雷
ゴロゴロ ドーン
ゴロゴロ ドーン
「ママぁ〜、怖いよー」
「よしよし、大丈夫大丈夫」
朝から鳴り続けている雷の音にベルが怖がっていた。
「もう、お昼ですが一向に鳴り止みませんね?」
「雨は降ってないし、森にも落ちてないから特に被害は無いけど、何なんだろうね?」
「私もこんなのは初めてです」
「早く鳴り止めば良いんだけどね」
アリーとそんな話をするのだった。
1時間後。
ゴロゴロ ドーン
雷は止む気配を今だに見せていない。
外を見れば、どんよりとした灰色の雲が空一面に広がっている。
そんな空をボーッとしながら見ていると、
「あれ?」
雲の中がピカッと光った時に、何か黒い影が見えた様な気がした。
気のせいかなと思い、ジーッと見つめていると再びピカッと光り、雲の中に長い影がハッキリと見えたのだった。
「皆んな、アレ見て!」
大きな声をあげて、皆んなが窓際にやって来る。
そして、ピカッと雲の中が光ると同じ様に長い影が見えた。
「あの中に何かいるのでしょうか?」
リビアさんがそう言い、皆んな不安がるが、
「あぁ、なるほどの」
ティーだけは何か分かった様で、そんな反応をした。
「お主らは家の中で待っておれ」
そう言って外へと出て行き、ドラゴンの姿に変身して雲の中へと飛んで行った。
「大丈夫かな?」
それからしばらく経つと、雲の中からティーが戻ってきた。
見た感じ怪我などもしてなさそうで安心しようとした所・・・
黄色の鱗と長い髭、頭に2本の角を生やした70mはありそうな長い長い龍が、ティーの後ろから現れたのだった。
「アレが原因か?」
龍は周りにバチバチと雷を纏っており、天気が荒れていた原因だとエレオノーラさんは予想する。
ティーは振り向いて龍に対峙する。
龍は雷を放つが、効いている様子は無い。
雷での攻撃を諦め、突進をかますとティーの右前足が顔面にクリーンヒットし、ヨロヨロよろめきながら後退する。
勝ち目が無いと思ったのか、龍は長い体を揺らしながら背を向けて遠くへと逃げて行った。
それと同時に、空を埋めていた灰色の雲は消え去り、青空が広がる。
「ふぅ〜、気持ちの良いビリビリじゃった」
「アレを気持ち良かったって流石・・・」
シエルさんの言葉に、皆んな頷いた。
「結局あの生き物は何だったの?」
俺はそう聞く。
「龍じゃ」
「ドラゴンとは違うのですか?」
「見た目こそ違うが、似た様な生き物じゃな。じゃが、今回おったアレは別じゃ。雷龍と言う雷を自在に操る龍なんじゃが、精霊よりの生き物なんじゃ」
「ヒルズ達と同じなの?」
「ドラゴンと精霊の間と言った感じじゃ」
「何でそんなのがここに?」
「何でじゃろうな?」
「そこまでは分からないか」
「特に被害も出ておらんし、大丈夫じゃろ」
「ベルが怖がって泣いちゃったくらいかな」
そんなベルも、晴れた外でクロ達と追いかけっこをしている。
こうして何事も無かったかの様に思えたが、数日後に何故あの雷竜が森の上を飛んでいたのかが判明する事になるのだった・・・
次回に続きます!




