イルシーナの力
イルシーナさんがやって来た翌日、我が家を少し改築する。
家を行き来するのに、わざわざ外に出ないといけないのが面倒だろうと思い、2階に渡り廊下を付け加え外に出なくても良い様にした。
「何その腕輪。凄いね?」
イルシーナさんは研究者気質なのか色々な事が気になる様で、腕輪をこねくり回している。
昨日、我が家の一員のクロ達とドラちゃんを紹介した時も、
「動くマンドラゴラ!?」
大きな声を上げてガシッと掴み観察していた。
流石に驚いたドラちゃんは解放された後、クロの後ろに隠れて警戒してしまい謝っていた。
改築を終えると、次の作業をする為にアンさんとリビアさんがやって来る。
「それでは始めます」
「はい・・・」
アンさんの言葉にイルシーナさんは大人しく返事をする。
今から何が始まるのかと言うと、それは掃除だ。
家を設置した後、皆んなが興味津々で中へと入ったのだが、物が至る所に散乱している光景を見たアンさんとリビアさんが掃除を申し出た。
「こちらはここでよろしいですか?」
「はい・・・」
「こちらは何処に片付けますか?」
「これはあそこに・・・」
2人はイルシーナさんに場所を聞きながらスムーズに片付け、1時間程で作業は終了した。
「今後はご自身でも片付けをして下さいね?」
「もし、同じ様な事になっていたら私達の方で勝手に片付けてしまいますので」
「気を付けます・・・」
2000年以上生きている魔女でも、我が家の要である2人には逆らえない様だった。
時間はお昼を過ぎ、イルシーナさんはティーとオルフェさんと一緒に庭に出ていた。
「今から、お主の力を測るぞ!」
「どーんと来ていいよ」
どうやらイルシーナさんの戦闘力を調べる様だ。
ちなみに、イルシーナさんも村であった魔女達と同様に空を飛べて、会った時に持っていた長い杖が箒に変化するそうだ。
「時に、お主は空間魔法以外使えるのか?」
「使えないよ」
「それじゃあ戦えなくない?」
「ふっふっふー、そこは私なりの戦い方があるんだよー」
オルフェさんの言葉にそう返す。
「どう言う事じゃ?」
「とりあえず、私に向かって魔法を撃ってみてよ」
「どうなっても知らんぞ?」
ティーは再度忠告をして、オルフェさんに指示して氷の魔法を放つ。
猛スピードで向かっていく魔法は、あと少しでイルシーナさんにぶつかるという所で、フッと消え去った。
「あれ?消えちゃった?」
「どうやったんじゃ?」
「実はね〜・・・ほっ!」
手を上空に掲げると、氷の魔法が飛び出して飛んで行った。
「むっ?もしや、お主の魔法でオルフェの魔法を空間に閉じ込めたのか?」
「せいかーい!私は魔法を出し入れ出来るんです」
「すっご〜い!それじゃあ魔法を溜め込む事も出来るの?」
「おっ、オルフェちゃんは鋭いね〜。魔法を溜めておいて、一気に放出したりも出来るよ」
「魔法がある時だけにしか使えんが確かに強いの」
「今はどれくらい溜めてるの?」
「うーん、威力は大小をあるけど5000発くらいかな?」
「「多っ!?」」
「魔女の村はいた頃に皆んなから、ちょくちょく貰ってたんだ。それで、村を出た後に使ってたから減っちゃったんだけどね」
「いや、十分過ぎるじゃろ」
「しかも、イルシーナちゃんの空間魔法の容量ってまだまだ余裕あるんでしょ?」
「そうそう、年々勝手に拡張されてくんだよね」
「何でも入りそうじゃな」
「何でも難しいかな?生きてる動物とかは入らなかったし」
「そこはマジックバックとかと同じなんだね」
「その魔法を応用して、メアリーを封印した石を作ったと言っておったな?」
「うん、なんか良く分かんないけど作れちゃったんだよね」
「そんな曖昧な・・・」
「でも、それを大量生産すれば生きてる動物とかも保存出来るんじゃない?生きてたメアリーちゃんも封印出来た訳だし」
「そうなんだけどさ、作るのに時間は掛かるし貴重な材料とかもあって簡単にいかないんだよね。しかも、封印がどれくらい続くかも分からなくて数分だったり、数百年以上だったりって感じ」
「つまり、私の封印も上手くいくか分からなかったけど、良い実験体が居たから試してみたと?」
「そうそう、まぁ流石に実験体までとは思ってなかったけど、良い機会だなぁ・・・って、うわぁ!」
いつの間にか後ろにいたメアリーさんに、イルシーナさんが驚く。
「なかなかの博打だった様ですね?」
「まぁ、あの頃はまだ私も若かったし、上手くいってるかは分からなかったんだよ」
「若かったって何歳だったの?」
「確か、100歳位と言っていた様な・・・」
「はーい、ストップ〜!女性の年齢をバラしちゃ駄目だよ〜?」
オルフェさんの疑問にメアリーさんが答えていると、イルシーナさんが止めに入る。
「妾より1000年は若いんじゃから良いじゃろ」
「そうそう、2000歳も3000歳も大して変わりないよ!」
「1000年の差を一括りにしないで欲しいなぁ!」
と年齢の事でワァーワァーと言い合ったりと、早くも馴染んでいる様子だった。




