討伐戦
俺とクロとエレオノーラさんは、街に迫って来ている魔物を倒すために討伐隊がいるという近くの平原まで走っていた。
「俺は冒険者登録したばっかりなので、まだFランクですけどこの戦いに参加しても良いんですか?」
「本来であれば参加はできないが、コタケ殿に関しては腕輪の効果でCランク以上の能力も発揮できるし、万が一の時はクロ殿の助けもあるから問題はないと思う。それに魔の森の魔物も倒した実績もあるからな何か言われたら、私がフォローしておこう」
「ありがとうございます」
話をしているうちに、討伐隊の人達が見えてきた。
そばには、ギルドの職員もいるみたいなのでアリエさんの所へと向かった。
「アリエ殿、我々も討伐に参加しに来たぞ」
「エレオノーラ様!ありがとうございます!」
「それで、まだ魔物は来ていないのか?」
「はい、あと30分程でこの平原に到達するかと思われます」
「30分かならそれまでは待機しておくとしよう」
「あのちなみに、コタケ様も参加されるのでしょうか?」
やはり、俺の参加には問題があるみたいだ。
「あぁ彼は、以前にも魔の森の魔物と対峙し倒すこともできているから実力には問題はない」
「エレオノーラ様がそう言うのであれば大丈夫なんでしょうが、登録の際はFランクとの判定が出たので・・・」
(腕輪を使えばCランク以上の実力は出せるが、それがなければただのFランクだし、やっぱりそういう反応になるよな・・・)
「彼の場合は少し特殊な感じなんだが・・・」
俺の腕輪の事を話しても良いのかと、エレオノーラさんが判断に困っていると俺達のすぐ後ろから、
「エレオノーラがそう言ってるなら参加させてやれ」
と野太い声が聞こえた。
その声に反応し後ろ振り返ると、50代くらいのマッチョな男性が立っていた。
「えぇと、どちら様でしょうか?」
「俺は、ローデンベルグってもんだ!」
初めて会った人だったので誰だと俺が困惑していると、
「この人は、この街の冒険者ギルドのギルド長をしている元Aランクの冒険者だ」
とエレオノーラさんが補足してくれた。
「初めまして、コタケ ワタルと言います。よろしくお願いします」
「おう、よろしくな!しかし、エレオノーラが連れてきた男と聞いて見にきたが、礼儀正しい良いやつじゃねぇか」
とガッハッハと笑いながら言った。
「失礼な!一体私がどんなやつを連れくると思ってたんだ!」
「そらゃ、もっとごっつい野蛮なやつに決まってるだろ?アンタ、エレオノーラが昔なんて呼ばれてたか知ってるか?」
「いや知らないです」
「こいつはな昔に・・・」
とローデンベルグさんが言いかけた時、隣のエレオノーラさんからもの凄い圧を感じた。
「おっと、すまねぇド忘れしちまった」
と言うのを止めた。
その後に小声で、もし知りたかったら本人か知り合いに聞いてみなと言われたが、今なお、圧を出し続けているエレオノーラさんには聞けるはずがなかった。
「それで、コタケ殿の参加は認めてくれるのだな」
ここで話が本題に戻った。
「あぁ勿論だ。お前からの推薦と魔の森の魔物を倒したという実績があるなら問題ねぇよ」
「ありがとう、助かった」
こうして、俺も討伐隊に参加できることになった。
魔物達の到達まで、後20分程になった。
俺達3名は、Fランクの俺がいるので本隊からは少し離れた所で待機していた。
「コタケ殿、準備は大丈夫か?」
「凄い緊張してます」
「前回の戦いの時は、いきなりだったから考える暇もなかっただろうが、戦いまで時間があると緊張するのも無理はない」
「エレオノーラさんはやっぱり慣れてますね」
「そうだな、私は何回も戦って来たから慣れはしたが、初めの頃は恐怖で震えていたぞ」
「そうなんですね」
「まぁコタケ殿に何かある前に私とクロ殿が助けに入るから安心してくれ」
「はい、ありがとうございます」
クロもぴょんぴょんとはねて大丈夫だと言ってくれてるみたいだ。
「クロもありがとう」
それから魔物到達まで3分程になった。
魔物達の姿も見えて来た。
「よし、そろそろだな」
エレオノーラさんがそう言い剣を構えた。
それにならい俺も腕輪を剣に変化させた。
「見える範囲内でいるのは、スライム、ウルフ、ゴブリンの3種類だな。ゴブリンは、他の魔物と違い棍棒などの武器を使ってくるから油断はあまりするなよ」
と注意を促してくれた。
そして、とうとう本隊と魔物たちがぶつかった。
