魔法都市
「とうちゃく〜!」
「とうちゃーく!」
「2人とも、まだ先に行かないでね」
「「は〜い」」
「ティーもありがとう」
「うむ、早く高級宿とやらに泊まりたいのじゃ」
街の福引きで旅行券を当ててから、2週間が経ち目的地の魔法都市にやって来ていた。
「じゃあ他の皆んなも連れてくるね」
ティーの背中に全員が乗る事はできないので、転移のゲートを開き家で待機していた人達を呼ぶ。
「わぁ、凄いですね」
「綺麗な都市」
ゲートから出て来て都市を見た各々がそう言う。
都市は大きな湖の真ん中に円状に広がっており、四方の4つの橋から入れる様になっていた。
「今まで行った大きな街とかって、周りが壁で囲まれてだけどここは無いんだね?」
「魔法都市は強力な結界で護られていて、それが外敵からの攻撃を防ぐそうだ」
俺の疑問にエレオノーラさんがそう答える。
「こっちの方が景観も良くて良いですね」
とアリーが言う。
「ねぇねぇ、早く行こうよー」
「行こうよー」
オルフェさんとベルが急かすので、橋を渡り兵士のチェックを受ける。
「ようこそ、魔法都市アスタリオンへ!」
都市の中は人が沢山で活気が溢れており、ほとんどの建物の外壁が白を基調としており明るい雰囲気だった。
「わぁ〜何あれー!」
ベルが何かを見つけてはしゃいでいる。
目線の先にあったのは、何の素材かは分からないが人の手で作られた等身大の2頭の馬の模型の様な物が、人が沢山乗った車輪の付いた四角い箱を引いて動いている。
「本当に何だろう?」
「あれは、自動で目的地まで移動する馬車の様ですよ」
いつの間にか、手元にパンフレットを待っていたアリーが説明する。
「詳しい事は分かりませんが、魔法で動いているのだとか」
「魔法ってそんな事まで出来るんだ」
「あれ乗りたーい」
「一旦、宿に向かってからね」
はしゃぐベルを落ち着かせて、チェックインをする為に宿へと向かう。
パンフレットの地図を頼りに到着した宿は、5階建てて新し目ながらも上品で落ち着いた雰囲気だ。
中に入りチェックインをして荷物を預け、再び外に出る。
「夜はご飯を用意してくれてるって」
「それよりも、まずは昼ご飯じゃろ」
ティーの言う通り、お昼も近くお腹も空いていたので宿の近くにあったレストランに入る。
魔法都市では、我が家の様に魔法で野菜の成長を促進している様で、様々な物を時期に限らず食べる事が出来ると言うので、それを堪能した。
「それじゃあ、この後は自由行動ね。夕方にはこの宿に戻って来る事」
「「はーい」」
「ママ、あっちー!」
「はいはい、走らないー」
早速オルフェさんとベルが走り去って行く。
他の皆んなは、パンフレットを見ながら何処に行こうか決めている。
「アリーはどうする?」
「宿の反対側に大きなマーケットがあるみたいなので、あの場所でそこに行こうと思います」
「護衛は大丈夫?」
「はい、アンとリビアにエレオノーラとメアリーさんも一緒に来るので大丈夫です!」
「そっか、それなら安心だね。気を付けて行って来てね」
アリー達を見送る。
「妾はぶらぶらしておるかの」
「うん、気を付けてねー」
ティーを見送り、続いてシエルさん、シェリー、レンダさんの3人は闘技場を見に行くそうで見送る。
「残ったのは俺とリッヒさんと、ルインは・・・」
「何処かに行きました」
ルインはいつの間にか消えていたそうだ。
「リッヒさんは何処に行きたいか決まった?」
「私は、図書館に行ってみたいと思います」
「あっ、俺も丁度気になってたんだ」
「では、行ってみましょう」
図書館のある方面に向かう自動馬車に乗る。
