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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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栄養剤

「ドラちゃん、離れちゃダメー」


そんなベルの声が街中に響き、トコトコと走り出すドラちゃんを追いかける姿があった。


今日はこの3人で街に買い物に来ていた。


ドラちゃんを捕まえて腕に抱きかかえたベルが戻って来る。


「誰かに連れてかれるかもしれないんだから、ホントに気を付けてね」


俺はドラちゃんに注意をする。

生きているマンドラゴラという非常に珍しいドラちゃんを、普段は人目の多い街中に連れて行く事は無いのだが、今回は特別に連れて来ているのには理由があった。


〜〜〜〜〜〜


数日前。


「ドラちゃん?どうかした?」


家の中に入って来たドラちゃんが俺の側までやって来て、何かのジェスチャーを始めた。


左手で何かを持ち、右手をその上に置いて手を回す仕草をして、回す手を止めると左手を頭の付近に持っていくという謎のジェスチャーをする。


「ごめん、全然分からないや」


めげずに何度も同じ動きをするが、やはり分からない。


「ただいま〜」


そこに丁度、外で遊んでいたベルが帰って来た。


「ベル、ちょっとこっち来て」


「うん!」


ドラちゃんは魔物ではないが、それに近い存在ではあるので、ベルには言いたい事がなんとなく伝わるので、通訳をして貰う事にした。


「うんうん、うん、そっかー」


ベルはジェスチャーから何かを読み取る。


「なんかね、この前畑で使ってた緑の液体が欲しいんだって」


「畑で使ってた液体?うーん・・・?」


何の事だろうと記憶を辿っていると、


「あっ、もしかして液体肥料の事?」


俺は先日、試しにと思って街で買った瓶に入った液体の肥料を使っていたのを思い出す。


「多分それ!だってさ」


「でも、全部使って無くなったんだよね」


それを聞いて一瞬ガーンといった表情をするも、すぐに何かを伝えてくる。


「それなら、街に買いに行きたいんだって」


「えっ?ドラちゃんが自分で?」


そうだと両手を上げてアピールする。


「それはちょっと危ないと思うんだけど」


そう言うと、走るジェスチャーをする。


「一瞬で買うからお願い!だって」


「うーん・・・」


少し悩むが、ドラちゃんが欲しい肥料が分かる訳でも無いので、


「絶対に俺から離れない事と、寄り道はしないって約束出来る?」


そう聞くと、出来るといった風に全力で両手を上げて背伸びをする。


「ベルも一緒に行くー!」


こうして、ドラちゃんを連れての買い物が決定した。


〜〜〜〜〜〜


「とりあえず目的の場所に行こうか」


「おー!」


とベルは言い、その腕の中でドラちゃんが手を上げる。


そんな2人を連れてやって来たのは、工具や農具などを売っているホームセンターの様な店だ。


「スンスン、なんか木の匂いする」


前世のホームセンターの様に店内は独特な匂いがしている。


「この匂い、嫌い?」


「う〜ん・・・好き」


「そっか、そっか」


ベルも少しワクワクしている様で、ドラちゃんも気に入ってる様子だ。


「えーっと、確か肥料はあっちにあったかな」


農具関連のコーナーに行くと、250ml位の透明な瓶に入った緑色の液体が並べられていた。


「これこれ」


瓶を1つ手に取る。

値段は大銅貨3枚と3000円程だ。


ドラちゃんは中の液体をジーッと見つめる。


「これ買えば良いの?」


うんと言う様に手を上げるので、そのままレジに持って行こうとすると、


「あっ、待って!」


とベルに呼び止められて振り返る。


「どうかした?」


「ドラちゃんが、こっちの方が良いって」


そう言ってベルが手に取った物は、紫色の液体が入っていた。


「えっ・・・、それ買うの?」


「なんか、コッチの方が良い気がするんだって」


その瓶の棚には、これ1本あれば完璧1日で植物が急成長する魔法の肥料と書かれていた。


ドラちゃんは文字が読めない筈だが、何かを感じ取ったのだろうか。


「え〜っと値段は・・・大銀貨1枚!?」


なんと、この怪しい液体は1本で10万円程の値段だった。


「流石にこれは・・・」


「おねがい?」


ベルが代弁し、ドラちゃんが両手を上げる。


「はぁ、今回だけだよ」


そう答えると、2人は嬉しそうな顔をした。

早速レジにて支払いをして、家へと帰る。


付けてとジェスチャーをするので、数滴だけ頭の上に垂らす。

流れ落ちる肥料を自分の手で体に染み込ませている。


そもそも、何故ドラちゃんが肥料を欲しがっていたのかが分からないなが、本当に効果は出るのかと半信半疑だった。


〜〜〜〜〜〜


翌朝。

ベッドから起き上がり、外の空気を吸いに外に出ると、目の前の地面からドラちゃんが現れた。


「うわっ!びっくりしたー」


驚いていると、何か気付く事は無いかというジェスチャーをする。

サッと全身を見るが、分からない。


「うん?」


悩んでいると、頭の方をアピールしてくるのでよく見て、


「あれ?葉っぱ増えた?」


そう言うのだった。

ドラちゃんの頭に生えている枝には、葉っぱが5枚付いているのだが、それが10枚に増えていたのだ。


そして、俺の言葉にドラちゃんは正解と言う様に喜んだ。


「もしかして、昨日の肥料の効果かな?」


多分そうだと言う。


「他に変化は無い?」


自分の体をまさぐり、無いと伝える。

どうやら、色は怪しかったが変な副作用は無いそうだ。

そんな葉っぱの増えたドラちゃんは、その日1日上機嫌になるのだった。


しかし、その翌日。


同じ様に、朝起きてから外の空気を吸いに行くと、ドラちゃんがボコっと地面から出てくる。

だが、昨日と違ってテンションが低い気がする。


「ん?あれ?葉っぱ減った?」


原因を探ろうと体を見てみると、10枚あった葉っぱが5枚に戻っていた。


ドラちゃんが遠くの方を指差すので見てみると、そこには枯れて茶色になった葉っぱが5枚落ちていた。


「1日であんな事になったの?」


そうと頷く。

すると、ドラちゃんはジェスチャーで何かを伝えてくる。


「もしかして、もう1回付けたいの?」


肥料をもう1度使いたいと言うので、仕方なく数滴に頭に垂らしてあげる。


「あんまり使い過ぎも良くないと思うよ」


そう注意しつつも、翌日には前日と同じ様に葉っぱが10枚に増えて喜ぶ姿があった。


しかし、やはりその翌日には再び葉っぱは枯れ落ちて5枚に戻っていたのだ。


「この肥料、1日しか効果ないんじゃない?」


即効性はある様だが、その副作用としてすぐに枯れてしまうのだろう。

葉っぱが増減する事以外は何も変化は無いそうだが、


「流石に暫くは使うの禁止ね」


これ以上は何か副作用が出て来る可能性もあるので、そう伝える。

望んでいた効果が得られなかったのか、ドラちゃんも頷く。


後日ベルに聞いてもらった所、肥料を使ったらもっと大きな体になれるのではと思ったらしいのだが、葉っぱが増えるだけで期待していた物では無かったそうだ。


結局、肥料に頼らずに成長しようと言う事になり、肥料は余ったまま倉庫の肥やしになるのだった。

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