【番外編】クリスマス
「「メリークリスマース!」」
今日の我が家の食卓には、いつもより豪華な料理が沢山並べられている。
この世界には、当然クリスマスというイベントは無かったが、1週間前に話をしたら皆んなクリスマスパーティーがしたいと言い出したので、行う事になった。
ちなみにクロ達も、普段森の中で暮らしている大量の配下のスライム達とパーティーをするらしく、ドラちゃんもそこに混ざりに行っている。
「おいしそ〜」
ティーが森の中で取ってきた、体長2mの巨大ニワトリのローストチキンを見ながらベルが言う。
「それじゃあ、早速食べようか」
「「いただきま〜す」」
アンさんとリビアさんが作った料理を皆んなで楽しむのだった。
「はぁ〜、お腹いっぱい!」
「私は、まだまだいけますよ!」
お腹いっぱいなオルフェさんと、まだいけると言うシェリー。
「まだ、ケーキも控えてるからね」
俺はそう言う。
「ワタルさん、ケーキの前にアレをしてしまいませんか?」
「確かにそうだね。皆んな、ケーキを食べる前に待ちに待ったプレゼント交換にしよう」
皆んな、待ってましたと言わんばかりに頷いた。
クリスマスらしい事をする為に、1週間前からプレゼント交換をする事を伝えていた。
それぞれが買って来たプレゼントをランダムで回すのも面白いのだが、今回はシークレットサンタという方式にする事にした。
やり方としては、名前を書いたクジを全員で引いて、書いてある名前の人にプレゼントを買うのだ。
誰が誰にプレゼントをするのか当日まで内緒の為、ドキドキだった。
「じゃあ、交換開始ー!」
合図と同時にシエルが俺の前にやって来た。
「プレゼント、渡しに来た」
「シエルが俺のサンタさんだったか」
「うん。それで、何あげれば良いか分からなかったから、これにした」
シエルがそう言って渡して来た物は何かの種が入った袋だった。
「えっと、これは?」
「翼人族の里で育ててる桃の木の種」
「それって、前に貰ったあの桃の?」
「それ。畑いじりしてるから、こういうの好きかなって思ったんだけど、いらなかった?」
「そんな事ないよ。エムネスさんから貰った木は一瞬で成長しちゃったからね。初めてだけど頑張ってみるよ!ありがとう」
「うん、それじゃ」
とシエルは去って行く。
俺もプレゼントを渡す相手の所へと向かう。
その相手はリビアさんだ。
「私を選んだのはコタケ様でしたか」
「そうだよ。それで、プレゼントなんだけど・・・はいコレ」
俺が手渡したのはハンドクリームだ。
「いつも水回りの家事をしてもらってるから、しっかりケアして貰いたいなって思って」
「ありがとうございます・・・うーん、何処かで見た事がある様な気がするのですが気のせいですかね?」
「実は、ノルシェさんに聞いて来たんだ。そしたら、コレをオススメされてね」
「なるほど、だから見た事があったのですか」
「ノルシェさんに聞いたら、あの子達はまだ若いから大丈夫だと思ってるが、肌のケアは若い頃からしないといけないよって言われて、売ってる所を教えて貰ったんだ」
「そうでしたか、では大事に使わせて頂きます」
「これからも色々とよろしくね」
プレゼントの交換も済んだので、他の人達のシークレットサンタが誰かなと見てみる。
〜〜〜〜〜〜
「私のサンタはオルフェ様でしたか」
「そうだよ〜。ヒルズちゃんは、もう渡した?」
「はい、私はリッヒ様にプレゼントを渡しました」
「へー、何あげたの?」
「精霊の国にある、泉の水を入れた瓶です」
「えっ、なんか凄そう」
「ただ、一瞬でどんな怪我や病気も治すだけですよ?」
「だけじゃないよ、めっちゃ凄いじゃん!」
「どうせ精霊が使う事は無いので、10本程差し上げましたが」
「しかも、そんなに・・・リッヒちゃん困惑してなかった?」
「そんな凄いの受け取れないと言われましたが、無理矢理押し付けました」
「ヒルズちゃんもなかなか強引だね。でも、それ聞いちゃうと私の見劣りしちゃうけど・・・はい、どうぞ」
「手袋とマフラーですか?」
「そう!ヒルズちゃんのサイズに合う服とかって無いし、この時期は寒そうだったから、私が作ったんだ〜」
