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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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232/533

オーガ

「殺すとは、いきなり物騒な奴じゃな」


坑道の底で偶然見つけた、白い髪の女のオーガの封印を解くと攻撃をして殺意をこちらに向けてきた。


「貴様ら、あの賢者の仲間だろ!」


「賢者とは誰の事でしょうか?」


「しらばっくれても無駄だ!さぁ、何処かに隠れているんだろう!出てこい!」


そのオーガは叫び声を上げる。


「そうか。まずはこいつらを倒さないと出てこないと言うのだな!なら・・・」


殺意の籠った視線をこちらに向けてくる。


「ちょっと待ってくれ!私達は、オーガの依頼を受けてここに来たんだ!」


とエレオノーラさんが呼びかけると、


「何?オーガから・・・?何処にいるんだ?」


「この上の坑道を出た先に里がある」


その言葉を聞いたオーガは殺意を弱めて、こちらに走り出して来た。

攻めてくると思い守りの態勢をとるが、オーガは横をすり抜けジャンプをして軽々と上の坑道に上がり走り去って行った。


「なんなんじゃ、あやつ?」


「賢者がどうとか言ってたけど・・・」


「ひとまず、私達も里の方に戻るとしよう」


俺は再び、メアリーさんにお姫様抱っこをされて坑道へと上がる。


急いで坑道を抜けて里の方に走って行くと、里の中がザワザワとしていた。


「長は居るか!長は何処だ?」


さっきのオーガの声が聞こえた方に行くと、俺達を見た里のオーガ達が一斉に家の中に隠れてしまった。


「何故逃げて行く・・・?」


他のオーガ達が家に慌てて入っていく様子を、不思議そうに見ていたオーガはこちらの存在に気付いた。


「お前達は、さっきの・・・」


と言い掛けた時、里の長が走って向かって来る。


「お前が長か?」


「そ、そうですが。どこの里の方でしょうか?」


「そっちこそ初めて見る顔だが、新顔か?」


「いえ、私は30年前からこの里で長を務めてますが・・・」


「何?いや、待て。そもそもお前は何処の里の者だ?」


「この里の名ですか?名はドラグですが?」


長の言葉を聞いたオーガは、フラッとよろめく。


「ドラグ?聞いた事が無いぞ・・・私達の里はガーランはどうなったんだ!」


「そ、そんな里、聞いた事ないです・・・」


長の言葉にガクリと膝を落とし、顔を下に向ける。

長は困惑しつつも、次はこちらに視線を向けて、


「あ、あの魔物の討伐は・・・」


「無事に終了した」


「ありがとうございます。助かりました」


そう言いいながらペコペコと頭を下げていると、俯いていたオーガが顔を上げて、


「魔物の討伐?何故、自分達でやらない?」


長に問いかける。


「魔物なんて、怖くて戦えませんよ」


「魔物が怖い?オーガは狩猟民族だ。魔物なぞ、己で蹴散らすものだ」


「私達の主食は、自ら育てたイモですよ?」


明らかにお互いの認識が食い違っている。


「い、意味が分からない・・・」


そのオーガが狼狽えていると、


「お主、封印されておった自覚はあるか?」


とティーが切り出した。


「封印?」


「そうじゃ、お主が氷の結晶に閉じ込められていたのを妾達が助けたんじゃ」


「つまり、あの戦いは・・・」


とブツブツと呟いている。


「それで、貴方はどうされるんでしょうか?もし、この里で暮らしたいのであれば、家を用意しますが?」


長は女性のオーガに話しかける。


「私は・・・」


「お主は妾達に付いて来るんじゃ」


ティーがいきなりそう言い出す。


「そっちの方が、お主の知りたい事も分かるかもしれんぞ?」


「・・・まだ、完全に信用はしていないが、お前達が私を助けたのが本当で、何かを教えてくれるのであれば、そちらに付いて行く」


「決まりじゃな。この女のオーガは妾達が連れて行くが構わんな?」


「は、はい」


そう長に伝えて里を後にし、人目のつかない場所に移動する。


「コタケよ、転移で帰るぞ」


「分かった」


家へのゲートを開く。


「何だコレは?」


女のオーガは当然ながら警戒する。


「一瞬で目的地に到着するゲートじゃ」


そんな物があるわけ無いと言う顔をしている。


「潜ってみれば分かるのじゃ」


ティーに促されたオーガは意を決した様子でゲートに入り、俺達も後に続いた。


〜〜〜〜〜〜


「こんな事が・・・」


ゲートを抜けると、オーガは目の前に突然家が現れた事に驚いていた。


