武闘大会
「武闘大会ですか?」
「ここ最近、動き足りなくてな。何処でそういった物はやってないだろうか?」
ある日の午後、レンダさんからそんな事を聞かれる。
「うーん、思いつくのは魔王ララさんの国の闘技場ですかね」
「今から行っても良いだろうか?」
「闘技場が開いてるかは分かりませんが大丈夫ですよ」
そう言うわけで、魔王国へと移動した。
〜〜〜〜〜〜
「他の人は連れて来なくて良かったんですか?」
「私のストレス発散だからな、それに付き合わせるのも悪いと思って。だから興味が無かったら、家に戻って後から迎えに来て貰っても構わない」
「俺も観戦してみたかったので大丈夫ですよ。それに他の人達も嬉々として付いて来そうですけどね」
「そうなのか?それなら呼ぶべきだっただろうか?」
などと話している内に、コロッセオに似た円形闘技場に到着した。
中からは歓声が聞こえる。
「どうやらやっているみたいだな」
中に入って選手として登録する為の受付に向かう。
今日は魔物を相手取って、5回の戦いをするそうだ。
「武器はご自身が使用している物でも、こちらで貸し出してしている物のどちらでも構いません。本日の最後の魔物は多くの挑戦者を葬って来ておりますのでお気を付け下さい」
不安な事を言われるが、レンダさんは逆にやる気満々になっている。
「武器はどうするんですか?」
「いつもの籠手を使っては簡単になりそうだから、闘技場にあった物を借りてみた」
鉄で作られたであろう銀色の籠手を嵌めていた。
「それじゃあ、頑張って下さい!」
レンダさんと別れて観客席に向かうと、既に他の魔族の選手が魔物と戦って盛り上がっていた。
相手の魔物は虎に似た姿をしており長く鋭い牙が凶悪そうだ。
どうやら魔族の選手の方が劣勢の様で、しばらくすると魔物に圧されて倒れ込んでしまう。
魔物は更に追撃し、鋭い牙を選手の腕に突き立てた。
「ぐああぁぁぁ」
選手は絶叫しながら降参し、審判達が魔物を引き離し試合終了となる。
見応えはあるのだが、なかなか痛々しい場面で心配になる。
「では続いてのチャレンジャーです!特徴的な赤色の皮膚に筋骨隆々とした姿!レンダ〜〜!」
そんなアナウンスと共にレンダさんが入場する。
「おい、あれってオーガじゃないか?」
「本当だな。なんでこんな所にオーガが?」
現代のオーガは戦わない種族なので、レンダさんの登場に観客は驚いていた。
そんな観客の騒めきなど関係なしに、レンダさんの向かいの門から1匹の魔物が入場し、1戦目が始まる。
1体目は、3m程のコウモリ型の魔物だ。
パタパタお上空を飛行しており、1戦1戦の制限時間は60分だそうで対空攻撃が無いと詰んでしまう。
魔物は可視化された音波の様な攻撃をレンダさんに放つ。
観客席にも微かに高い音が聞こえるので、レンダさんの場所では大音量が響いているのだろう。
しかし、その場にジッとしているレンダさんに、
「おいおい、気絶しちまったんじゃねぇのか?」
と観客は笑っていた。
すると、レンダさんは急にその場にしゃがみ込んだ。
そして、立ち上がると手には茶色の石を持っていた。
色合い的に、戦いの衝撃で破壊された闘技場の壁の破片なのだろう。
その石をポンポンと上下させると、魔物に向けて思い切り投げつけた。
魔物は反応する事出来ず、体に大きな穴が空いて力尽きるのだった。
その光景を見ていた観客は口をポカーンと開けていた。
「し、勝者レンダ!」
「「おおぉぉぉ〜」」
アナウンスの勝利宣言に観客も歓声を上げる。
「続いて2回戦に移ります」
アナウンスと同時に門が開くと、体長1mの小さなクモ型の魔物が出て来る。
小さくて動きも素早く、地面と壁を縦横無尽に駆け回る。
そして、口から太くて白い糸を発射するとレンダさんにヒットする。
上半身がグルグル巻きにされて、動けなくなったであろうレンダさんに詰め寄り、攻撃を仕掛けようとすると・・・
レンダさんは腕に力を込めて糸を引き千切り、詰め寄って来た魔物を叩き潰すのだった。
「勝者レンダ!」
危なげなく勝利したレンダさんに再び歓声が上がる。
「引き続き、3戦目を行います」
休み無く次の戦いが始まる。
次に現れたのは、ついさっき魔族の選手に勝利を収めた虎に似た魔物だ。
鋭い牙をギラつかせ、レンダさんから距離を取りタイミングを見計らっている。
「ガルゥゥ」
鳴き声を上げながら牙を向けて突進する。
レンダさんはそれを避けてやり過ごすのかと思いきや、自らの腕を出して魔物に噛ませたのだった。
前の人の惨状を知っているので、俺も観客も悲鳴をあげる。
しかし、そんな予想に反して魔物の牙はレンダさんの皮膚を貫通するどころか、傷すらも付ける事が出来なかったのだ。
全員が驚き、魔物も驚いた表情に見える。
「まぁ、こんなものか」
一言告げると、拳を振り上げる。
魔物は咄嗟に身を引いて攻撃に備えるかと思いきや、レンダさんの前で頭を下げて伏せをするのだった。
「ガウゥゥゥ・・・」
と弱々しい声で鳴き、まるで降参を伝えているかの様だ。
それを悟ったのか、レンダさんも拳をソッと下ろして攻撃を止める。
「勝者レンダ!」
アナウンスが響くと、
「うおぉぉ、なんだあのオーガ!」
「鋼の肉体でも持っているのか!?」
観客が一斉に騒ぎ出す。
「それではここで1度休憩に入ります」
アナウンスが流れると、レンダさんは拳を上げて去って行き、観客も歓声を上げるのだった。
 




