休日
「お休みだー!」
「お休みー!」
最近働き詰めだったオルフェさんが、久しぶりの休みに喜び、ベルも一緒に喜んでいた。
「さーてベル、今日は何しよっか?」
「ママ、休んでなくて良いの?」
「ベルは良い子だね〜。でも、ママはベルと遊んでた方が楽しいから気を遣わなくて良いんだよ!」
「うん!」
そんな微笑ましいやり取りをしている。
「どこか遊びに行く?」
「うーん・・・あっ!この前行った魔女さんの村に行きたい!ママにも見てもらいたいんだ」
「魔女か〜、ママも見た事無いかも」
「箒で空を飛んでて格好良かったよ!」
「気になるー。それじゃあ今日はそこに行こっか」
「あっ、でも遠い所にあってね・・・」
「大丈夫、大丈夫。コタケ君がいるからね」
転移で行きたいのか、そんな事を言って来たのでヒルズを呼びゲートを開いて貰う。
「よーし!私が1番乗りだー」
「ママ、ずる〜い」
オルフェさんが意気揚々と突っ込み、ベルも後に続こうとしたのだが、
「あれ?ちょっと待って下さい」
とヒルズが待ったをかけた。
「どうかした?」
「え〜っと、ちょっと待ってて下さいね」
ヒルズがそう言ってゲートに入って行く。
暫く待っているとヒルズが戻って来て、その後に続いて・・・
びしょ濡れのオルフェさんが帰って来たのだった。
「え?どうしたの?」
「海しかなかった・・・」
話によると、転移した先に島などは一切見当たらず海しかなく、そんな中で突っ込んだ事で、ゲートを出た瞬間にドボンと行ったそうだ。
その異変に気が付いたヒルズが救出したと言う。
「位置は確実に合っているのですが・・・」
「もしかして、この前行った時に使ったコンパスが無いと駄目なのかな?」
「なるほど、あれが無いと結界に弾かれてしまうと・・・その可能性が高そうですね」
「え〜、じゃあ今日は行けないって言う事?」
「行くとしたら、学園長にコンパスを借りに行かないとね」
「そう簡単にはくれないよね〜。仕方ない、今日は諦めるしか無さそう」
「ママ、ごめんね」
「ベルは悪くないよ〜」
「とりあえず、お風呂に入ってきたら?」
「うん、ベトベトするしそうする」
と風呂場へ向かうオルフェさんを見送った。
〜〜〜〜〜〜
「よーし!ふっか〜つ!」
元気になったオルフェさんが戻って来た。
「さて、次こそ遊ぶぞ〜。何しよっか?」
「う〜ん・・・お絵描きは違うし、ママと遊べるのは」
ベルが悩んでいると、
「ならば、そんな2人にコレをあげよう」
とエレオノーラさんが言い、1枚の紙を差し出した。
その紙は、木の絵と赤いバツ印が描かれた地図の様だった。
「なにこれ?」
「それは宝の地図だ。その場所にはとあるお宝が埋められているんだ」
「「お宝!!」」
2人は揃って反応する。
「ちなみに私のお手製だ」
「エレオノーラちゃんが作ったの?またどうして?」
「ベルがこの前、冒険の話を聞いてやってみたいと言っていたから作っておいたんだ」
「そうなの?」
「うん!楽しそうだったから!」
「そっか。じゃあ、今日は宝探しといこー!」
「おー!」
ベルは手を上げる。
「果たして、簡単に見つかるかな?」
「そう言っても、この地図って見た感じこの森でしょ?簡単そうだけど」
「でもママ、森って言っても広いよ?」
「うーん、何か特徴のあるものは無いかな?」
2人はジーッと地図を見つめると、
「あっ!この木の絵だけ、少しおっきい気がする」
とベルが言った。
「なんか近くに丸印もあるけど、これはなんだろ?」
「なんだろ〜?エレオノーラお姉ちゃん、ヒント頂戴!」
「そうだな、それは少し難しいから仕方がない。その丸は池だ」