バスの停留所の様な物があり、定期的にそこに止まるようなシステムになっており乗り心地も悪く無く、この世界にやって来て1番前世に似た発展を感じる。
馬車に揺られる事20分。
大理石で作られた大きな図書館に到着し中に入る。
「ここには、魔法に関するあらゆる本が揃っているそうです」
「そんな所に観光客の俺達も入って大丈夫なんだね」
「確かに普通に入る事が出来ましたね」
身分証を求められる事もなく普通に入れた事に疑問を抱きつつも、大量の本で埋め尽くされた図書館内を一望する。
「本の種類事に分けられているみたいですね。私は風魔法の本を読みに行って来ます」
リッヒさんと別れて、この魔法都市の成り立ちが簡単に書かれている本を見つけたので読んでみる事にした。
遥か昔、魔法都市が出来る前にこの大きな湖の側に1人の高名な魔法使いが暮らしていたそうだ。
それを知った他の魔法使い達が弟子にして欲しいと集まり、その人達の弟子にとまた人が集まり、弟子の弟子、そのまた弟子とドンドン人が増えていき、村から街、街から都市へと変貌していったそうだ。
この都市全体が魔法使い達の学びの場所で実験の場所でもあり、来るもの拒まず去るもの追わずと言った感じなんだそうで、この図書館に普通に入れたのも頷ける。
そんな感じで色んな本を読んでいるとすぐに夕方になり、宿へと戻って行く。
何人かは既に戻って来ており全員が揃ったので、まずは夕食にする。
ビュッフェ形式で、色々な料理が並べられている。
「貸切なのにここまでして貰えるとは思ってなかったね」
「凄い大盤振舞ですよね」
「本当、当たって良かったよ。さっき宿の人から聞いたんだけど、明日この都市にある学園の1つを見学させて貰えるんだって」
「それは楽しそうですね」
とアリーと話しながら料理を取りテーブルに着いて、他の人達が何処に行って来たのかを話す。
シエルさん達の行った闘技場は、魔法のみの戦いらしく派手で迫力があったそうだ。
アリー達はマーケットで、実家やテンメルスさん達へのお土産を買ってくれたらしい。
オルフェさんとベルは、途中でティーと合流して魔法動物・植物園なる所に行って来たそうで、魔法で風景に溶け込む動物や火を吐く植物など滅多に見ない物が見れたようだ。
それぞれの話を聞きつつご飯を食べ終えると、
「それじゃあ、今から部屋決めをしまーす」
俺はそう言う。
「なんでも、最上階にスイートルームが1部屋あるみたいなんだって。そこに泊まれるのは1人だけ・・・だから公平にジャンケンで決めます」
「ワタルさんが福引きで当ててくれたのですから、その部屋でも誰も文句は言わないと思いますが」
皆んな、うんうんと頷いてくれる。
「でも、皆んなもその部屋に泊まってみたいでしょ?」
俺のその言葉にも頷く。
「じゃあ、ジャンケンにしよう」
俺は手を出す。
「最初はグー、ジャンケン・・・」
結果、
「本当に私で良いのでしょうか?」
「メアリーちゃん!なんなら、私が代わってあげよっか?」
「いえ、遠慮しておきます」
メアリーさんがスイートルームに泊まる事になった。
「高級宿だから、それ以外の部屋も十分満足出来ると思うよ」
「他の部屋は早い者勝ちじゃな」
「じゃあ、私とベルは角部屋ー!」
「あっ、ずるいです!」
とオルフェさんとシェリーが小走りに上階に駆けて行く。
「どの部屋も変わらんだろうに」
エレオノーラさんが呆れながらそう言った。
「妾も疲れたから今日は早めに寝るのじゃ」
「明日も予定があるから、皆んなもしっかり休んでね」
そう言って部屋を決め、お風呂でゆっくりしフカフカのベッドの上でぐっすり眠るのだった。




