道にそう尋ねると、クロは疲れた様に大丈夫と反応する。
結局、あの後ホープが取った行動は大量の魔物を召喚する事だった。
1体1体は強くなくても、数が揃えば脅威になり得る。
俺も参戦して何とかなったが、倒しても倒しても迫り来る魔物達に苦戦した。
ホープは満足したのか、帰り際には満面の笑みをしていた。
「今日はほんとに運が悪い気がするね」
クロのテンションはだだ下がりだ。
「こんな時は、帰って美味しい物でも食べよっか!」
俺がそう言うと、クロは少し元気を見せる。
「丁度昨日、お高めの肉を買って来てたんだよ」
お高い肉と聞いて、クロはピョンピョンと跳ねる。
そして、家に帰り約束通り肉を食べた事で、クロのテンションも上がって元気になるのだった。




