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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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午後の依頼

弁当を食べ終わり少し休憩を取った所で、


「さて、お昼の依頼を片付けようか」


とアナスタシアさんが立ち上がる。


「え〜、もっとゆっくりしていこうや」


「食べ過ぎて眠たい」


「今日の依頼はこれで終わりだから、やる気を出せ」


「午後からは何をするんですか?」


俺は確認する。


「街の外の旧共同墓地の掃除ですよ」


「墓地の掃除?」


Sランクのパーティーはそんな事までするのかと不思議に思う。


「コタケ殿の思っている掃除とは違うと思うぞ」


エレオノーラさんは少し笑いながら言う。


「墓地の掃除かいなぁ」


「また面倒な」


2人もあまりノリノリでは無さそうだ。


「さっ、早く立て。こんな所に居ても依頼は終わらないぞ」


「「は〜い」」


2人も立ち上がり、街の外に出て午前中とは逆の方向に向かう。

少し歩いた所に背の高い木で囲まれ、至る所に小さな石碑が置かれている広い墓地に到着した。


一見普通の墓地の様に見えるが、何処からか


カラン カラン


と音が聞こえて来る。


「来たぞ」


クリスタさんがそう声を上げると、木の後ろから音を立てながら、くすんだ白色のスケルトンが現れた。


「あれって魔物ですか?」


「長く放置されている墓地には、スケルトンなどの魔物がよく湧くんだ。だからこうして、定期的に掃除という名の討伐を行っているんだ」


「本来なら、もう少しランクの低いパーティーが受ける依頼なのだが・・・まぁ、見てもらった方が早いかな」


そう言ったアナスタシアさんは、スケルトンを剣で斬り込みバラバラにした。

しかし次の瞬間、骨は浮き上がり元のスケルトンの形へと戻ったのだ。


「とまぁ、こんな感じで普通に斬った所ですぐに元に戻ってしまうんだ」


「それじゃあどうすれば?」


「そこで登場するのが聖水や!」


チズルさんが透明な液体の入った瓶を取り出した。


「これをな、こうやって武器とかに掛けて・・・ほっ!」


そう話しながら瓶の液体を盾に掛けて、アナスタシアさんが斬って元に戻ったスケルトン目掛けてタックルをして、骨がバラバラに散る。


すると、さっきはすぐに元に戻ったのに今回は一切微動だにしない。


「これが聖水の効果ですか?」


「そうや!聖水には浄化の効果があるから、それで復活してこんのや」


「聖水を使えば簡単に見えるだろうが、実はこの聖水が少々値段が張ってな、あまりやりたがらなくて、残った依頼が我々の方に回って来たのだ」


そう言う事かと思いつつ、ふと気になる事があった。


「以前ダンジョンに行った時にもスケルトンは居ましたけど、あの時は聖水を使って無かったですよね?」


「それはな、ダンジョンコアから生まれるスケルトンと自然に発生するスケルトンは何故か別のものなんだ。ダンジョンのスケルトンは武器や防具を持って現れる代わりに斬って倒すだけで消滅するが、自然に発生するスケルトンは武器などを持たない代わりに聖水などを使わなければ倒せないんだ」


