収穫祭り
「それじゃあ皆んな、はりきっていこー!」
「「おー!」」
今日は我が家の畑の野菜を皆んなで収穫する。
人数も増えた事やアンさん達の依頼で野菜の種類が増えた事で、1人では収穫出来ないので全員でやる事となった。
「すみません。私1人だけお手伝い出来なくて・・・」
「アリーは仕方ないよ」
「その分、収穫した野菜を美味しく調理しますので!」
「うん、期待してるね」
「まずは何処から収穫しましょうか?」
「うーん、最初はジャガイモを収穫しよっか」
リビアさんの質問にそう答え、ジャガイモを植えた所を見る。
広さとしては25mプール2つ分くらいだろうか、これだけでもかなりの量だが、まだ他にも収穫する物があるのだ。
「よーし、誰が多く取れるか競争だよ!」
「負けん」
「私も負けませんよ」
オルフェさんの言葉にエレオノーラさん達が反応し、一斉に駆け出して行く。
「これならすぐに終わりそうですね」
アリーの言葉通り、1時間半ほどでジャガイモの収穫を終えた。
「いえーい!私の勝ちー」
「オルフェに負けるとは」
「次は負けません」
皆んな、まだまだ元気そうだ。
山の様に積み上がったジャガイモを見て、この世界でポテトチップスを見た事が無いなとふと思い、アリー達に作って貰おうと考えるのだった。
次に収穫を始めたのはキャベツだ。
今回は25mプールが1個分くらいの大きさだ。
根本を鎌で切りながら取っているのだが、エレオノーラさんやリッヒさんは剣とダガーを使い、スパッと高速で切って収穫していた。
「どうしたオルフェ?今回は遅いじゃないか」
エレオノーラさんが、鎌でコツコツとやっていたオルフェさんを煽る。
「ぐぬぬ・・・こうなったら私も!」
そう言ったオルフェさんは魔剣を取り出して来た。
「うおぉぉ!」
盛大に力を込めて魔剣を振ろうとしたので、慌てて止めに入る。
とてつもない破壊力を持つ魔剣を振られれば、野菜どころか畑まで駄目になってしまうので魔剣は没収とする。
結果、キャベツは1時間足らずで収穫を終える。
「私の勝利です」
「魔法で速度の上がったリッヒの方が上手だったか」
今回はリッヒさんが勝った様で、オルフェさんは最下位の様だ。
その後も収穫出来そうな物はしていき、お昼前に始めたのにすっかり夕方になっていた。
「これで終わりかな?」
片付けを始めようとすると、ドラちゃんがズボンの裾をグイグイと引っ張ってきた。
「ん?どうしたの?」
畑の端の方を指差して付いて来る様に促してくる。
そこには何も無かった様なと思いながら後を付いて行くと、緑の葉っぱが土の中からピョコンと顔を出していた。
何処かニンジンの様に見える。
「何これ?雑草?」
そう聞くと全力で体を横に振り、違うとアピールする。
「じゃあ野菜なの?」
そうと言った様に右手を上げて、野菜を指した後に自分の体を指す。
「ドラちゃんが作ったっていう事で良いのかな?」
聞いてみるとそういう事らしく、内緒で丹精込めて育てていたそうだ。
「それじゃあ、これも収穫しておこっか」
葉を掴み引っ張り上げようとしたのだが、
「あ、あれ?全然抜けない」
全力で引っ張るが、うんともすんとも言わない。
「ちょっと、助け呼んで来て」
ドラちゃんに他の人達を連れて来てもらう。
「なになに〜?」
「誰か、これ抜ける人いない?」
「まっかせてー」
と意気込んだオルフェさんだが、
「あ、あれ〜?何も動かないんだけど」
俺と同じ様になる。
「私がやろう」
とレンダさんが前に出る。
「ふんっ!」
血管が浮き上がるほど、力を込めて引き抜く。
しかし、それでも僅かにしか動かず、出ていた部分よりも少し太い茎が見えるだけだった。
「くっ、これ以上は厳しい」
「全員で引っこ抜いてはどうじゃ?」
と言うティーの案を採用し、ティーを先頭にして連なって引っ張る。
「「せーのっ!」」
と何処がて見た事のある様な光景になるが、更に太くなった茎が少し見える様になっただけで、本体の方はまだまだ見えてこない。
「本当に動く気配ないの」
「うーん、掘り起こした方が早いかな?」
「もう1個の方法を試してみるから、離れておるのじゃ」
指示通りに離れると、ティーはドラゴンの姿になる。
「よーし、行くのじゃ」
そう言うと、両前足をズボッと土の中に突っ込む。
「むっ?これかの?」
何かを掴んだ様で、その状態のまま翼をバサバサと羽ばたかせる。
「ぬおぉぉ!」
「ティーおばちゃん、がんばれー!」
「ティーフェンちゃん、頑張って〜」
皆んなで応援すると、
「おぉぉー!」
スポンッと、オレンジ色の大きな野菜が抜け姿を現した。
「「デカっ!」」
ニンジンと思われる野菜は、とても太く長さも20mはあった。
「何これ?ニンジンで良いんだよね?」
ドラちゃんはエッヘンといったポーズをする。
「どうやって育てたの?」
聞いてみるが、秘密らしい。
「これは・・・使い切るのに骨が折れそうですね」
リビアさんがそう言い、改めて巨大なニンジンに目を向ける。
「切り分けて、他所にお裾分けに行く?」
「それが良さそうです」
後日、アリーの実家やテンメルスさん達にお裾分けに行くのだった。
ちなみに肝心の味はと言うと、甘くて美味しかった。
褒められたドラちゃんは、次も頑張ろうと意気込んだ様子だったが、出来れば大きさは普通にして欲しいと思うのだった。




