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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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巫女

雷龍を追い払って3日後。

あれ以来、戻って来る様子は無くいつも通りの生活を送っていた。


「誰か来てくれ!」


そんな事を思っていた矢先、狩りに出掛けていたレンダさんが慌てた様子で戻って来た。


「どうかした?」


「良かった、外に付いて来てくれ」


そう言うので皆んなで外に出ると、我が家の庭に白い着物と赤い袴を着た巫女の様な見た目の黒髪の少女が倒れていた。


「えっと、あの子は・・・?」


「狩りの道中、倒れている所を見つけて連れて帰って来たんだ」


見れば装束は土で少し汚れていて、髪には木の葉が付いている。


「ひとまず、中に入れましょうか」


「そうだね」


アリーがそう言い、レンダさんが少女を持ち上げて家のソファに寝かす。


「何処ら辺で倒れてたんですか?」


「ここからそう遠く無い場所だ。幸運にも周りに魔物はいなかったが、どうしてこんな森の中で倒れていたんだろうな?」


全員で考えてみるが分からない。

見た目は10代半ばと言った感じだが、1人でこの森に用事があるとは思えない。


「この首元に掛けているのは何でしょうか?」


メアリーさんが、少女の首にネックレスのチェーンの様な物を見つける。

本体は服の中に入れられ隠されており、何かは分からない。


「もしかしたら身分が分かる物かもしれないし、見ちゃっても良いかな?」


オルフェさんがそう言い、首に手を伸ばすと、


「うっ、あれ?ここは・・・」


少女は目をうっすらと開けて起きたのだった。


「あっ、おはよう?」


オルフェさんは挨拶をするが、少女はオルフェさんの姿を確認し更には自身の首元に伸びる手を見て、だんだんと青ざめていく。


「ひっ!魔族っ!」


少女は怯える様にソファの端に寄り身を縮こませる。


「あ〜、えっと、怪しい人じゃないよ?」


そう言って安心させようとするが、効果は無さそうだ。


「逆に怪しいのじゃ」


「え〜・・・」


その時、ぐぅ〜っと少女のお腹が鳴り恥ずかしそうにする。


「アン、リビア。この子に何か作って差し上げましょう!」


2人は頷いてキッチンへと向かい、手早く料理をしてテーブルに並べる。

少女は美味しい料理の匂いで、更にお腹を鳴らす。


「さっ、どうぞ!沢山食べてください」


「えっ、あの・・・」


「あっ、毒とかは入ってませんので安心して下さい。不安でしたら、毒味しますが・・・」


「いえ、いただきます・・・」


そう言って、少女は一口食べると目を輝かせてパクパクと料理を口に運んでいく。


「良い食べっぷりじゃな」


「それだけ、お腹を空かせていたという事ですね」


ますます、少女の正体が謎になるが今は食事を終えるのを待つ事にした。


〜〜〜〜〜〜


「ふぅ〜、ご馳走様でした。とても美味しかったです」


「ありがとうございます」


アンさんとリビアさんは礼を述べる。


「それで、そろそろお主が誰なのか教えてもらっても良いかの?」


ティーが本題を切り出す。


「そ、そうですね。始めは驚きましたが、悪い方達では無さそうですので、お話します。私の名はカンナ、龍の里モロスアラゴンに暮らしています」


「「龍の里?」」


「ご存知ないですかね?」


皆んな首を横に振る。


「その里は、何処にあるんだ?」


「えっと、地図はありますか?」


そう言うので、地図を持って来て広げる。


「ここが、我々が今いる場所だ」


エレオノーラさんが地図の中央から下にある魔の森を指差す。


「なるほど・・・私達の暮らす里はここなんです」


そう言って指差した場所は、地図の中央より上でほとんど端の方だった。


「かなり、離れているな」


「そもそも、こんな所までどうやって来たんじゃ?」


「雷龍様に乗って移動していた所、上空から落ちてしまいまして」


「「ん?雷龍?」」


「はい、黄色の鱗をした長い龍で雷を纏っているんです」


その言葉を聞いて、全員で顔を見合わせる。


「雷龍様をご存知なんですか?」


ご存知も何もと思い、3日前にこの森の上空にいた事を伝える。


「3日・・・そんなに経っていたのですか。それで、その雷龍様はどちらに?」


「すまん、妾が殴ったら何処かに消えおった」


「な、殴った?」


と驚きの声をあげる。


「上空で雷を連発されて、こちらも困っておりましたので」


リッヒさんがフォローする。


「い、いえそれは仕方ありませんね。恐らく、落ちた私を探していたのでしょうが・・・そうですか。1つお聞きしたいのですが、雷龍様は空を飛んでいたと思うのですが、殴ったと言うのは?」


