大掃除
「それじゃあ、皆んなで頑張ってこー!」
「「おー!!」」
俺の掛け声に皆んなが反応する。
年の瀬も近くなり、1年間お世話になった我が家を皆んなでお手入れする事にした。
とは言っても、普段からアンさんとリビアさんが丁寧に掃除をしてくれているので、今日は普段出来ない家具の裏など細かな所を掃除する。
「それでは、エレオノーラさんとリッヒさんは私に付いて来て下さい」
アンさんは2人を引き連れて風呂場を掃除しに行った。
「私達は、家の周りを軽く掃いて来ますね」
メアリーさんとシェリーは庭の掃除だ。
「では、こちらも始めましょうか」
リビアさんの指導の元、俺とルインとシエルはリビングを掃除する。
「妾達はどうするんじゃ?」
残されたティーとオルフェさんがそう聞く。
「お2人はまず、あの汚部屋をどうにかしてください」
リビアさんがそう言う様に、つい最近2人の部屋を覗いてみたら、ティーは魔道具がオルフェさんは試作中の服が部屋中に散らばっていて、足の踏み場が少なくなっていた。
「それは最近ちょっと忙しかったから・・・」
オルフェさんはそう弁明するが、
「忙しくてお疲れなのは分かりますが、ベルちゃんも見ているのでしっかりして下さい」
「ごめんなさい・・・」
「ママ!私も手伝うから安心してね!」
「ベル〜、ありがと〜!」
と言いながらベルを抱きしめてから、2階に上がって行く。
そして次に、リビアさんはティーに視線を送る。
「ほれ、妾の部屋にある物は全部必要な物じゃから多少はな」
「でしたら、尚更片付けて下さい。必要な物でも次からは捨ててしまいますからね」
言い訳虚しく、ティーは撃沈する。
「うぅ、ヴァルナの奴を思い出すのじゃ・・・」
と渋々2階に上がって行った。
これでやっと始められると思ったら、
「あのー、リビア?私は何をすれば良いの?」
と何も指示が無く、ポツンとソファに座っていたアリーがそう言う。
「流石に何もしないのは申し訳ないのだけれど・・・」
妊娠の身を気遣って敢えて何も言わなかったのだろうが、アリーは納得していない様子だ。
「手は十分足りているので休んでいて欲しい所なのですが・・・分かりました。お嬢様には、こちらの鍋の錆び取りをして頂きます」
とソファの前の机に、鍋を10個と錆び取り用のヘラを置いた。
「これは確かにやり甲斐がありそうですね」
「手強い相手ですので頑張って下さいね」
「えぇ、分かったわ!」
アリーは黙々と錆を取り始めて行く。
「それでは始めましょう。まず、ルインさんは天井の水拭きを
お願いします」
「りょーかいでーす!」
ルインは雑巾をフワフワと浮かせて天井を拭き始める。
「私達は家具を動かしていきましょう」
3人で協力して部屋中の棚を動かして、壁との間に隙間を作る。
思っていたよりも埃が溜まっていたので、箒で取ってから雑巾掛けをしていく。
「1年間掃除してない場所だと結構溜まってるね」
「そうですね。ただ、毎日掃除するわけにもいきませんし、こういう時にしっかりやりませんとね」
「やり甲斐はある」
「でも、夏頃にも1回やっておくのも良いかもしれないし、それも考えておこうか」
などと話しつつ掃除に戻ろうとすると、上からガシャーンと大きな音が聞こえて来た。
「ちょっと見てきます」
ルインはそう言い天井をすり抜けて、またすぐに戻って来た。
「なんの音だったの?」
「ティーフェンさんが埋まってました!」
どうやら大量の魔道具が倒れた音だったらしい。
「はぁ、個人の部屋も出来る限り綺麗にしてもらった方が良さそうですね」
それから1時間程経って、終わりも見えて来たので他の人達がどうなっているのか確認しにいく事にした。
まず、外に出るとメアリーさんとシェリーが箒を持って庭に落ちた木々の葉をかき集めている。
「順調?」
「はい、あと4分の1位ですので大丈夫です」
「なら、良かった・・・焼き芋をやるのも良さそうだな・・・」
集めた葉っぱの山を見て思わずそう呟いた。
「芋!食べ物の話ですか!」
シェリーが話に食い付いてきた。
「大抵、茶色の落ち葉でやってるイメージだから出来るかは分からないけど、掃除が終わったらやってみよっか」
「それじゃあ、さっさと終わらせますねー!」
と気合を入れてスピードアップするのだった。
ちなみに、2人と一緒にドラちゃんも落ち葉を集めていたのだが道具が無い為、両手に1枚ずつ葉っぱ持ってトコトコと走り回っていた。
効率は悪そうだが、頑張る姿が可愛いので良しとした。
続いて風呂場の様子を確認しに行こうとしたら、クロ達も自分達が寝ている小屋を綺麗にしていた。
青スライムが魔法で水を出して壁を洗い、赤スライムの火の魔法と緑スライムの風の魔法の合わせ技で乾かしている。
クロと茶スライムは、小屋の屋根でなにやらゴロゴロ回転して土埃やらを取っているようだが・・・茶スライムは分かりにくいがクロは汚れで明らかに茶色に変色しているので、家に入る時はしっかり体を洗ってからと伝えて、その場を後にする。
そして風呂場へとやって来ると、中からドタドタドタと大きな足音が聞こえる。
不思議に思いながら中に入ると・・・
「うおぉぉーーー!」
「はあぁぁーーー!」
とエレオノーラさんとリッヒさんが、ブラシで床を掃除しながら競争していた。
「えっと・・・これは?」
困惑していると、露天風呂のある扉からアンさんが現れてこちらにやって来た。
「あの、この状況は?」
「エレオノーラさんが、普通にやるだけではつまらないからどっちが沢山往復出来たかを競い始めまして・・・」
「それはまた・・・」
「これはこれで早いので良いのですが、2人の熱気で思わず外に出てしまいました」
確かにお湯を沸かしている訳でも無いのに、風呂場は暑くて外に出たくなる。
「2人とも、あんまりアンさんを困らせないでね」
と声を掛けてみたが、あまり耳には入って無さそうだった。
「まぁ、引き続き露天風呂の方を掃除して貰った方が良さそうだね」
「えぇ、そうしておきます」
そう言い露天風呂の方へと戻るアンさんを見送って、俺もリビングへと戻って行った。
〜〜〜〜〜〜
それから1時間後。
「皆んな、お疲れ様ー」
全ての掃除が終わって、全員が集まっていた。
「手強い錆でした・・・」
「ふぅ〜、疲れたのじゃ〜」
「とても良い勝負だった」
と様々な声が聞こえる。
「これで、次の年も気持ち良く迎えられそうだね」
「たまには掃除するのも良いね〜」
「オルフェさんは、日頃からもう少し掃除をしてくださいね?」
「はーい、善処しまーす」
「じゃあ、一仕事終えたし、皆んなで外で焼き芋でも食べようか」
「わーい!芋ですー!」
集めた落ち葉を使って、皆んなで焼き芋を食べるのだった。




