カジノ王国
「ねぇねぇ、今度の休みに皆んなでどっかに行こうよ!」
ある日の夕食時、オルフェさんがそんな事を言い出した。
「急にどうしたの?」
「人数も多くなって、皆んなで何処かに行く機会も減って来ちゃってるから、私もその日は休みだし皆んなで出掛けたいなぁって」
「皆んなが良いなら良いけど?」
誰も特に異論は無さそうだ。
「ちなみに行く当てとかってあるの?」
「ふっふっー・・・じゃじゃーん!」
オルフェさんはニヤけながら1枚の紙を取り出した。
その紙にはデカデカと"カジノ王国"トランバールという文字が書かれていた。
「カジノ王国・・・?」
「そうそう、この前来た貴族のお客さんから話を聞いてね。面白そうだなぁって思ったの」
「ふーん・・・でも、家にはベルみたいに小さい子も居るけど大丈夫なの?」
「そこは問題ないよ。カジノ以外の遊び場所もあるし、なんなら子供向けのカジノもあるんだって!」
「子供向けのカジノって・・・」
「客の殆どが貴族か商人でお金を持ってるから、その子供達専用のレートの低い所があるんだって」
流石は異世界のカジノだが、子供のうちからギャンブルに嵌まらないか心配だ。
「アリシアちゃんは行った事ある?」
「私は行った事は無いですが、周りに行ったと言ってる方達は居ましたね」
「そこって貴族じゃないと行けないの?」
「一般向けと貴族向けで分かれてて、一般向けは冒険者が多いんだって」
「確かに冒険者は賭け事が好きだからな」
とエレオノーラさんが言う。
「じゃあ、そこに遊びに行くので皆んなも大丈夫?」
全員が頷き、カジノ王国に向かう事となった。
〜〜〜〜〜〜
3日後、カジノ王国に向かう日がやって来た。
ラーブルクから目的地までの船が早朝から出ていると言うので、それに乗り1時間程経過していた。
船に個室はないが、誰でも入れる大きな休憩室があり、アリーと一緒に座っている。
「どう?体調は悪くない?」
「はい、この通り大丈夫です!」
ティーがアリーの体を気遣って、魔法で船の揺れなどを感じにくくしてくれた。
「その魔法、私にもかけてぇ〜」
「おえぇぇ、酔いました〜」
乗船前にお酒を飲んでいたオルフェさんと、船に乗るのが初めてのシェリーは酔ってしまっていた。
「はぁ、仕方ない奴らじゃ。ほれ、そこに並ぶんじゃ」
「いや〜助かったー。ありがとおぇぇぇ」
「ぬわぁぁぁ!」
「あっ、私も・・・おぇぇぇ」
「お主らー!」
ティーが魔法を掛ける直前、耐えきれずにオルフェさんがリバースし、それに釣られてシェリーもリバースしてパニックとなった。
その後、何とか落ち着いた2人は自分で出した物を処理していた。
更に1時間が経ち、遂に目的地に到着した。
「とうちゃ〜く」
さっきまでの不調は何処へやら、オルフェさんはすっかり元気になっていた。
一通り街中を見渡してみたが、カジノ王国というだけあって街全体が潤っているのか、建物は石やレンガで頑丈に作ってあり、3、4階建てのカジノや宿屋の看板がそこら中に立ち並んでいる。
「それじゃあ、これからどうしよっか?」
「早速、カジノに行こうよ」
「カジノと言っても一般向けや貴族向けに加えて、店も多数ありますが、何処に向かえば良いのでしょうか?」
「心配無用だよ、アリシアちゃん!今日の為に色々とリサーチしてきたから!」
「流石、頼りになりますね!」
「そうでしょ〜」
どうやら相当楽しみにしていたみたいだ。
「それじゃあ、皆んな私についてこーい!」
オルフェさんが先陣を切り、皆んなで後を付いて行くとになった。
少し街中を歩き到着した所には、7階建ての他よりも大きな建物が建っていた。
「ここがこの街で1番のカジノで、1階は一般向け、2階はちょっとお金持ちの人向け、3階は貴族向けになってるんだって」
たしかに様々な服装の人が出入りして賑わっている。
「ちなみに4階には国のトップとかしか入れないVIP室があるらしいんだけど、もしかしたらティーフェンちゃんなら入れるんじゃない?」
「というか、入った事ある様な気がするのじゃ」
「「えっ!」」
ラーブルクの象徴であるティーなら入れるだろうが、本当に入った事があるとは思わず皆んなして驚いた。
「まぁ、興味なかったから全然覚えておらんがの。隣国の付き合いで1回だけ入った様な気がするんじゃ」
「え〜、じゃあ入りに行こうよ〜」
「流石に妾の事なぞ分からんじゃろうし、無理じゃろ」
「ちぇー」
残念ながら部屋の中は分からずじまいだった。
「それでこれからどうするんだ?このカジノに入るのか?」
「1回のレートも高そうですね」
エレオノーラさんとリッヒさんがそう言う。
今回は1人につき大銀貨1枚、10万円相当を渡していて、それ以上は出さないと言ってある。
「2階までなら問題無いと思うよ。流石に3階だとキツイだろうけど、あとは各自で遊びたい所で遊ぶって感じで。それで、ルインちゃんは・・・」
「私は透明になって皆さんを見てますよ!」
流石に半透明の幽霊がカジノに出たとなれば騒ぎになるので、ルインには透明化して貰う。
「皆んな、透明のルインに相手の手札とか教えて貰うのは絶対無しだからね。ルインも言われてもしなくていいから」
不正がない様に念の為、注意しておく。
「はい!オルフェさんに言われましたが、断りました!」
「あっ、ちょ・・・」
「オルフェさーん?」
