【番外編】母の日
「ママ!いつもありがとう!」
「急にどうしたの?」
お昼時、ベルからの突然の感謝に、オルフェさんは不思議そうにしている。
「なんかね、今日はママに感謝を伝える日なんだって」
「そんな日があったんだ」
「実はワタルさんの世界にあったイベント事らしいですよ」
アリーが補足して説明する。
「へ〜、アリシアちゃんもお母さんに何かしてあげたの?」
「私は昨日、花を贈りました。ワタルさんに聞いたら、花を贈るのが定番と聞いたので」
「喜んでた?」
「えぇ、勿論です。ただ・・・お父様が自分には無いのかとソワソワしていました」
「アハハ、なんか想像し易いね」
「お父様の分はありませんと言ったら、ショボンとなってしまって少し申し訳ない気持ちになりましたが」
ちなみにその場に俺も一緒に居たので、父の日もありますよとコソッと伝えたら元気になっていた。
「エレオノーラちゃんも、お母さんに何かあげたの?」
「私は午前中に会いに行って、ハンドクリームを贈った」
「アリシアちゃんの家で働いてるんだっけ?確かにピッタリな贈り物だね」
「アンとメアもノルシェ殿に贈り物をしたそうだ」
「そっか、育ての親みたいなものだもんね」
「私も似たようなものなんだけどな〜・・・チラッ?」
と話を聞いていたイルシーナさんが、メアリーさんをチラチラと見ながら大きな声で呟いた。
「貴女に育てられた記憶はありませんが?」
「でも、私のお陰で今ここに居る訳だし、お母さんよね?」
「どんな理屈なんですか・・・」
メアリーさんも呆れる。
「それでね、ママ!」
ベルが再び話始める。
「ママの為にクッキー作ったんだ!」
「本当!嬉しい〜」
「でも、ちょっと失敗しちゃって・・・」
「ベルが作った物なら何だって食べちゃうよ」
「そ、それじゃあ持って来るね」
そう言ってベルが持って来たクッキーは、真っ黒コゲになっていた。
「えっと、ベル?これは・・・」
「失敗して焼きすぎちゃって・・・ごめんなさい」
「そう言う事もあるよ」
フォローしつつ、オルフェさんはクッキーを1枚口に入れた。
「うんうん、いけるいける」
「ほんと?」
「ほんとだよ〜。皆んなにも食べて貰おうよ」
と言う提案に、1枚食べる事になる。
材料の入れ間違いは無かったらしいので、クッキー本来の甘みも感じたのだが、真っ黒コゲらしく苦味の方が勝っていた。
「なんて言うか・・・大人の味だね」
「まぁ、こう言う事もあるよ!次に期待だね!」
オルフェさんの言葉に皆んなが頷く。
「次は成功する様に頑張る!」
ベルはやる気に満ちながらそう言った。
「世の中のお母さん達は、こうやって子供の成長を感じてるんだね」
オルフェさんはしみじみとした表情で言い、母の日に感謝するのだった。
 