「まずはお主の素性を確認せんとな」


家の中に入り皆んなに事情を説明し、オーガの話を聞く。


「私の名はレンダと言う。見ての通りオーガだ」


「まず最初に聞きたいのは、お主の言っておった賢者は何者じゃ?」


「賢者ディートリヒ。アスバルト王国の人間だ」


「アスバルト王国って聞いた事ある人?」


俺がそう聞くと全員が首を横に振る。


「そんなはずが!」


「まぁ待つのじゃ。妾達が単に知らんだけかもしれんからの。それで、その賢者は何をしたんじゃ?」


「我々オーガの暮らしていた土地を、自分達の国の領土だと主張し攻めて来た」


「それでお主らはどうしたんじゃ?」


「勿論戦ったとも。だが、あの忌まわしい賢者の罠に嵌り、私は封印されていたんだろうな」


「う〜ん、私の知ってるオーガからは想像つかないね〜」


「オルフェの言う通りじゃ。お主もさっき見たじゃろうが、オーガと言う種族は戦いを好まないんじゃ。それがお主と来たら血の気が多くて同じとは思えん」


「それがおかしいのだ。私達オーガが戦いを苦手だと言う筈がない」


「オルフェよ。ラヴィの家に行って、アスバルト王国に関する本が無いか調べるから、付いて来るのじゃ」


「りょ〜か〜い」


ティーとオルフェさんが居なくなり、シーンとなる。


「え〜っと、ご飯でも食べますか?」


気を遣ったアリーがそう聞くと、頷いたので味付けした肉を焼いただけの簡単な物を用意する。


「うまい・・・」


美味しかったのか口の中に勢いよく放り込んでいき、ティー達が帰って来るまでの20分で5kgの肉を食べるのだった。



「結論から言うとアスバルト王国は実在したのじゃ」


「ここからどれくらいの距離なんだ!?」


「今にも復讐しようって感じだけど・・・その国、滅んじゃってたよ?」


オルフェさんが続けてそう言った。


「滅んだ・・・?」


「しかも、1300年前にの」


「つまり、私はそれだけの間封印されていたと言うのか?」


「調べてみた感じ、賢者ディートリヒの名前もあったのじゃ。しかも、そいつの非道な行いが他国にバレて、その国は滅んだらしいのじゃ」


「では、ディートリヒは?」


「処刑されたと書かれておった」


「そんな・・・では、私はどうすれば・・・」


「ちなみに、その非道な行いの中にオーガに対する侵略行為ってあったんだけど、そこにオーガ族を滅ぼしたって書いてあったんだよね」


「あれ?今でも普通に生きてるんですよね?」


ルインがオルフェさんの言葉に首を傾げながらそう言う。


「オーガには戦闘的な者達と非戦闘的な者がおったのではないか?」


「私達の里には、あの里に居た様な者達は居なかったし会った事も無いから分からない」


「恐らく、ディートリヒは自身に反抗的な戦闘的なオーガのみを滅ぼしたんじゃろ。結果、生き残った非戦闘的なオーガのイメージが1300年の間で定着したんじゃろ」


「ティーは、その時のオーガの事知らないの?」


「その頃の妾は、まだ周りに興味なんぞ持っておらんかったし、オーガに会ったのも今日が初めてじゃ」


「そっか」


「あの里の者達とレンダの赤い皮膚と青い紋章と言うオーガならでは特徴は一致しておるからな、どちらもオーガではあるんじゃろ」


「ディートリヒとその国は滅び、同胞は滅んだ・・・私はこれからどうすれば」


「お姉さん、諦めたらダメだよ!」


ベルがいきなりそう言った。


「もしかしたら、まだ何処かで暮らしてるかもしれないよ!」


「そうですよ。生き延びてる可能性もありますよね!」


ベルは励まそうとしているのかそんな言葉を投げかけて、シェリーがそれに追随した。


「生き延びている可能性は無いとも言えんが、見つけるのは困難じゃろうな」


「1300年も経っていますしね」


「・・・それでも希望があるなら、探し出したい」


「そうじゃろうな。ただ、お主も封印から目覚めたばかりじゃし、まずはゆっくりしておく事じゃな。それで準備が整ったらここを拠点に探せば良いのじゃ」


「ここで?暮らしても良いのか?」


「別に構わんじゃろ?」


ティーが俺を見ながらそう言って来たので頷いて返事をする。


「何故、そこまで・・・」


「封印を解いたのは妾達じゃからな、面倒みるのじゃ。それに・・・」


「この家には似た境遇の人が集まったますから!」


「そう言う事じゃ」


アリーの言葉に皆んなが、うんうんと頷く。


「ありがとう・・・そして、初めの非礼を詫びよう。この恩はオーガの誇りにかけて必ず返すと誓う」


そう言って深々と頭を下げるのだった。


こうして、オーガのレンダが我が家に加わる事になるのだった。

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