「冗談、冗談だから。アハハー」
と笑って誤魔化しているが、ほとんど本気だったのだろう。
「あと、ベルちゃんには私達が付き添いますね」
流石にベルに1人でカジノをさせるわけにもいかないので、アンさんとリビアさんが付き添ってくれる。
「それじゃあ、行ってみよっかー!」
店の中に入ると、ポーカーやブラックジャックなどのトランプゲームやルーレットのテーブルが至る所に並んでいた。
流石にスロットなどの機械系は無かったが誰でも簡単に参加できるビンゴがあった。
「とりあえず、お昼になったら1回ここに集合で」
俺はそう言い、各々好きな所へと向かう。
「それじゃあ、行こっか?」
「はい!」
アリーと2人で、まずは一階を回る。
「最初に行くのはチップの交換所で良いんですよね?」
「うん、そうだね」
どれを遊ぶにしても、カジノ専用のチップが必要なので大銀貨1枚と交換してもらう。
1と書かれた赤チップが銅貨1枚で約100円、10と書かれた青チップが大銅貨1枚で約1000円、100と書かれた緑チップが銀貨1枚で約1万円、1000と書かれた黒チップが大銀貨1枚で約10万円と言った換算になる。
これより上の額のチップもあるが今回は使わず、赤チップを100枚、青チップを40枚、緑チップを5枚交換して貰った。
「私、カジノは初めてなんですが、ワタルさんはどうですか?」
「俺も見た事はあってもやった事は無かったね。そもそも、暮らしてた国じゃあ禁止されてたから」
「では、お互いに初めてですね。ポーカーのやり方は教えて貰いましたが、難しそうで少し敬遠しちゃいますね」
皆んなには道中の船内で、一通りの遊び方はレクチャーしたので、問題は無いが初めてだと緊張してしまう。
「じゃあ、最初はルーレットにしとく?」
「そうですね。自分の好きな所にチップを置くだけですもんね」
「置き方にも色々あるけど、初めてだし難しく考えないでいこっか」
こうして、まずはルーレットの台へと向かう。
奇数は赤、偶数は黒に、そして0は緑に塗られた0〜36の数字のルーレットの上を白い球がコロコロと転がっている。
側には数字などが聞かれた台が設置されている。
「これがルーレットですね。このチップを数字の上に置けば良いのですよね?」
「1つの数字に置くのも良いし、2つの数字の間に置いて両方に賭けるのも良いし、奇数か偶数、赤か黒って色んな賭け方があるからね」
「う〜ん、そう言われると悩んじゃいますね」
「最初はパッと思いついた所に絞って置けば良いんじゃないかな?慣れてきたらリスクを分散して色んな所に置くって感じで」
「なるほど、分散と言っても配当の倍率も違いますよね?」
「1番高いので36倍、1番下は2倍だからね。分散させ過ぎるのも良くないね」
「分かりました!とりあえず、ココとココに置いておきます」
そう言ってアリーは、4、5、7、8の4つの数字の真ん中と22、23、25、26の4つの数字の真ん中に、青チップを1枚ずつ置いた。
配当倍率は9倍とまぁまぁだが、当然その分当たる確率も低くい。
「ワタルさんはどうしますか?」
「うーん、俺はココで」
と13から24の12個ごとに区切られた数字に赤チップを5枚ベットする。
「配当倍率は3倍で低いけど、とりあえずは様子見で」
そう言っているとベットが締め切られ、球が転がされる。
ルーレット上をコロコロと回り、コツンコツンと音を立てて球は7の枠に収まった。
「やりました!」
「あちゃー、俺は駄目か」
見事アリーは的中しプラスになったが、俺は外したのでマイナスとなる。
「まだまだこれからだよ」
今度は少し攻めた賭け方をしていき、2人で一喜一憂しながら楽しむのだった。
「あっ、もうそろそろ集合の時間になりますね」
1時間くらい遊んでいたが、2人とも何とかプラスで終える事が出来た。
そして、集合場所に全員が集まって来る。
「皆んな、どうだった?元の資金よりも減ったって言う人いる?」
そう聞いたが、皆んな首を横に振った。
「皆んないい感じなんだね。でも、オルフェさんがマイナスになってないのは意外かも」
「えー、ちょっと酷くない?」
そうは言っても、獣人の国で闘技場を見に行った際も勝手に賭けて勝手に負けていたから、勝つイメージが無いのだ。
「実は、1番最初にやったビンゴでプチ当たりしちゃってね〜。いきなり、大銀貨2枚分が増えちゃったの」
「ママ、すご〜い」
「えへへー、そうでしょー?これで、3階の貴族向けの所で一攫千金を狙うんだー」
本人はやる気だが、フラグの様にしか聞こえない。
「まぁ、とりあえず皆んな勝ててる様だし、一旦お昼ご飯でも食べようか」
「それなら、それぞれの階にレストランがあるから、そこで食べようよ」
「それぞれの階で値段とかも違うの?」
「うん、そうみたい」
「なら、今日は奮発してちょっと高めの物でも食べよっか」
「「わーい!」」
2階のレストランで食事を楽しんだ後、午後からの第二回戦が始まるのだった。
後半に続きます。
評価ポイントが900を超えました。
もう少しで1000ポイントなので、それを超えれる様に頑張ります!
それと、連日の誤字報告ありがとうございます。
自分で考えている事を、そのまま書き出せていると思い込んでいるので、なかなか気付きにくい事もありますので、お気付きになった方は是非お願いします。
 




