とある魔女
「魔女を探す?」
「そうだ。とある森の中に住む魔女に会って来て欲しい」
そう言うのは、アリーの通っていた学園の長であるパラス・レイ・ゾーラである。
彼女?に呼ばれて学園にやって来ると、いきなりそんな事を言われたのだ。
「その魔女に何か用事でもあるんですか?」
「いや、私は無いよ」
「?」
「お前さん達に必要・・・という訳では無いが、会った方がいい人物だ」
「分かりました?」
「そうそう、行く時は一緒にいるヴァンパイアも連れて行くと良い」
「メアリーさんをですか?それはまた、どうして?」
「行けば分かる。詳しい事は手紙に書いてあるから読んでくれ」
そう言われ、意識が一瞬だけフワッとすると真っ暗だった広い部屋から学園の明るい廊下に戻っており、手には手紙を握っていた。
良い様に使われる頻度が高い気がするが、それなりに重要そうなので行く事にする。
〜〜〜〜〜〜
「私を名指しされたのですか?」
「うん、メアリーさんを連れて行った方が良いみたいで、行ったら理由が分かるみたいなんです」
「危険な場所と言う事でしょうか?」
「手紙には、大きな危険は無い森だと書いてはあるんですけど」
「そうなんですか?尚更、私が行く理由が分かりませんが、気になりますし行く事にします。しかし、私1人となると不測の事態に対処が出来なさそうではありますが・・・」
「はいはい!私も付いてく!」
オルフェさんが元気に言う。
「行くのって3日後でしょ?その日は丁度お休みで暇してたんだー」
「オルフェさんが一緒なら私も心強いです」
「でしょ〜」
「じゃあ、あとは移動だけど・・・」
「送ってはやるが、一緒には行けんぞ。その日は用事があるからの」
「うん、それだけでも十分だよ」
そういう訳で、3人で魔女に会いに行く事になった。
〜〜〜〜〜〜
3日後。
「とうちゃ〜く!」
ティーに乗って2時間、手紙に書かれていた森に到着する。
「じゃあ、妾は帰るから気をつけての」
「うん、ありがとう」
ティーを転移で先に帰す。
「一見は普通の森にしか見えませんね」
メアリーさんが全体を見渡しながら言う。
太陽の光も入った明るい森で、危険などは感じられない。
「よーし!早速いってみよー!」
オルフェさんが意気揚々と森の中に足を踏み入れた瞬間、
ドーン!
「グヘッ」
横から大きな丸太が飛び出して来て、オルフェさんが吹っ飛ばされる。
「大丈夫!?」
慌てて追いかけると。
「う、うん。平気平気、なんだけど・・・何これ?」
近くでオルフェさんに直撃した、3mの丸太が紐に吊るされてプラーンと浮いている。
「確実に罠ですね」
「ここにいるのって魔女じゃないの?これじゃあ狩人だよ」
「他にもあると考えた方が良さそうですね」
「ま、まぁ気を取り直してレッツゴー!」
再び、オルフェさんを先頭に俺、メアリーさんと続いて森の中に入って行くのだが、1分歩いた所で、
キンッ!
という甲高い音と共に、オルフェさんの目の前を銀色の何かが通り過ぎる。
恐る恐る横にあった木を見てみると、銀色に輝く鎌が突き刺さっていた。
「なんか、殺意が上がってるんですけど・・・」
「大きな危険は無いと言うのは嘘なのでは?」
「う、うーん?」
「ちょっと、コタケ君。私と場所変わってみない?」
「えっ!流石にそれは・・・」
「あはは、冗談だよ〜。それにしても、どうにかならないかな?」
「ダンジョンで使用する、トラップ用のランタンを使ってみてはどうでしょうか?」
「確かに!コタケ君、出して出して!」
言われて、マジックバックからランタンを取り出す。
「よーし、これでもう大丈夫だね!」
安心して進んでいたのだが、突如俺の視界がガクンと下がるのだった。
体が浮遊する感じがしてヤバイと思ったが、すぐにグッと止まり喉元が窮屈になる。
「危ない所でした」
後ろにいたメアリーさんが、服の襟を掴み止めてくれたのだった。
俺の視界が下がった原因はどうやら落とし穴の様で、穴の先には槍が設置されていて危うく串刺しになる所だった。
「なんで、私の時は反応しなかったんだろ?」
「ランタンも反応していませんでしたね」
「そう言えば、エレオノーラさんにダンジョンにはたまにランタンに反応しない罠もあるって聞いた事あるような・・・」
俺はそう言う。
「その可能性もありますが、恐らくここに住む魔女が魔法でトラップを隠蔽しているのでは無いでしょうか?」
「魔女って言うくらいだから、それくらいは出来そうだよね〜」
それが尤もらしい考えで、一応ランタンは使うが警戒を最大限にして進む事になる。
その後、しばらく何事もなく森の中を進んで行く。
「おっ?良い感じの切り株があるじゃん。ちょっと休憩しようよー」
気を張って疲れていたオルフェさんはそう言いながら、1mくらいの高さの切り株に座ろうと向かう。
すると、
「いけません!」
とメアリーさんが叫んで、オルフェさんに駆け寄り後ろに引っ張った瞬間、切り株の側面に大きな口が現れてバクッとオルフェさんを食べようとしたのだ。
「ギャー!」
「また、危ない所でした」
「何これ!?」
「ミミックの一種でしょう」
「ミミックってダンジョンの宝箱に擬態しているアレですか?」
「えぇ、アレと同じ物です。この森に適応して切り株の姿をしているのでしょう」
確かに宝箱がポツンと置いてあったら不自然だが、切り株なら警戒なく近づいてしまう。
「凶悪過ぎでしょ!」
「周りにある木も擬態している可能性を考えた方が良いかもしれませんね」
「メアリーちゃん、怖い事言わないでよ・・・」
警戒する箇所も増えて進むが、その後は特に問題なく進む事が出来た。
そして遂に、目的地であろう2階建てで煙突の付いたトンガリ帽子を模した屋根の建物が目の前に現れる。
「ここが目的地だよね?」
「手紙に書いてある家の特徴と一致はしてるね」
「ここにいる人が私に何か関係しているのでしょうか?」
「そ、それじゃあいくよ」
オルフェさんがドアをコンコンとノックする。
すると中から、
「はいは〜い」
と返事が聞こえて、ガチャとドアが開く。
「誰ですか〜?」
そう言いながら現れたのは、とんがり帽子を被り長い杖を持った銀髪の若い女性が現れた。
「あの、俺達・・・」
「あら?貴方・・・あの時のヴァンパイアの子じゃない!」
俺が学園長から言われて来た事を伝えようとした時、その女性はメアリーさんの顔を見てそう言うのだった・・・




