底
想像とは違っていたオーガだったが、彼らを助ける為に魔物が出たと言う大きな坑道を探索中だった。
「やっぱり、オーガ達に合わせて坑道は大きいんですね」
身長が2m以上あるオーガに合わせて、坑道は縦にも横にも広い。
「このチラホラと見える紫色の石はなんじゃ?」
坑道内の至る所に紫色に輝く鉱石が埋まっている。
「これがオーガ達が採掘している鉱石です。ここでしか採れないので貴族にも人気があり、かなり高額なんです」
「なら、いくつか持って帰るかの?」
「流石に駄目だよ」
「冗談じゃ」
そんなやり取りをしつつ、坑道を歩いて行くが魔物の気配が全くしない。
「本当に魔物はいるのでしょうか?」
「確実にいるな。周りに変な穴が空いているだろう?」
メアリーさんの言葉に、エレオノーラさんがそう言う。
確かに地面や壁天井に直径20cm程の穴が空いていた。
「これって鉱石を掘った後とかじゃないんですか?」
「これは魔物の通り道だ。よく見てみると、穴が奥深くに続いているだろう?」
言われた通り穴を覗くと、奥が見えないほど続いている。
「ふむ、まるでモグラの様じゃな」
「流石ですね。ここに現れた魔物と言うのは恐らく・・・」
ティーの言葉にエレオノーラさんが答えようとした時、
「おっと、ちょうど目の前に現れてくれているな」
目の前に体長30cm程の1匹のモグラが現れたのだが、爪が体長の2倍の1mはあり坑道のランプの光を受けて輝いていた。
「もしかして、あれが討伐対象の魔物なんですか?」
「そうだ。あの魔物は鉱石を好んで食べていてな、よく坑道に住み着いてしまうんだ」
「あの爪、かなり凶悪そうに見えますが・・・鉄の様な物で出来ているのでしょうか?」
「その通り、あの爪はかなりの硬さで攻撃されれば、ひとたまりも無いだろうな。しかも・・・」
と言いかけた時、魔物はクルクルと回転しながら地面に潜ったのだった。
「あんな風に高速回転をしながら地中を移動していてな・・・」
エレオノーラさんは1度喋るのを止めて剣を抜き、
「ふっ!」
壁から飛び出して来たモグラを弾き返したのだった。
「こんな感じで中々厄介なんだ」
「確かに坑道だと上下左右、何処からでも攻撃できますもんね」
「しかも位置が判別しづらそうなので、こちらから攻撃を仕掛けるのも難しそうではありますね・・・」
俺とメアリーさんがそう言うと、
「要はコヤツを外に出せば良いんじゃろ?」
ティーが言った。
「何か作戦があるの?」
「まぁの。とりあえず妾の後ろに立っておれ」
そう言われて後ろに移動すると、ティーはモグラが最後に潜って行った穴の前に立ち・・・
火の魔法を放ち込んだ。
「こうすれば、慌てて出てくるじゃろ」
火の魔法を放ち続けて少し経つと、少し離れた地面から慌てて飛び上がって出て来たのだ。
その後から、ティーの火の魔法も続いて出て来ている。
「よし、メアリーやるのじゃ」
「は、はい」
ティーに指示されたメアリーさんが、血の槍を魔物に飛ばして仕留めるのだった。
「うむ、ナイスじゃ」
「セオリーは味方の前衛が囮となり、飛び出して来た所を撃ち抜くのですが、これもアリですね」
「むしろ、こっちの方が良いじゃろ」
「普通の魔法使いは魔法を放ち続けていると、魔力を大量に消費するので後々の戦闘の為にも温存しておくのですよ」
「そう言うもんかの」
「そう言うものなんです」
「とりあえず1匹倒した事だし、他にもいないか探そっか」
そのまま坑道内を探索し続けて、行き止まりにあたった。
「結局おったのは、あの1匹だけか」
「それだけでも、オーガの方達では対応出来ないのでしょうね」
「ともかく依頼も達成した事だし、報告に戻るとしようか」
エレオノーラさんがそう言い、ティーが引き返そうと歩き出した瞬間、
「むっ?」
ティーの足元の地面がピシピシと音を立てながら、亀裂が入っていく。
「なんじゃこれは・・・ぬおっ!」
