登録完了
拠点から出発し、9時間ほどかけて遂に街へと到着した。
入り口には立派な門が建っており、そこには多くの人が行き交っている。
「皆さん、道中の警護ありがとうございました」
乗せてもらった馬車の老人がお礼を言った。
「いえ、こちらも大幅に時間を短縮できたのでお互い様です」
「また、皆さんにお会いすることがありましたら、その際は必ず御恩をお返しします。それでは・・・」
と言い老人とは、そこで別れた。
「さて、それじゃあまず初めに、コタケ殿のギルド登録とスライム達の登録をしようと思うのだが、登録されていない魔物が街に入るのは色々とまずいので、私が冒険者ギルドの者を呼んで来るから、ひとまずこの街の外で待っていてくれ」
エレオノーラさんはそう言い、先に街へと入っていった。
俺達は、邪魔にならない様に道の端で待機していた。
「アリーはこの街に来た事あるの?」
「えぇ勿論ありますよ。初めて来たのは、私が10歳の時でした。そこで初めてエレオノーラとお会いしたんです」
「10歳の時にはエレオノーラさんと会ってたんだ」
(あれ?そういえばアリーって今いくつなんだ?聞いた事はなかったけど・・・)
「ごめん、女性にこういうこと聞くのは憚られるんだけど、アリーって今何歳なの?」
「うふふ、そうでしたね。年齢はお教えした事はありませんでしたね。私の歳は20歳ですよ」
「じゃあ、俺よりも7歳も下かぁ〜」
「ワタルさんは27歳という事ですか?」
「うん、そうだね。やっぱり歳離れてると嫌かな?」
「いえ、7歳程であれば何も思わないですよ。これが、20歳とか30歳と離れてますと思うところはありますが・・・」
「そう言ってくれると嬉しいよ。でも、20歳でもまだ婚約っていう段階なんだね。俺がいた国だと女性は16歳から結婚できてたんだよね」
「随分と早いのですね!この国は昔から結婚はお互いが20歳を超えてからというしきたりがあるんです」
「そうなんだ。でも、しきたりっていう事は絶対っていう訳ではないんでしょ?」
「まぁそうですね。ただ、貴族はそういったものを重んじる所がありましたので今でも続いているのでしょう」
色々と話している内に、エレオノーラさんが後ろに人を連れて戻ってきた。
「すまない、少し待たせてしまったな」
「いえ大丈夫ですよ。それで後ろの女性はどなたですか?」
「あぁ、彼女はギルドの受付員だ」
「皆様、初めまして。アリエと申します。これからよろしくお願い致します」
「コタケ ワタルと言います。こちらこそ、よろしくお願いします」
「じゃあ、挨拶も済んだ事だし、早速コタケ殿のスライム達の登録をしてもらおう」
「登録ってどんな事をするんですか?」
「それは、私から説明します。魔物の登録というのは、冒険者の方々がテイムされた生き物や魔物を鑑定系の魔法で見る事で、本当にテイムが出来ているのかといった事を確認する事です。その結果が問題なければギルド側で登録証を発行することで、街の中に入れることができます。ちなみに、毎回街に入る際には門番に魔物の登録証を見せないと入ることはできないので、無くさないように気をつけてください」
とアリエさんが説明してくれた。
「何かご質問はありますか?」
俺は首を横に振る。
「それでは、早速鑑定して参ります」
アリエさんがそう言って、詠唱し出すとスライム達の周りに魔法陣が浮かび上がった。
スライム達は、それを不思議そうに見つめ大人しくしていた。
次第に魔法陣が消えていき鑑定が終わったようだ。
「はい、この魔物達は全てしっかりとテイムされていることが確認できました」
どうやら大丈夫だったようで、俺は一息ついた。
「それでは、次にコタケ様のギルド登録を行いますので、私について来てください」
そう言われ、俺達はアリエさんの後ろについた。
そして、とうとう街の門をくぐった。
そこには、商人達が出店を開いていたり、剣や杖、弓など様々な武器を装備した冒険者たちで賑わっていた。
(おぉ〜!これが異世界の街か!)
