雷龍
「皆様、お久しぶりです」
「こんにちは」
「わーい!龍だー!」
「ベルー、走らないー」
今日は以前出会った、龍神の巫女をしているカンナさんが暮らす龍の里にやって来た。
「今日は龍王様はいないのですか?」
「ティーは野暮用で都合がつかなくて」
「そうでしたか。雷龍様も再戦を望んでいたのですが仕方ないですね」
「そう言えばそんな話もしてましたね」
「それでは今日はどう言った用件で?」
「実はベルがまた背中に乗りたいと言い出しまして、それを聞いた他の人もまた乗りたいと言い出して」
今回、ベルとオルフェさんに加えて、リッヒさん、メアリーさん、シェリー、レンダさんもついて来ている。
「そう言う事でしたか。多分、大丈夫だとは思いますが雷龍様に確認してみますね」
カンナさんは雷龍の元に向かい話しかける。
「グルゥ」
雷龍は鳴き声を発すると、カンナさんは頷いてこちらに戻って来る。
「大丈夫だそうです!」
「今ので何を言ってるか分かるんですね」
「はい、これも巫女の力の1つなので!では、早速乗せて貰いましょうか」
雷龍の元へと向かうが、少し違和感があった。
「以前よりも小さくなりましたか?」
リッヒさんがそう言い、違和感の原因が分かる。
以前見た時は全長が70mはあったが、今は30m程だろうか。
胴体をクルクルと巻いて鎮座している状態だが、それでも
大きさの違いが分かる程だった。
「実は雷龍様は胴体の伸縮が可能なんです」
カンナさんが雷龍に合図を送ると空へと飛び上がり、体がグングンと伸びていき以前と同様の長さに戻った。
「すごーい!」
「おー!これはティーフェンちゃんには真似出来ないね〜」
ティーが効いていたら対抗心を燃やしそうだが、伸びていく姿は迫力あった。
「それでは皆様、どうぞお乗り下さい」
背中に乗り上空へと飛び上がる。
「天気も良くて、風が気持ちいいですね」
「これは慣れないと酔いそうだ」
レンダさんがそう言う様に、ティーの場合は翼を動かして飛んでいる事で水平に進むのだが、雷龍はどうやって飛んでいるかは分からないが上下にクネクネと動きながら進んでおり、少し揺れて慣れていないと酔いそうなのだ。
「わーい!楽しいー!」
「これはこれで良いね〜」
「2人とも、あんまりはしゃいでいると危ないですよ」
そんな中でも、オルフェさんとベルはクネクネと動く雷龍の背中で飛んで楽しんでおり、メアリーさんがそれを注意する。
そうして暫く、里のある山の谷間を飛行して、ふと下の方を見てみるとワイバーンや小さなドラゴンが雷龍の姿を見るや否や慌てて逃げ出しているのが見えた。
「ここら辺ってドラゴンとか多いんですか?」
「えぇ、そうですよ。龍神様が居た影響か、そう言った龍に近い魔物が多いんです」
「それって結構危なくないですか?」
「実はそうでも無いんです。雷龍様という上位の龍が居る事で、他の魔物などは逃げて行くんですよ。ただ・・・」
とカンナさんが喋るのを止めて、前の方を指差す。
その先には体長15m程の赤色のワイバーンがこちらに向かって来ていた。
「あの様に逃げ遅れて、混乱に陥った魔物達はこちらに突進して来るのです」
「大丈夫なんですか?」
「えぇ、見ていて下さい」
すると、俺達の上空に黒い雲が立ち込め、ゴロゴロ ゴロゴロという音と共に雷が降り注ぐ。
「これ本当に大丈夫なんですか?」
「雷龍様の背中から出なければ大丈夫なので落ち着いて下さい」
そうは言うが周りに大量の雷が落ちているので、とてもドキドキする。
そして、ワイバーンが射程内に入った瞬間。
「グルゥ」
雷龍は唸り声をあげて、無数の雷を撃ち放った。
「ギャオォォォ」
ワイバーンが雄叫びをあげる。
雷の光が落ち着いてくると、目の前のワイバーンは真っ黒焦げになり、風によってサーッと流れて文字通り消し炭になるのだった。
「「すごぉ・・・」」
ワイバーンがいなくなった事で、黒い雲も無くなり青空が広がる。
「流石、雷龍様です!」
「あそこまでとてつもない攻撃をするとは思いませんでした・・・」
「これは勝てなさそうだ」
メアリーさんは驚き、レンダさんは何故か戦いを想定した感想だった。
そんな中、
「う〜ん、ティーおばあちゃんとどっちが強いの?」
ベルが何気なくそんな事を言った。
ティーがいれば即答で自分と言うだろう。
「う、うーん、どっちなんでしょうね?」
カンナさんも反応に困っている。
「グルゥ」
「えっ?あっ、そうですか・・・」
雷龍がカンナさんに何かを言っている様だ。
「何て言ったんですか?」
「えっと、本気を出した自分の方が強いに決まっていると」
「「あはは・・・」」
そんな言葉を聞いたらすぐに戦いに発展しそうだ。
「まぁ、ご本人も居ない事ですし、この話はまた今度という事で」
カンナさんの一言で保留となるのだった。
その後は里へと戻って行く。
「今日は急なお願いを聞いて貰い、ありがとうございます」
「いえいえ、またいつでも来て下さい」
「次はティーも連れて来ます」
「それは、荒れそうですね・・・心の準備をしておきます」
カンナさんは笑いながらそう返すのだった。
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家に帰ると用事を終えたティーが帰って来ていた。
「雷龍はどうじゃった?」
「元気そうだったよ」
「楽しかったー!」
「むむ、そうか・・・」
自分以外の背中に乗って喜ぶベルを見て、ティーは不服そうな顔をする。
「そう言えば、用事を済ませとる間に何度かクシャミをしたんじゃが、お主ら何か噂とかしとったんじゃないじゃろうな?」
そんな事を聞かれる。
「い、いや〜、そんな事はないよー」
ギギギと首を逸らす。
「ほんとかのう〜?」
「ほ、ほんとだよ?」
雷龍が自分の方が強いと言った事を伝えれば、今から喧嘩を売りに行きそうなので、何とか避けようとする。
「まぁ、良いか。次は妾も連れて行くんじゃぞ。雷龍とは決着をつけんといかんからの」
「う、うん」
結局、ティーと雷龍の戦いは避けられそうにはなかったのだった。