「池ねぇ、近くに大きい木があると・・・」
「わかった!前に大きな蟻さんを助けた所だ!」
「あー、あの大きい蜘蛛の住処か」
「そう!」
「オッケー。じゃあ、そこまでコタケ君よろしく!」
と移動係で付いて行く事になった。
〜〜〜〜〜〜
「「とうちゃ〜く!」」
「さっ、ベル。もう一回地図確認しよう」
地図を再び確認してバツ印の場所を確認する。
「木を正面に向かって・・・右斜め上って感じだね」
「えーっと、あっちかな?」
「そっちぽっいね〜。早速行ってみよー」
ベルが指差した方向に進んで行く。
そして10分程、草木を掻き分けて歩き立ち止まる。
「ここら辺だと思うんだけど、どうかな?」
「何も見当たらないよ〜?」
「何か目印になる物ないかな」
辺り一面見渡してみるが、特に見当たらない。
もう一度注意深く見ていると、
「あっ、あった!」
とベルが指を差した。
その方向を見たが、ただの木が生えている様にしか見えない。
「えっ?どこにあるの?」
「ほら、あそこ!」
ベルが指を差している木に近づいて行くと、その木に小さくバツ印が付けられていたのだ。
「うわ〜、分かりづらい」
「でも、周りに何もない?」
「こういう時は大抵地面に埋まってるものなんだよ。と言うわけでコタケ君よろしくね」
「はいはい」
俺は腕輪をスコップに変形させて、バツ印のついた木の前の地面を掘り返す。
そして、30cm程掘った所でガキンと何かにぶつかった。
そのまま手で探っていると、宝箱が出て来た。
「「あった〜!」」
宝箱をベルに手渡し開いてもらおうとしたのだが、鍵が掛かっていて開けない。
「開かな〜い」
「そんな所まで再現しなくても。コタケ君、その腕輪って鍵に変形出来たりしないの?」
「流石に難しいかな」
「じゃあ、破壊するしか無いかな?でも、それだと中身が・・・」
「うーん、あれなら出来るかな?」
開け方に悩んでいると、ベルがL字型の細長い金属製の棒を2本取り出して鍵穴に入れ、ピッキングし出したのだ。
「ベ、ベル?そんなの何処で覚えて来たの?」
どうやらオルフェさんも知らなかった様で驚いている。
「えっとね、リッヒお姉ちゃんが万が一の時に使えるかもって、教えてくれて道具もくれたんだ〜」
暗殺者であったリッヒさんなら確かにやり方を知ってるだろろうが・・・
「リッヒちゃん、ウチの子になんて事を・・・ちょっと後で、オ・ハ・ナ・シしないとね」
とオルフェさんは納得していない様子だった。
ベルがピッキングを開始して1、2分で、ガチャという音がした。
「ひらいた〜!」
「嬉しいけど、ママは複雑だよ」
「まぁ、リッヒさんが教えてくれたから傷付けずに開けれたって事で一旦忘れよう」
「うん・・・それで、宝箱の中身は・・・?」
「なんか、剣と紙が入ってた」
中に入っていたのは、刀身が普通よりも短めな剣と飲み放題と書かれた紙だった。
「その剣、長さ的にもベルに丁度いいかな」
「勇者ベル、参上〜!」
ベルは嬉しそうに剣を振り回している。
「こっちの紙は・・・うん、私用だね!」
「冒険者ギルドでお酒飲み放題って、エレオノーラさん何でこんなの入れたんだろ」
「それは当然、私の為のお宝でしょ」
「うんまぁ、そうだよね」
実際、オルフェさんは喜んでいるし正解なのだろう。
「いや〜、楽しかった。作ってくれたエレオノーラちゃんに感謝だねー」
「また、やりたい!」
「じゃあ、後でお礼言っとかないとね」
「うん!」
と宝探しを満喫した2人は、家に帰ったあとエレオノーラさんに感謝を伝えた。
ちなみにピッキングの事は忘れておらず、リッヒさんとは1時間程のハナシアイをするのだった。
 




