お婿さん探し
「そろそろ、本格的に私の伴侶を見つけたいんです!」
とある昼下がりに、シェリーがそんな事を言い出した。
「元々、コタケさんの恩につけ込んで結婚しようとしに来ましたけど、失敗したじゃないですか」
「まぁ、そうだね」
改めて聞くと酷い理由だなと思う。
「なんやかんやで有耶無耶になってましたけど、コタケさんが駄目なら他を探そうと思うんです!」
「そっか、まぁ頑張ってね?」
「何言ってるんですか、コタケさんも付いて来るんですよ」
「えっ、いや俺が一緒に居たら相手も困惑しちゃうでしょ」
「え〜、そんなの気にしませんって」
「俺だったら嫌だけどなぁ・・・」
「まぁまぁ、明日行くのでお願いしますね!」
結局押し切られて、シェリーの婿探しに何故か付いて行く事になったのだった。
〜〜〜〜〜〜
お昼を食べ終え、早速やって来たのはマゼル王国の王都だった。
王都に住んでいるとなると、それなりに裕福な人な気がするが、シェリーはいつの間にそんな人とあったのだろうかと疑問に思う。
「本当に俺が付いてきて大丈夫なの?」
「勿論です。コタケさんにも確認して貰わないといけませんから!」
(俺が何を確認するんだろ?)
「とりあえず、目的地に行きますね」
と仕方なくシェリーの後を付いて行く。
「あれ?目的地ってここ?」
歩くこと数分、到着したのは馬小屋だった。
「そうですよ?」
「えーっと、ここを経営してる人とか?」
「あはは、そんなわけないじゃないですか」
「つまり、シェリーの言ってた相手ってオスの馬って言う事?」
「そうですよ〜」
「ごめん、普通に人間だと思ってた・・・」
「馬同士の方が気楽ですからね。人間と結婚するのは本当に切羽詰まった時の最終手段です」
その状況に陥ったから俺の所に来たのではと思ったが言わない事にした。
「ていうか、俺いる?」
「男の意見も欲しいじゃないですか」
「そんな事言われても、馬の良し悪しなんて分からないんだけど」
「まぁまぁ、見た直感で良いので。それじゃあ行きましょー!」
馬小屋の中に入って行く。
まず1番初めに出迎えたのは、明るい赤褐色の毛をした馬だ。
「ふむふむ、なるほど〜」
シェリーはマジマジと見つめながら呟く。
「うん、駄目ですね!」
「駄目なんだ」
「はい、筋肉が足りてません」
「そ、そうなんだ」
そう言われて、もう一度見てみるが全く分からない。
「次、行きましょ」
次の馬はシェリーの様に真っ白な毛をしていた。
「駄目です!」
「即答!?」
「色んな子と遊んでますってオーラがヒシヒシと伝わってきます。このオスはメスの敵です!」
「シェリーは何を感じ取ってるの・・・」
「慣れてくると分かりますよ」
「そうかなぁ?」
「さっ、次です」
と続く馬は真っ黒な毛をした個体だ。
「ほうほう、筋肉は合格ですね」
確かに1匹目よりかはゴツい体をしている様な気はする。
「うーん、でも駄目ですね」
「これまたどうして?」
「蹄鉄の傷と壁傷を見て下さい。この量はここでかなり暴れた感じがするんですよ」
言われてみれば、他の馬の所よりも壁に傷が沢山付いている。
「きっと気性が荒い馬なんです。そう言うオスは、メスに対しても高圧的で、暴力を振るってくるので駄目です」
「馬にもそういうのあるんだ」
「それで痛い目を見たメスも見てきましたので」
「そっか、じゃあ次?」
「はい!」
続く4頭目は栗の様な色の毛をしている。
「おぉ?」
とシェリーはそんな声を漏らす。
「筋肉良し、遊んでますオーラも無し、性格も落ち着いてる・・・」
これは遂に来たか?と思っていると、
「でもなぁ・・・」
そう言うのだった。
「今の内容的に結構良い線いってるんじゃないの?」
「そうなんですけど・・・顔が好みじゃないんですよね〜」
「えぇ・・・」
「ほら、やっぱり顔も重要じゃないですか?このオスは顔以外は良いんですけどねー」
正直言って顔の違いは全然分からないのだが、シェリーは納得いってないらしい。
「じゃあ、この馬も?」
「駄目ですね」
果たしてシェリーのお眼鏡にかなうオスはいるのだろうかと思いながら、その後も引き続き婿探しをしていった。
〜〜〜〜〜〜
夕方になり、そろそろ帰る時間となった。
「駄目でした・・・!」
「うん・・・シェリーが納得いってないなら良いんだけど、この調子で見つかるの?」
「うぐっ・・・ちゃんと見つかりますとも」
「まぁ、頑張って」
「こうなったら、わざと罠に掛かったフリをして人間に助けてもらうとか」
「迷惑になる様な事は無しだからね?」
「はーい・・・」
結局その日は、なんの成果も得られないのだった。
 




