換羽
「ごめん、しばらく迷惑かけるかも」
ある日、シエルさんがいきなりそう告げた。
「うん?どうしたの?」
「翼の羽が生え変わる時期になった」
鳥にある様な換羽の時期になったらしい。
「多分、これから家の中が羽まみれになると思う」
「そっか、じゃあアンさん達にも言っておかないとね」
家の掃除をメインでしている、2人にも伝えておく事にした。
数日後。
「ここにも・・・あっ、あそこにも」
家の中の掃除を手伝っていると、家中に白い羽が落ちていた。
シエルさんの翼は、普段よりもボサボサとして色も少し黒くなっている。
「ごめんなさい」
「そういう時期だから仕方ないよ」
「集めた羽は私に欲しい」
「どうするの?」
「洗って保管しておく。枕の素材とかにも出来るから」
「前に皆んなに作って貰ったあれだね。分かったよ、集めたら渡すね」
「ありがとう」
「そう言えば、シェリーは同じ事起きないの?」
のんびりとくつろいでいたシェリーに尋ねてみる。
「なりますよ」
「やっぱり、そうなんだ」
「でも、今の状態だったらならないですね。ほら、翼ないですから」
「確かに人間の状態だとそうだね」
「代わりに馬の姿に戻ったら、羽が大量に落ちるんですけどね」
「時期とかって分かるの?」
「うーん、10年に1回くらいですね」
「意外と長いんだね。前はいつ変わったの?」
「覚えてないです!」
「それもそうか。シエルさんは、どれくらい期間で生え変わるんですか?」
「翼人族は、2年に1回のペース」
「ペガサスと比べたら短いけど、鳥とかと比べたら長い方ですね」
「これからも迷惑をかけるかも」
「大丈夫ですよ」
掃除を続ける。
それから毎日、落ちている羽をかき集める作業が始まった。
換羽が始まり、1週間。
「綺麗になった」
シエルさんの翼は、真っ白で綺麗な状態になっていた。
「1週間、お世話になった」
「いえいえ」
「枕の羽を変えたくなったら、いつでも言って」
「ありがとう」
「わぁ〜!きれーい!」
とそこにベルがやって来る。
「ねぇねぇ、触っていい?」
「うん」
「やったー!」
生え変わったばかりの翼を触る。
「気持ちいいー!」
そんなベルの楽しそうな顔を見て、
「俺も触ってみていい?」
と思わず言ってしまう。
「勿論、構わない」
シエルさんは嫌な顔せず、すんなりとOKしてくれて触ってみる。
生え変わった翼は、フワフワでスベスベしていて気持ちよかった。
「このまま枕にしたいくらい」
「私は時折、抱き枕にしてる」
とてもグッスリ眠れそうだ。
そうこうしていると、他の人達もワラワラと集まって来て、皆んな新しい羽の触り心地を堪能するのだった。




