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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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白薔薇

正午前、マゼル王国・王都ギルド本部前にて。


「ほな、今日はよろしくなー!」


「よろしくお願いします」


俺の眼前で元気良く挨拶をしてくる、大きな盾と白い鎧を身に付けた小柄な黒髪の女性と、その後ろには静かに佇む白いローブを着た青髪の女性が居た。


「チズルは相変わらずうるさいし、クリスタはもう少しやる気を出してくれないか?」


「うるさいってなんやー」


「早く帰らせろ」


「はぁ・・・」


エレオノーラさんは2人の反応に溜め息を吐く。

今日は、エレオノーラさんが昔に所属していたパーティーの白薔薇にお邪魔させて貰っている。


「えっと、リーダーのアナスタシアさんは・・・?」


「本当だな?何処に居るんだ?」


「もう少しで来ると思うで!」


以前は会えなかったリーダーが今日は居ると言うので、挨拶がてら会いに来たのだが姿が見えない。


「あそこに居たぞ」


クリスタさんが指した方を見てみると、チズルさんと同じ様な白い鎧を着込み、腰には2本の長剣を携えた金髪ロングの女性が走って来た。


「すまない!遅くなった」


「もう待ちくたびれたわ〜」


「はは、すまない。どの武器にしようか迷ってな」


「アナちゃん、どの武器でも同じやないかい」


「その日の気分とかもあるんだ・・・っと、すまない。お客人をほったらかしにしてしまったな」


アナスタシアさんはコホンと咳払いをし、


「初めまして、アナスタシアと言う者だ。エレオノーラから聞いているとは思うが、この白薔薇のリーダーを務めている。今日はよろしく頼む」


「コタケ ワタルです。こちらこそよろしくお願いします。」


「あとの2人は1度会っているから分かると思うが、少しクセがあるが大目に見てくれると助かる」


「なんや、クセって〜!」


「私はチズルほどじゃない」


「おっ?なんや、なんや?やるんか?」


アナスタシアさんの後ろで、2人が取っ組み合いを始めるが気にしていない様子なので日常茶飯事なのだろう。


「はぁ、騒がしいパーティーですまない」


とエレオノーラさんが謝る。


「エレオノーラも久しぶりだな!」


「えぇ、お久しぶりです」


エレオノーラさんにしては珍しく丁寧な言葉遣いだ。


「なんで、そんな不思議そうな顔をしてるんだ?」


俺の顔を見たエレオノーラさんがそう聞いて来た。


「同じパーティーメンバーなので、もっと砕けた口調かと思っていたので」


「リーダーには私もお世話になったからな」


「私達にはお世話にならんかったって言うんかー?」


「薄情な人」


「お前ら、こういう時だけは仲が良いな」


取っ組み合いをしていた2人が息を合わせてそう言う。


パンッ


「さて、自己紹介も済んだ事だし。早速依頼事に移るとするぞ」


アナスタシアさんは手を叩いて声を掛ける。


「よーし、張り切っていったるでー!」


「早く終わらそう」


「エレオノーラは後方でコタケさんを守りつつ警戒をしていてくれ」


「そのつもりです」


そういうわけで、白薔薇の1日密着が始まった。


「まず、今日の最初の依頼は・・・逃げた猫の捕獲だそうだ」


「なんやねんそれ!」


「リーダー、依頼間違えたんじゃない?」


「まぁ、待て慌てるな。この依頼は国の魔法部門から来た物だ」


「うぇぇ、ほな面倒やないか」


「なんでそんな物を引き受けて・・・」


アナスタシアの言葉を聞いた2人は、意見をまるっと変えた。


「そんな面倒な依頼なんですか?」


エレオノーラさんに聞いてみる。


「魔法部門で取り扱っている生物は普通では無いんだ。だからこの猫も十中八九、変わったものだろうな」


「猫は街の外の平原に向かったそうだ」


「面倒事はさっさと解決や!」


街を出て件の平原に到着する。


「この中から探し出すなんて言わないで」


クリスタさんがそう言うが、アナスタシアさんは無情にも、


「この中から探し出すに決まっているだろう」


そう言い、ガクンと頭を下げる。


「まぁ、手分けして探し出すのも良いんだが、依頼主からある物を預かってきた」


そう言いながらマジックバックを手探り取り出したのは、新鮮な真っ赤な肉だった。


「これが対象の好物らしくてな、これを置いて匂いで誘き寄せるんだ」


「このだだっ広い場所で本当に来るんかいな?」


「嗅覚が鋭いらしいから大丈夫だろう」


肉をセットして、離れた所から見守る。


「さて、来るまで暇だし、コタケさん」


「はい?」


「エレオノーラの恋人の話を聞かせてくれないかな?」


「んなっ!」


唐突な問いにエレオノーラさんが驚く。


「べ、別にメアは恋人という訳では・・・まだ、良き友人です!」


「ほう?まだ、な?」


「うっ!」


墓穴を掘ったと、しまったという表情をしていた。