ティーがゆっくりと動こうとした時、亀裂が更に広がり遂にはガラガラとティーを巻き込みながら崩落するのだった。
「ティー!?」
と俺達3人は驚きながら急いで穴に駆け寄る。
「油断したのじゃ」
ティーは10m程落下していたが、大したダメージも無さそうで立ち上がって土埃を払っていた。
「ティー、大丈夫?」
「問題無いのじゃ」
「モグラの魔物が移動して、地中に穴が多く出来て陥没したのですかね?」
「とりあえず、上に戻る・・・」
ティーは上に戻ろうとそう言い掛けて動きを止めた。
「どうかした?」
「うむ、ちょっとお主達も降りて来てくれ」
何かを見つけたティーがそう言う。
「降りるって言っても、流石にこの高さは・・・」
「私は問題無いぞ」
「私も問題ありません」
2人はこの高さを物ともしていなかった。
「メアリー、頼めるか?」
「分かりました。コタケさん、失礼しますね」
「えっ、ちょっ!」
と俺はメアリーさんにお姫様抱っこをされて、そのまま穴へと降りて行くのだった。
「まさか、女の子にお姫様抱っこをされるとは・・・」
「その、これが手っ取り早いと思いましたので。アリシアさんには内緒にしておきます」
「はい・・・」
「お主ら、そんな事よりもアレをどう思う?」
「そんな事って、俺的にはちょっと恥ずかしかったんだから・・・」
そう言いながら、ティーが指差す方に視線を送りその光景に喋るのを止める。
そこには、1人の女性のオーガが閉じ込められた氷の結晶があったのだった。
「何だコレは・・・?」
「女性のオーガですね。ただ、よく見ると里で見た方達とは格好が違いますね」
メアリーさんが言う様に、里で見たオーガ達は布の服を全身に纏っていたが、この女性のオーガは何かの毛皮を胸と腰の周りに巻いているだけだった。
「意識はあるんかの?」
「目は閉じてるけど、生きてるのかな?」
「何か封印されている様な気がしますね」
「坑道の底にこんな物があるとはな。里のオーガ達の仕業か?」
「少し話して見た感じではそんな気はしませんが、何とも言えませんね」
「ふ〜む、どうせなら封印を解いてみるかの?」
「流石にそれは駄目じゃない?もし、悪い人とかだったら危ないし」
「流石に3人で抑えられるじゃろ?」
我が家でも特に戦闘能力の高い3人がいるから、心配は少ないが・・・
「それに、悪い奴では無かったら可哀想じゃろ?」
ティーは少しソワソワしながらそう言う。
「もしかして、戦えないか期待してる?」
「そ、そんな事は無いんじゃぞ?ちょ〜っと、消化不良気味ではあるがの」
「やっぱりそうじゃん。もしかして、後の2人も・・・」
確認してみると、2人ともバッと視線をそらす。
「はぁ、まぁ解いてみないと分からなさそうだし、仕方無いか」
「そうじゃろう、そうじゃろう」
「それで、どうやって封印を解くの?」
「見た感じ、周りは氷で出来てるのでティーフェン様の魔法で溶かせるのでは?」
エレオノーラさんがそう言う。
「それよりも妾の炎の方が効率的じゃろ」
そんな事を言って、ティーは口から炎のブレスを吐いた。
「凄い光景・・・」
氷の結晶はティーの炎でジュワジュワと溶け出している。
そして、5分が経過した所で氷の結晶は、ピシピシと音を立てヒビが入りパリンと砕け散り、中にいたオーガも一緒に流れ出てくる。
「だ、大丈夫なのかな?」
遠くからでは息をしているかが分からず、ティーが近づいて行く。
すると、横たわっていたオーガから鋭い蹴りがティーに飛び込んで来る。
ティーは後ろに避けて距離を取る。
蹴りを避けられたオーガは、飛び起きて辺りを見回す。
「あの、大丈夫ですか?」
そう声を掛けてみると、
「貴様ら、あの賢者の仲間だな!」
「「賢者?」」
「殺してやる!」
そのオーガは、溢れる殺意をこちらに向けてくるのだった。
時間が足りず、中途半端ですがここで一旦区切ります。
次回でこの話はラストになります。




