配慮
「アリー、体調はどう?」
妊娠4ヶ月目となったアリー。
今日は聖国に赴いて、オレイユさんに体の調子を診てもらいに行っていたのだ。
「つわりも治って来て、体調も以前の様に落ち着いて来ました」
「良かった。オレイユさんは何て?」
「お腹の子も問題無く成長しているとの事で、これからは食事などの栄養バランスには更に気を遣った方が良いと言われました」
「アンさんとリビアさんにも負担は掛かるけど、色々とお願いする事になりそうだね」
「その事を伝えてみた所、2人もこう言った経験は初めてでどうすれば良いか分からないとの事なんですよね・・・なので、勝手ながら2人の師匠であるノルシェに明日この家に来て貰う様に伝えたんですが・・・」
「全然問題ないよ。確か、オーウェンさんの事も小さい時からお世話してたんだよね」
「母が妊娠した時も、色々とお世話をしていた様ですので心強いです」
「俺も出来る事があったら、ノルシェさんに教えて貰うよ」
そう意気込んで、翌日を迎える。
「はぁ〜、不思議なものだね」
お昼過ぎ、転移でノルシェさんを迎えに行ったアンさんが戻ってくる。
「ノルシェ、お久しぶりです」
「アリシア様、お招き頂いてありがとうございます」
「私達の方が助けらるのですから、むしろこちらがお礼をしないといけませんよ」
「こうして、ウッドフォード家の子を代々お世話出来る事になる私の方が幸せ者ですよ。さて、それじゃあ早速・・・アン、リビア!」
「「はい!」」
ノルシェさんに呼ばれた2人は、背筋を伸ばして直立する。
「妊娠中に積極的に摂りたい栄養素が何か分かるかい?」
「栄養素と言うとビタミンとかでしょうか?」
アンさんが答える。
「うんうん、それも大事だな。リビアはどうだ?」
「カルシウムですか?」
「それも大事だな。結局のところどれも大事な栄養素だから取り入れた方が良い」
ノルシェさんの言葉を、2人はメモをしていく。
「その大事な栄養素の中でも、特に言われているのが葉酸だ。これは、赤ちゃんの体の発育の為にも重要なんだ」
「葉酸はどんな食材に多く含まれているんですか?」
「ブロッコリー、アスパラガスの緑色の野菜だ。あとはイチゴにも含まれているから、間食の時に食べるのもアリだな」
「なるほど、肉類には含まれていないのですか?」
「葉酸を多く含んでいるのは豚のレバーなんだが、レバーには妊娠中に過剰に摂取したら駄目な栄養素も多く含まれているから、あまりオススメはしない」
と3人は、かなり本格的な話をしていた。
それを側から聞いていたアリーは、
「気を違う事が多くて滅入っちゃいそうですね」
「世の中の妊婦さんはこんな大変な事をしてたんだね」
前世では、そんな経験も無く知らなかったので頭が下がる思いだ。
「私も頑張りませんと!」
「とりあえず、食事に関してはこんな感じだな」
といつの間にか話が終わっていた。
「次は生活に関してだが、アリシア様は今は運動はされていますか?」
「えぇ、毎朝家の周りをジョギングしていますよ?」
「それは結構、そのまま続けて下さい。軽い運動は出産の際の体づくりに丁度良いのですよ。ただ、あまり激しい運動は赤ちゃんに影響が出るので、いけませんよ」
「分かりました」
「それから、この家を初めて見ましたがお2人の寝室は2階にあるのでしょうか?」
「全員の寝室は2階にありますよ」
ノルシェさんの言葉に俺はそう答える。
「それはいけませんね。今後、お腹が大きくなるにつれて足元が見えにくくなったりと不都合があります。その様な状態で階段を上り下りするのは大変危険です」
「確かにそうですね・・・」
言われて初めて気付いたが確かにそうだった。
今の事に手一杯で、これからの事は頭に無かった。
「出来れば、1階にも寝れる様なスペースが欲しい所ですが・・・」
難しい要求だろうと思ったのか、申し訳無さそうな顔をしながらノルシェさんは言ったが、
「分かりました。すぐに俺達の寝室は一階にします」
そう返事をした。
「言っておいて何ですが、そんな事出来るのでしょうか?」
「ワタルさんは、特殊な装備を持っているのでそれを使えばすぐに家も建てられるんですよ」
「それはまた何とも不思議な物を・・・先程の転移を体験していなければ、信じられないと言いそうです。それでは、この家もコタケ様が?」
「初めの頃はもっと小さな家だったんですけど、人が増えていくにつれて増改築を繰り返してますね」
「そうでしたか、木をふんだんに使っていて、とても落ち着く良い家だと思います」
「そう言って貰えると嬉しいです。それで、ノルシェさん。この家を見て他にも直す点とかありませんか?」
「そうですね・・・ザッと見た感じ他に気になる所はありませんね。あと気をつけるべき点はお風呂とかですかね?滑りやすく危ないので、クラニー様が妊娠中の際には必ず一緒に入浴していました」
「確かにお風呂場で何かあったら危ないですね。それならアンさんとリビアさん以外の皆んなにも手伝って貰えそう」
「皆さんの手を煩わせるのも申し訳ないですが、私も誰か一緒に居てくれた方が安心できますね」
「じゃあ、後で皆んなにお願いしてみよっか」
「えぇ、そうしましょう。それでノルシェ、他には何かある?」
「そうですね・・・」
とその後もノルシェさんのチェックの元、アリーに負担が掛からない様に指導を受けるのだった。