「エレオノーラが説明してくれた通りだ」


話をしていると、奥の方からぞろぞろとスケルトンの軍団がやって来た。

数は100体近くは居そうだ。


「よし、2人とも準備は良いな?」


チズルさんは盾に、クリスタさんは矢に聖水を掛けて応戦を開始する。


前衛の2人が背中合わせに戦い、死角をクリスタさんが矢でフォローするという、見事な連携でスパスパと倒していく。


アナスタシアさん達はものの10分で、100体近く居たスケルトンを倒し終えた。


「意外と楽やったなー」


「早く帰ろう」


「はいはい、ギルドへの報告が終わってからな」


と帰ろうとした時、散らばった骨がカラカラと音を立てながら1ヶ所に集まっていく。


「もぉ〜なんやねん!折角帰ろうとしとったんに」


「チズルがいらない事を言うから」


「クリスタもそうやろ」


2人がやり取りしている間に骨はだんだん形を成していき、20m程の骨のドラゴンへと変化したのだった。

まだ完全には変身しきってない様で、動く気配は無い。


「うげ〜、なんやねんコイツ」


「どうやら残業の時間の様だが、少々聖水の残りが心許ないな」


アナスタシアさんは、残り僅かになった聖水の瓶を見ながらそう言う。


「どうするんですか?」


「うーん、そうだな・・・幸いにもここは街からも近いからクリスタに聖水を持って来て貰って、私とチズルがこのデカ物を抑える他ないだろうな。多少、骨が折れるだろうが」


「敵が骨だけに」


「ぷっ、アナちゃんなにオモロい事言うてんねん!」


クリスタさんのボソッとした呟きにチズルさんが大笑いする。


「いや、私は狙ったつもりは無いんだが・・・まぁ、いい。とりあえずこの方法しか無いから、クリスタ頼んだぞ」


「了解」


クリスタさんが駆け出そうした時、


「ちょっと待った」


とエレオノーラさんが待ったをかける。


「どうした?」


「今回は別の方法で倒す事が出来るので、面倒なのでそれでいきましょう」


「ほう?どんな方法なんだ?」


アナスタシアさんに言われたエレオノーラさんは、唐突に俺の方を見てきて腕を上下するジェスチャーをしてきた。


「うん?えっと、どう言う意味です?」


「アハハ、エレオノーラちゃん笑わせんといてや!」


エレオノーラさんの謎の行動に、チズルさんとクリスタさんが笑い、動きを止めて顔を赤くする。


「うー・・・コタケ殿!剣だ!剣!」


「・・・あっ、えっともしかして聖剣の事ですか?」


「そうだ!さっきの動きで分かってくれ」


そんな無茶苦茶なと思いつつ、聖剣を取り出す。


「おぉ、綺麗な剣だな」


アナスタシアさんは興味津々だ。


「これはコタケ殿の持つ聖剣で、とても強力なんです」


「ふむ、確かにスケルトン達に聖剣はかなり有効だな」


「どういう事ですか?」


「以前にも、聖剣は魔物に対して強い効果を発揮すると教えたと思うが、スケルトン達には聖水と同じ効果が発揮されるんだ。だから、コタケ殿の強力なその聖剣なら一振りでなんとかなると思うぞ」


「それはまた大きく出たな」


「えぇ、見ていて下さい。さっ、スパッと思い切ってやるんだ」


と皆んなから期待の眼差しで見られる。


「えっと、じゃあやりますね」


俺は前に出て動き出したドラゴンに向かい、聖剣を掲げて真っ直ぐに振り下ろす。

そして、剣から斬撃が放たれ・・・スパッと柔らかい物を切ったかの様にドラゴンは真っ二つとなり、カランカランと音を立てながら骨がバラバラに散るのだった。


「やるやん!」


「凄い」


「これは凄まじい威力だな」


「えぇ、そうでしょう!」


「なんでエレオノーラちゃんが嬉しそうやねん」


「是非とも使ってみたいな」


「ふっふっふ、残念ながらそれが無理なんですよ」


「どう言う事だ?」


「コタケ殿、リーダーに剣を渡してくれ」


俺は頷き、アナスタシアさんが柄を握った所で手を離すと、ズドンと一瞬で剣先が地面に食い込んだ。


「うおっ!な、なんだこれは?全く持ち上がらない」


必死に持ち上げようとするが上がる気配は無い。


「なんや、アナちゃんは非力やな。ウチがやったるで!」


チズルさんが意気揚々と柄を握るが、


「ふんぬー!なんやコレ!重すぎやろ?」


「2人とも情けない」


次はクリスタさんが挑むが、


「無理」


ちょっと力を入れただけでギブアップした。


「これは・・・選ばれた者しか持ち上げられないといった類いの物か?」


「流石です。その通りで、この聖剣はコタケ殿にしか扱えないのです」


「それはまた面白い剣だ。しかし、あの威力は凄まじかったな。是非とも我がパーティーに入って奮って欲しいものだ」


「ええやん!仕事が楽になりそうやな」


「確かにそれは良い」


「待て待て、コタケ殿にも生活があるんだ」


「お誘いは嬉しいですが、俺本人が弱くて皆さんの足を引っ張ると思うので、遠慮しておきますね」


「そんな事が気にならない様に我々がフォローはするが、気が変わったらいつでも言ってくれ歓迎しよう」


「ありがとうございます」


墓地での依頼を終えてギルドへの報告も終えると、早くも夕方になっていた。


「名残惜しいが、今日はこれでお別れかな?」


「今日は1日、ありがとうございました」


「ありがとな〜!」


「ありがと」


「今日は偶然この街での依頼事だったが、基本的に色んな場所の依頼をこなしているから会いにくいとは思うが、予定が合えばまた来て欲しい」


「次は他の人も紹介したいです」


「その時は、エレオノーラの彼女も紹介してくれると嬉しいぞ」


「いえ、だからそう言う関係では無いですって・・・」


「はっはっはっ、皆んな気になっているんだ。1回くらい会わせてくれ」


「まぁ、考えておきます」


「楽しみにしているぞ」


こうして、白薔薇への1日密着が終わったのだった。

1日投稿お休み致します。

次回更新は4月13日です。

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