最強決定戦④
「決勝せ〜ん!ティーフェン選手対メアリー選手です」
「お手柔らかにお願いしますね」
「うむ、全力でいくのじゃ」
ティーの返答に、メアリーさんは苦笑いする。
「準備はいい?」
「うむ」
「はい」
「よーい・・・始め」
開始と共に動いたのはメアリーさんだ。
「むっ?」
エレオノーラさんとの戦いで消費した筈の槍が戻った所か、10本まで増えており、ティーは驚いた声を上げる。
メアリーさんは、その10本の槍でティーの周りを囲って一斉に発射する。
ティーは高くジャンプして上から逃げるが、槍はティーの後を追尾してくる。
「しつこいの」
逃げる事を止め、両手をドラゴンの状態に変化させ迎撃の態勢をとる。
「1本、2本・・・3本」
ティーの力の方が強く、槍は粉々に粉砕されていくが、その瞬間に液体となりすぐに槍の形に戻ってしまう。
「ぐぬぬ・・・厄介じゃの」
エレオノーラさんの様に、傷を負わせて回復に使わせるのも1つの方法だろうが、それでは制限時間となってしまう可能性がある。
ティーは考える素振りを見せ、何かを思いついた様で左手を人間の状態に戻した。
メアリーさんは様子見といった風に2本の槍を飛ばす。
それをさっきと同じ様に右手で粉砕する。
そして、メアリーさんが粉々になった槍を液体に戻した瞬間、ティーはそこに目掛けて火の魔法を放ったのだった。
ジュワ
高火力の炎に血は蒸発し消えていった。
「この方法が1番じゃな」
「そう言う手もありましたか・・・」
「これがベストじゃろ」
「ですが、片手のみでこの量を処理出来ますか?」
8本全ての槍をティーに向けて放つ。
「真似してみようかの」
ティーはそう言うと、魔法で8本の氷の槍を作り合わせる様に撃ち放った。
しかし、ティーの放った氷の槍は容易く貫かれてしまう。
「普段から使っておるだけあって、練度はそっちの方が上じゃの」
血の槍はそのままティーの元に迫る。
メアリーさんが言った通り右手だけでは対応し切れず、3本の槍がティーの左腕と両足を掠っていく。
「元を叩いた方が早い気がするの」
槍を片手だけでは処理し切れないと判断したティーは、左手をもう一度ドラゴン化させ突っ込んで行く。
メアリーさんは槍で迎撃するが止まらない。
ティーの右手が目の前に迫った所で、2本の槍をシールドに変化させる。
しかし、ティーの力を受けきれずヒビが入り、パリンと割れてしまう。
ティーは続け様に左手で追撃し、メアリーさんは2本の槍をクロスさせて防御する。
だが、それも虚しくバキッと柄の中心から真っ二つにされてしまう。
メアリーさんは咄嗟に両腕で身を守り、拳を受けて後ろに吹き飛ばされた。
空中を一回転し無事に着地したが、両腕の骨が折れてぶらんとしている。
「ちょっと力を込めすぎたかの?」
「いえ、この程度なら大丈夫です」
腕を回復させる為に、1本では足りないのか3本の槍を液体化させて取り込む。
「これで元の5本じゃな」
「これは厳しくなりましたね・・・ですが、最後まで戦います!」
「うむ、その意気じゃ」
メアリーさんは果敢にティーに挑み、お互いに傷も増えていくが、1本、2本と槍が無くなっていき、残っていた5本全ての槍が無くなり・・・
「参りました」
メアリーさんがギブアップした。
「勝者、ティーフェン」
「うむ、妾の勝利じゃ」
「本気を出させる事が出来なくて残念です」
「妾も本気でやっておったぞ?」
「ですが、ドラゴン化してませんでしたよね?」
「お主は繊細な動きをするからな、あの状態では対応出来んと判断したんじゃ。クロ達は数が多かったからな、だからあの形を取ったまでじゃ。むしろ、ドラゴンの状態だと負けておったかもしれんの」
「そうだったんですね・・・」
「妾も十分ダメージを負ったからの、誇るが良い」
「ふふ、ありがとうございます」
「優勝者のティーおばあちゃんには、何でも券をあげます!」
「なんじゃそれ?」
ベルの言った優勝賞品に、ティーは首を傾げる。
「出来る範囲内で何でも言う事を聞く券だよ」
と俺は補足する。
「ほう?何でものう?」
「出来る範囲でね、出来る範囲で・・・」
話を聞き、含み笑いをするティーに念を押す。
「まぁ、すぐには思いつかんから考えておくのじゃ」
「思いついら、いつでも言ってね」
ティーなら自分で何でも出来そうだが、お願いに備えて準備をしておかなければと思い、我が家の最強はティーに決まるのだった。