「オルフェ様の手作りですか、とても嬉しいです。精霊の国は年中暖かいのですが、こちらはそうでは無いですからね。それに、精霊にはこういった物を作る文化はありませんので」
「気に入ってくれた?」
「えぇ、とても。ありがたく使わせて頂きます」
「どーいたしましてー」
〜〜〜〜〜〜
「あっ!メアリーお姉ちゃん!」
「もしかして、私のサンタさんはベルちゃんでしたか?」
「うん!」
「オルフェさんには申し訳ないですが、嬉しいですね」
「ママには、肩たたき券あげたから大丈夫!それでね、メアリーお姉ちゃんには・・・はい、お花の冠」
「これは・・・とても綺麗ですね。ベルちゃんが作ってくれたんですか?」
「お花畑に行って、メアリーお姉ちゃんに合う色で作って来たの」
「ふふ、白色の花だとなんだか花嫁の様な感じですね」
「ティーおばあちゃんに魔法も掛けて貰って、100年はその状態なんだって」
「それは驚きですね。折角なので、ベルちゃんに私の頭に載せて貰っても良いですか?」
「もちろん!はい・・・これでオッケーだよ」
「少し照れますね。どうでしょう?似合ってますか?」
「うん、可愛い!」
「ふふ、ありがとうございます。昔は冠を被せられる事がよくあってそれが嫌でしたが、この冠は何回でも被りたいですね。折角なので、今日はこのままで居ましょうか」
〜〜〜〜〜〜
「私のサンタさーん!私のサンタさん、居ませんかー」
「シェリー、そんな声を出さなくても、ちゃんと居るから安心しろ」
「あっ!もしかしてエレオノーラさんがサンタさんですか!」
「そうだ」
「わーい!何をくれるんでしょう?エレオノーラさんなら・・・はっ!もしや、凄く厳しいトレーニングをさせられるとか・・・」
「そんなわけないだろう」
「ですよね!安心しました!」
「本当に調子のいい奴だ・・・まぁ、とにかくプレゼントはこれだ」
「1年間、牧草食べ放題券?」
「知り合いに厩舎を経営している奴がいてな。そこで、牧草を1年間どれだけでも食べて良いと許可を貰って来たんだ。それなりに高級な草を使っているとは聞いたのだが・・・うん?俯いてどうした?」
「わー!エレオノーラさん、ありがとうございますー!」
「うわっ!急に抱きつくな!」
「こんなに良い物をくれるなんてー、そこの牧草食べ尽くして来ますねー!」
「いや、それはやめてくれよ?本当にな、絶対だからな?」
〜〜〜〜〜〜
「うんうん、皆んな楽しそうだ」
「ワタルさん!」
「アリー、交換終わった?」
「はい、オルフェさんに服の生地を差し上げて、リッヒちゃんから子供の為にと絵本を貰いました」
「楽しかった?」
「はい、プレゼントを選ぶ時間も誰が自分のサンタなのかを待つのも楽しかったです!」
「それは良かった。それで、アリーにプレゼントがあるんだけど・・・」
そう言って、俺はアリーに1つの箱を手渡す。
アリーは不思議そうな顔をして箱をあける。
「これは・・・マグカップでしょうか?」
中から取り出したのは、青色と赤色のマグカップだ。
「2人でお揃いのマグカップにしようかなって思って、2個買ったんだ」
「嬉しいです!あっ、でも、私の方は何も用意してなくて・・・」
「気にしなくていいよ。俺が贈りたかっただけなんだから」
「いえ!こうなったら、私もプレゼントをお返しします!」
とアリーがいきなり熱いキスを交わして来た。
「ぷはっ、あの、アリー・・・?」
「そ、そのすぐにお返し出来るのはコレかなと思って」
「嬉しいんだけど、皆んなが・・・」
「おーい!お主ら、そこで何をイチャついとるんじゃ」
「ベルの教育に悪いでしょー」
といつの間にか、テーブルに戻りケーキを切り分けていた皆んなが、こちらを見ながらそう言う。
「あっ、私とした事が、すっかり忘れていました・・・」
「い、急いで戻ろっか」
「は、はい」
2人で顔を赤くしながら席に戻り、アンさんとリビアさんのお手製の直径50cmはありそうな、巨大なホールケーキを全員で食べるのであった。
次回の更新は12月27日で、今年最後の投稿となります。
 