「妾の本当の姿はドラゴンなんじゃ」


「そうだったんですか!?確かに言われてみれば、微かに龍と同じ様な気配を感じますね」


「そんなのが分かるのか?」


私は何も分からないがと言った風にレンダさんが聞く。


「私は龍の里で巫女をしておりまして、そう言った気配がある程度分かるのです」


「巫女?」


「はい、我々龍の里の民は遥か昔から龍神様を信仰しており、その龍神様からのお告げを賜る巫女として選ばれたのです」


「あの、龍神と言うのは?」


アリーが質問する。


「龍神様は、全ての龍の頂点に立つお方です」


そう答えて、俺達はティーを見つめる。


「なぜ、そちらの女性を?」


「ここにいるティーは龍王って言って、ドラゴンの頂点に立つ人物なんだ」


「なんと!?龍王様でしたか!そうとは知らずご無礼を」


「いや、別に構わんのじゃ」


龍王の事を知っている様で畏まるが、ティーは気にするなと言う。


「雷龍様が敵わないのも納得ですね」


「それで、その龍神と龍王って違うの?」


今度はオルフェさんがそう聞く。


「龍神様は龍の頂点に立っているのです。ここで言う龍とは、ドラゴンの様な見た目をしたものではなく、雷龍様の様な見た目をしたものを指します」


「じゃあ、別って考えていいんだ?」


「そうですね。ただ、龍とドラゴンが完全に別と言う訳ではありませんが・・・」


「ふーん、まぁ詳しい事は分かんないけど、ティーフェンちゃんが偉い事には変わらないからね!」


「なんじゃ、その雑なまとめ方は」


そう突っ込まれて、オルフェさんはアハハと笑う、


「ところで、カンナさんはこれからどうされるのでしょうか?」


とメアリーさんが聞く。


「そうですね、恐らく雷龍様は1度里に帰られたかと思いますので、それで里の者が私がいなくなった事に気付くと思います」


「なら、待っておるのか?」


「それしか方法は無いかと・・・先程、地図で場所をご覧頂いた様に距離もかなり離れていますし、海や山も越えなければなりませんので」


「ここに来る時はどれくらい掛かったのでしょうか?」


「雷龍様に乗っておりましたので、恐らく2日程かと」


「2日のう・・・」


ティーは顎に手を当て、


「仕方ない、ここは妾が送ってやるかの」


「えっ!」


ティーの提案にカンナさんは驚く。


「妾が殴って、帰らせてしまったのも原因じゃからな」


「い、いえ元はと言えば私が落ちてしまったのも原因ですので、それに皆様には助けて頂きましたので」


「気にしない事じゃ、そもそも待っておっても迎えがいつになるか分からんじゃろ」


「しかし・・・」


「ティーもこう言ってるので、気にしないで頼ってください」


「気にしない、気にしない」


皆んなが続けて言い、


「わ、分かりました。それでは、お言葉に甘えてよろしくお願いします」


「うむ、決まりじゃな」


ティーが里まで送る事が決定した。


「ひとまず、今日はここでゆっくりして下さい。出発は明日の朝にしましょう」


流石に3日間の気絶から覚めて、すぐに出発は酷だろうとそう伝える。


「そう言えば、落下したのに良く無事だったな?」


「確かにレンダの言う通りじゃの。地面には森の木がクッションになって強くぶつからなかったのじゃろうが、魔物が寄って来なかったのは不思議じゃの」


「恐らく、これのおかげですね」


服の中から、気になっていたネックレスの本体を取り出す。

それは、黒色で龍の頭を模していた。


「これは初代の巫女が、龍神様から賜った物で代々受け継いでいるんです」


「なるほど、それのお陰といった所か」


「はい、これを身に付けていなければ危ない所でした」


「龍神から貰ったとなれば、相当な力を秘めてそうじゃな」


「これのお陰で皆様に助けて頂く事も出来ましたからね!龍神様と皆様に感謝です!」


カンナさんは手を合わせて祈り始める。


「それでは皆様、今日と明日からの2日間の短い間ですがお世話になります!」


こうして、その日はカンナさんには休んで貰い、次の日は里に向けて出発するのだった。

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