まるで祭りでも開催しているのかという程の賑わいで、とても楽しそうだった。
門を過ぎてからしばらく、歩いていると一際大きな建物が見えてきた。
「ギルドに到着しました」
どうやら冒険者ギルドだったようだ、冒険者がたくさんいるだけあって建物もかなり立派だった。
「中へどうぞ」
アリエさんに招かれ、中へ入っていくとそこには、依頼と思われる紙が貼ってある掲示板や魔物の素材や魔石が置かれたカウンター、酒を飲んでいる冒険者たちがいる食堂といったような光景が広がっていた。
(想像通りの冒険者ギルドだ!)
「皆さん団体で目立つので今回は個室で登録を行いますので、こちらへどうぞ」
と言われ、俺達は個室に入って行った。
「それでは早速、コタケ様の登録を行います。まずはこちらの水晶に手をかざしてください」
言われるがままに、手をかざすと水晶が青く光出した。
これで俺の隠された能力が判明するみたいな展開を考えていると、すぐに光は収まった。
「はい、確認取れましたので結構です」
「この水晶からは何が分かるんですか?」
「こちらの水晶では、その人物が冒険者ランクのどの辺りの実力を持っているのかという事が分かります。コタケ様は冒険者ランクをご存知ですか?」
「はい知ってます」
(確か前に、エレオノーラさんがF級から始まって、最高到達点はSランクになると言っていたな)
「では、そちらの説明は省きまして、例えばギルドに初めてきた方が登録をする際にこちらの水晶でCランク相当の実力があると結果がでた場合、その方は、一個下のDランクで登録される事になるんです」
「何故あえて一個下のランクにするんですか?」
「それは、実力があるからといって、実際に魔物との戦闘の際に動けるかは分かりませんので、ランクを一個下げることで安全性を高めているんです」
「でも、それなら全員最初からFランクスタートにすればいいのでは?」
「それだと、同じランクなのに大きな実力差が出てしまい、FランクやEランクと判断された者達のやる気が損なわれてしまうのと、高ランクの冒険者というのは少ないので、依頼が溜まってしまうことがあるのです。なので、実力のある者には早くランクを上げて貰うためにもそういった措置になっているんです」
「なるほどそうなんですね。ちなみに最初からランクが高い人はそれなりに居るんですか?」
「いえ、滅多にいませんね。ただ今あげた例の、水晶での判定がCランクの実力だったというのは実際にいた方の話です」
「すごいですね!ぜひお会いしてみたいです」
「そうですか・・・でも、コタケ様は既にお会いしてますよ」
「え?何処でですか?」
と聞くと、アリエさんの視線が俺の右斜め後ろに向いていた。
その視線を追っていくと、そこには顔を背けたエレオノーラさんがいた。
「え?エレオノーラさんがその人なんですか?」
コクリとアリエさんが頷く。
顔を背けているエレオノーラさんに代わって、
「恥ずかしがっているエレオノーラに代わって説明しますと、彼女は幼少の時よりかなりの実力があり、Dランクからスタートして、私が出会った頃にはAランクになっていました」
とアリーが答えた。
(国内屈指の強さを誇ると言ってたけど、昔からそんなに強かったのか・・・)
「まぁ、ほとんどの人がFランクスタートなので、そこは深く考えなくても大丈夫かと思います」
「ちなみに俺のランクは・・・?」
「Fランクでした」
「ですよね」
(エレオノーラさんとの模擬戦の時にDランクとCランクの間と言われたけど、あれは腕輪の力があったからだし仕方ないよな)
「では、こちらが出来上がったギルドカードになります。依頼を受ける際などに毎回提示して頂くことになりますので、無くさないようにお願いします」
こうして、目的の一つである、ギルドへの登録とスライム達の登録が完了した。
そして、辺りは暗くなってきたので、アリエさんから紹介された宿屋へ向かった。