魔法学園
「それじゃあ、今日は帰る前にこの都市の学園に寄って行くよ」
「「はーい」」
宿側が手配してくれた、魔法学園の見学に帰る前に行く事にした。
魔法を教える学園は都市に10個あり、今回向かうのはその内の1つのグランモルスという学園だ。
目的地まで自動馬車で向かうと、見えて来たのは派手では無い普通の校舎だ。
魔法学園と聞いて、思わず城の様な建物を想像してしまっていた。
馬車を降りて校門に向かうと、眼鏡をかけた1人の女性が立っており、
「学園の見学に来られた方々でしょうか?」
と話しかけて来た。
「はい、そうです」
「お待ちしておりました。本日、案内を致しますクローデと申します」
「よろしくお願いします!」
とベルが元気よく返事をする。
「まず、皆様はこの魔法都市を訪れたのは初めてでしょうか?」
「えぇ、そうです」
「それでしたら、初めに魔法都市がどういった所なのかを説明致します」
前日に図書館で読んだ魔法都市の成り立ちを説明して貰いながら、校内を歩き始める。
「ですので、こちらの魔法学園グランモルスでも見学の受け入れをしているのです」
「なるほどのう、来るもの拒まずか」
「皆様も魔法都市に入った時点で、1人の生徒の様なものなんです。初めて来られた方は必ず、この様な見学をしているのを疑問に思うのです」
「この学園ではどういった事をしているのでしょうか?やはり、生徒の授業が中心なんですか?」
メアリーさんが聞く。
「学園では魔法の授業と研究の両方を行っております。あちらに見える大きな建物が授業をしている場所で、小さな子供から大人まで魔法を学びたい者が多く集まっております」
5階建ての建物を指しながら答える。
「今回ご案内するのは、研究を行っている場所になります」
「そこではどの様な事を?」
「新たな魔法の研究や、魔法を使って製作した道具など様々物を研究し開発しているのです。例えば皆様が乗ってやって来た馬車も、こことは別の学園になりますがそこで開発された物なんです」
「あれは凄かったですね。しかし何故、他の国では普及していないのでしょうか?かなり便利な物ですが」
俺も思っていた事をアンさんが聞いた。
「実はこの都市で発明された物は、許可された物以外を外に持ち出す事は禁止されているんです」
「それはまたどうして?」
「戦いに用いられる事を危惧しているからです。過去にそう言った事があり規制が強化されたと」
「確かにあの馬車があれば、敵陣に勝手に突っ込むチャリオットに変化させられるからな」
エレオノーラさんが戦いの観点からそう言った。
「魔法なんてほとんど戦いの為にある様なものじゃろ」
我が家でも戦闘時における魔法の使用率は高いので、ティーの言う通りではある。
「確かに魔法は戦いの中で進化して来ました。なので、この都市を作った者達が戦いをあまり好んでいなかったというのもありますね」
「ちなみに他の国にも出ている物は、どういった物があるのでしょうか?」
「この都市の灯りにも使われている、光を発する鉱石ですね。実験の過程で偶然出来た物らしいのですが、常に光を出しており日中は光を遮断する袋などを被せ、暗くなったらそれを外して灯りとして使うんです」
「どれくらい保つのでしょう?」
「おおよそ1年になります」
「燃料要らずでそれは凄いな」
「ただ、作れる施設が限られており生産量も少なく、一般に普及はあまりされていないですね」
「その場合、値段もかなり張りそうですが」
「鉱石1つにつき、金貨5枚です」
「「高っ」」
1個で500万円もするらしい。
「それは普及も出来ないですね」
「なので大抵は、国の重要な場所や高位の貴族の方が買われております」
燃料の補充なども要らず、火事が起こる原因も無くす事が出来る反面、コストがかかり過ぎる欠点があり一長一短だ。
「さて、到着しました。こちらが研究棟になります」
2階建てや3階建ての建物がポツポツと並んでいる。
ここでは、火や水など魔法の属性に分かれて研究をしているそうだ。
すると、側にあったグラウンドの様な広場からドシンドシンと大きな音が響きそちらを見ると、茶色の2、3m程のゴーレムが動いていた。
「あれは何ですか?」
「あちらは土属性の者達によるゴーレムの研究です。魔法で作り上げた固い土を使い人型のゴーレムを作り、土木の運搬などをさせようとしているのです」
よく見るとゴーレムは、自分の背丈以上の木を1人で持ち上げて動いている。
「現在は魔法を使用した者の意思通りにしか動かず、耐久面でも少々不安はありますが、将来的には自動で動く様なゴーレムを作成予定です」
まるで自動化されたロボットの様だ。
しばらく見ていると、ゴーレムの腕が木の重さに耐え切れずボロボロと崩れてしまった。
「あれが完成しても他の国には出せないな」
当然ながら兵士の代わりとして、戦場に駆り出されるだろう。
「他の素材で耐久上げる事は出来んのか?」
「金属なども試しましたが、その分コストが掛かり動きも少し鈍くなったのです。なので、簡単に魔法で作れる土が最適なんですね」
と話している内に、ゴーレムの側に居た人が魔法で新たな土の腕を作成して、再びゴーレムに木を担がせて動かし始めた。
これをどうやって自動化させるかは分からないが、実現されればより発展に繋がりそうだった。
〜〜〜〜〜〜
「皆様、どうでしたでしょうか?」
他の属性の研究棟も周り、校門へと戻って来た。
「楽しかった!」
「色んな物が見れて勉強になりました」
各々が感想を言う。
「それは良かったです。どの学園も見学の受け入れをしておりますので、興味が湧いたらご覧になって下さい」
予約は必須との事だが、他にも面白い研究をしていないか見てみるのは楽しそうだった。
こうして学園の見学を昼前に終え、最後に魔法都市で食事を済ませてから、転移にて我が家へと帰って行った。




