魔女の村
コンコン
ある夕暮れ時に、玄関をノックする音が聞こえた。
こんな時間に誰だろうと扉の覗き穴を覗いてみたが、外には誰も居なかった。
不思議に思い扉を開けて周囲を見回してみたが誰も居ない。
聞き間違いかなと思い扉を閉めようとすると、下の方に何かが落ちているのが目に入った。
それは、黒色の封筒だった。
「一体、誰が・・・」
この家に封筒を持ってくる人物と言えば、旅商人のコリンさんだけなのだが、急いでいて封筒だけ残して行ったのだろうかと考え、ひとまず封筒を手に取り中へと戻る。
「どなたでしたか?」
「誰も居なかったんだ」
アリーにそう答える。
「でしたら、聞き間違いですかね?」
「そう思ったんだけど、こんな封筒が地面に落ちてて」
「真っ黒ですね。こんな封筒は初めて見ました」
「開けるの躊躇っちゃうよね」
「えぇ、少し怖いですね。ティーフェン様に見て貰ってはどうでしょうか?何かしらの魔法が掛かって無いとも言い切れないですし」
そんな話をしていると、ティーが丁度お風呂から帰って来たので見て貰った。
「別に何も無そうじゃが?」
「警戒し過ぎだったかな?明けても大丈夫なんだよね?」
「問題ないのじゃ」
ティーもそう言うので、封筒を開ける。
何も起こらず、中の手紙に目を通すと、
「パラス・レイ・ゾーラって、アリーの通ってた学園の学園長だよね?」
「えぇ、そうですが・・・もしや、学園長からの手紙だったんですか?」
「うん。また依頼事があるみたい」
「ドラちゃんの一件で使えると思われたのでしょうか?今回はどういった依頼ですか?」
「魔女の住む村に、ある物を取りに行って欲しいって書いてあるんだけど、何処か知ってる?」
「聞いた事ないですね。ティーフェン様はどうでしょうか?」
「妾も知らんの。場所は書いとらんのか?」
「えっーと、封筒の中に入っているアイテムを使えば辿り着けるって書いてある」
改めて封筒を見てみたが、ペタンと潰れて中に何か入っている様には見えない。
「何も入って無さそうじゃが」
ティーがそう言いつつ、ブンブンと封筒を振り回しているとコロンと封筒の中から何かがテーブルの上に落っこちた。
「コンパス?」
中から出て来たのは、方角を示すコンパスだ。
「こんな物、何処に入っておったんじゃ?」
そう疑問に思いつつ手に取り、眺めていると赤く塗られた針が東の方を指し示していた。
「この向きに目的地があるのかな?」
「そう言う事なんじゃないでしょうか?この方角ですとヒノウラがありますね」
「一旦そこまで転移してから、また確認って感じだね」
「明日向かわれるのですか?」
「期限は書いてないけど、早めに行った方が良さそうだからね。ティーもついて来て貰って良い?」
「どんな場所か気になるし良いじゃろう」
「ティーフェン様がいれば大丈夫だとは思いますが、お気をつけ下さいね」
「ありがとう」
〜〜〜〜〜〜
翌日。
「わーい!海だー!」
「ベルちゃん、あんまり離れないで下さいね」
俺達はヒノウラまで転移して来ていた。
前日に皆んなに話をしたら、ベルが魔女を見たいと言い出したので一緒に行く事となった。
オルフェさんも来ようとしたが、仕事が忙しいらしく代わりにメアリーさんがベルの護衛として来てくれた。
「それで、針の方はどうじゃ?」
「えっと・・・西の方を向いてるね」
「つまり、少し戻るわけじゃな」
「海の上を行かないとね。2人とも出発するよー」
「「はーい」」
ティーの上に乗り、海上を進んで行く。
「そう言えば、魔女って普通の魔法を使う人達とは違うの?」
この世界では初めて聞いた魔女について、メアリーさんに聞いてみた。
「魔法を使う所は変わりないのですが、魔女と呼ばれる人達は全員が不老不死なんです」
「全員が?凄いね」
「私も実際に会った事は無いので、事実かは分かりません。それから、全員が途轍もない力を持っており、数人で国を落とす事が出来るとか」
「そこまでいくと怖くなってくるんだけど」
「まぁ、あくまでも噂程度ですので」
「魔女さんってお空飛べるのかな!」
「箒に跨って空を飛ぶそうですよ」
「楽しそう!」
「ベルよ、箒よりも妾の方が良いじゃろうが」
と話していると、目の前に霧が出現した。
「迂回した方が良いかの」
「針はあの先を示してるんだけど、どうしようか」
「あまり悪い感じはしないので、突っ切っても問題は無いかと」
「ふむ、ならあそこを通るかの」
そのまま霧の中に入って行くと、コンパスの針が急にグルグルと回り出した。
「コタケよ、針は何処を示しておる?」
「壊れたのか、針が止まらなくて」
「うーむ、仕方ない。すぐに霧から出るから掴まっておれ」
ティーはそう言い、ギュンと加速をする。
あまりの速度にに暫く目を瞑っていると、だんだんと速度が落ちているのを感じて目を開くと、霧は綺麗さっぱり無くなり、海の上に森が広がっている島が浮かんでいた。
「コタケよ、針はどうなっておる?」
「あの島の方を指してるね」
「降り立ってみるかの」
丁度良い砂浜があったので着地する。
「人っ子1人いませんね」
砂浜には波の音が響いている。
「針は・・・やっぱり森の中を指してるね」
「大人しく従うとするかの」
ティーを先頭に草木の生い茂る森の中へと足を踏み入れようとした瞬間、周りの草木が後ろに反り立ち道を作り出した。
「すごーい!」
ベルは大喜びだが、ティーとメアリーさんは当然警戒する。
「誘われている感じがしますが、行く他ないですよね」
「一応、罠も警戒しておくんじゃぞ」
と出来た道を進んで行くが、罠も何もなくスイスイと進んで行く。
「ここまで何も無いと、本当に村があるのかも怪しくなってきたね」
「しかし、この草木の動きを見る限り何かしらの魔法の影響がありそうですが・・・」
メアリーさんがそう言い掛けた時、唐突に開けた目の前の景色に目が点になる。
木にはツリーハウスが幾つも建ち並び、魔女と言われてイメージする様な、とんがり帽子を被った人達が歩いていたり、箒に乗って空を飛んでいたのだ。
「パッと見ただけでも2、30人はおるが全員魔女なのか?」
「えぇ、そうですよ」
ティーの言葉に、後ろから知らない声が答えて慌てて振り向くと、とんがり帽子を被った銀髪の10代くらいの少女が立っていた。
「初めまして、お使いに来た皆様。良ければ村の中を案内しましょうか?」
少女は俺達が来た目的を知っているのか、そんな事を言うのだった・・・
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