「そうですね、ではエレオノーラさんとメアさんの出会いから・・・」


「コタケ殿!?」


俺は2人の事を話し始めるのだった。


〜〜〜〜〜〜


待ち続けて、30分後。


「この前なんかは、2人でご飯をアーンってしてましたよ」


「おぉ!あのエレオノーラが!」


「いや、それはなんかその場の雰囲気に当てられて・・・」


話していると、


ニャー


と猫の鳴き声が聞こえて、セットした肉の方を全員で見る。

そこにいたのは、黒色の普通の猫だ。


「あれが対象なんですか?」


「そうだな・・・特徴は一致しているな。皆、行くぞ」


アナスタシアは2本の剣を抜き、チズルさんは盾をクリスタさんは弓を構えて猫の背後から近付いて行く。


「コタケ殿は私から離れない様に」


俺はエレオノーラさんの側に待機しつつ進んで行く。

ゆっくりと警戒させずに近づいて・・・


「くしゅっ」


とチズルさんがいきなり、くしゃみをしてしまった。

猫はバッと後ろを振り向きこちらを見つめる。


ニャーー!


威嚇する様に鳴き、ブルブルと震え始める。

すると、猫の体はどんどん大きくなり10mサイズへと変貌した。


ニ゛ャ゛ーー!


「チズルー」


「うわぁー、ほんまに、すまん!」


「2人とも戦闘態勢だ!」


言い合う2人にアナスタシアさんが一喝すると、チズルさんは前に出て行き、クリスタさんは後ろに下がる。


ニ゛ャ゛ーー!


猫は左の前足を振り上げて、チズルさんに叩きつけるがビクともしない。


その後ろからクリスタさんが矢を放つが、それに気付いた猫はすぐに避ける。


「アナちゃん、この猫どう捕まえればええんや!」


「生け捕りだ!気絶させれば、大きさも元に戻る」


「生け捕りなんて面倒な」


「まぁそう言うな。殺してしまったら報酬が出ないからな」


「多少のキズは許してもらうけど」


クリスタさんはそう言って、3本の矢をそれぞれ指の間に挟んで連続して放つ。


「あれがクリスタの得意技で、3本の矢を纏めて連続で放つんだ」


「本当に回復役か疑わしくなりますね」


「はは、そうだろう?」


猫は避け切ろうとするが、数が多く何本か掠っている。


「アナちゃん!」


「あぁ!」


チズルさんと入れ替わる様にアナスタシアさんが前に出て行く。

それに気付いた猫は左の前足を叩き込んで来るが、2本の長剣で受け止める。


ニ゛ャ゛ーー!


猫は全体重を掛けて押し潰そうとしており、アナスタシアさんの足が地面に食い込んでいる。


「はぁぁーーー!はっ!」


アナスタシアさんは猫の攻撃を耐えて、猫を押し戻した。

猫がバランスを崩して後ろによろめいた瞬間、


「チズル!」


「まかしときぃ!」


盾を構えたチズルさんが猫に突っ込んで行く。

猫はそれに反応出来ずに、頭に一撃を入れられる。


ニ゛ャ゛ーー・・・


声を上げながら、バタンと猫はその場に倒れて元の小さい姿に戻るのだった。


「ふぅ・・・なんやねん、この猫!」


「魔法部門からの依頼だ。普通じゃない事は分かっていただろう?」


「こんな生き物をなんで逃がしたのか」


「せやせや!依頼主とっちめたるで!」


「無事に終わったんだから、良しとしようじゃないか」


アナスタシアさんは気絶した猫を両手で掴む。


「私はこの猫を依頼主に届けて来るから待っていてくれ」


街に戻るとアナスタシアさんは別行動を取る。


「アナちゃん戻って来るまで暇やなぁ」


「私はお腹空いた」


「確かに腹減ったなぁ・・・せや、お姉さんが何か奢ったる!」


チズルさんが俺とエレオノーラさんを見ながらそう言う。


「実は私達は弁当があるんだ」


「なにっ!エレオノーラちゃんの彼女のか!」


「チッ」


「ちがう、ちがう!アリシア様のメイドが作ってくれた物だ」


反応を示した2人に弁明する。


「ほら、その証拠にコタケ殿の分もあるだろう?」


「ふーん、まぁええか」


「2人だけずるいな」


「たしかに!クリスタちゃんの言う通りや!」


「お前ら・・・まぁ、そう言われると思って多く作って貰ったから構わないが」


「イェーイ!」


「流石」


「はぁ、調子のいい奴らだ」


呆れながらも広場のベンチに向かい弁当を広げる。


「うまーい!」


「美味」


「そうだろう!」


2人の褒め言葉に、自分で作ったかの様に喜んでいる。

こうして4人でお昼ご飯を楽しんでいると、


「お前達・・・」


と後ろから声がして振り向くと、呆れ顔をしたアナスタシアさんが居た。


「おっ、アナちゃんお疲れ〜」


「リーダー、お疲れ」


「いや、どう見てもそんな事思ってないだろう」


ご飯に手を伸ばしながら言う2人に文句を言う。


「まぁ、良い。それでこの弁当は?」


「私の主のメイドが作った物ですよ」


「ほう、そうなのか。私も貰っても良いのか?」


「リーダーの分もあるのでお構いなく」


「では、頂くとしよう!」


そうして、5人でお昼ご飯を堪能し午後の依頼を始めるのだった。

次回に続きます。

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