本隊の方では、前衛では剣や槍を持った人たちが魔物を切り倒し、その後ろから火の魔法や氷の魔法が飛んできて後ろの方にいる魔物達を攻撃していた。
本隊から少し離れているこちらにも、何体かの魔物が来たが全てエレオノーラさんが一太刀で倒していた。
「そんなに苦戦はしてなさそうですね」
本隊の人達もかなりのスピードで魔物達を倒していっていた。
「まだこいつらはこの周辺に住んでいる魔物だから、本隊も苦戦することはないが、魔の森の魔物が来たら危なくなるはずだ」
しばらくすると、魔物がいなくなった。
「あれ、これで終わりですか?」
「いやまだ第1波が終わっただけだ。恐らく500体の内の100体程しか攻めてきてなかったのだろう。次が本番になりそうだ」
エレオノーラさんが言った通り、すぐ後にまた魔物達が迫って来たのだ。
「さっきよりも、かなり増えましたね」
「多分これで全部だろうな。次は魔の森の魔物もいるな」
「あのでっかいコウモリも魔の森の魔物ですか?」
以前に戦ったハイウルフとその上のあまり高くない所に大きなコウモリが飛んでいた。
「あぁ、グロスバットという魔物だ。口から超音波を発して相手の動きを鈍らせた所を攻撃してくるから気を付けてくれ」
そう話している内に、また戦いが始まった。
今回は魔物も多いのでこちらにも、かなり流れて来ている。
最初のうちは、普通のスライムやウルフの相手をしていたが、腕輪の効果のおかげもあって苦戦せずに倒すことができていた。ただゴブリンは他の魔物と違って武器を持っているので、防御をしてきたりなど違う動きをしているので気を抜いたら攻撃を受けそうなレベルだった。
ちなみにクロは重力魔法を使って、相手を上から押し潰していた。押し潰された魔物達はバラバラになって少々グロテスクだったのでなるべく見ないようにした。
しばらく、平原に生息しているという魔物達を相手していたが、遂にハイウルフとグロスバットの魔の森の魔物がやってきた。
(あのコウモリどうやって倒そう・・・弓とかかな?)
と飛んでいる魔物の倒し方を考えているとクロがやって来て、自分に任せろと言わんばかりに魔物の方を向いて魔法陣を浮かび上がらせた。
すると、クロの重力魔法によりハイウルフがうつ伏せになり、飛んでいたグロスバットも地上に叩きつけられた。
「おぉナイスだ、クロ!」
クロも嬉しそうに飛び跳ねた。
少しセコイが、動けない魔物達を俺は一方的に切り倒していった。
一方でエレオノーラさんは、ハイウルフ達を足場にしジャンプして、飛んでいるグロスバットを倒していた。
(鎧着てるのにあれだけ動けて、脚力も凄まじいって、Sランクの冒険者って皆んなあんな感じなのかな・・・)
こちらの魔物達は倒し終えたので本隊の方を確認してみると、最初よりかは魔物も減ってはいたものの魔の森の魔物がかなり残っており、負傷している人も出て来ていた。
「よしクロ、加勢しに行くぞ」
俺はすぐに本隊の方へと走り出し、魔物達の横からクロの重力魔法で相手の動きを止めて、先程と同じ様に魔物を倒していった。
混戦状態なので、重力魔法を広範囲で発動は出来なかったが、少しずつ魔物の数も減って来ていた。
本隊にいたAランクと思われる冒険者達も奮闘していたが、クロの魔力も切れそうになってきていて、そろそろ不味い状況になってきた所で、エレオノーラさんが加勢にやって来た。
その後は、エレオノーラさんがバッサバッサと魔物を切り倒していき、残った魔物達は冒険者達が協力して倒していった。
そして、遂に攻めてきた魔物達を全て倒し切り街を守り抜くことができた。
冒険者達は各々勝どきをあげた。
50人ほど負傷はしたものの、命に別状はなく死者も出ることがなかった。
戦い終えた俺たちは、すぐに宿屋へと戻っていった。
「お嬢様、ただいま戻りました」
「お帰りなさい、エレオノーラ、ワタルさん、クロさん」
アリー達が出迎えてくれた。
「皆さん怪我はないですか」
「幸いにも私たちは負傷しませんでした」
「それは良かったです」
そして、その日は戦いで疲れたこともあり夕食を取った後、すぐさま眠りについたのだった。
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それと誤字報告があったのに全然気づいてませんでした。
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