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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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ルイン:幽霊の集会

皆が寝静まった夜中の2時、とある街にて・・・


「真夜中の集会の始まりだぁー!」


「「いえーい!」」


半透明の様々な種族が集まり騒いでいた。

騒ぐと言っても、この場所に集まっている者達は全員が幽霊で街には一切声が響いていない。


「今回でこの集会も、めでたく50回を迎えたぞ」


オォーと歓声が上がる。

不定期で行われているこの会は、必ず夜の2時から始まる。

私は偶然この街にて、幽霊が集まっているのを目にして、40回目から毎回参加している。


「ルインちゃん、久しぶりー」


「ルカちゃん、久しぶり」


ここで出会った茶髪の人間の幽霊の女の子ルカと挨拶を交わす。

彼女は18歳の時に病気で亡くなったらしいが、まだまだ生きたいと言う未練が残り幽霊になったようだ。


「最近はどう?変わった事とかあった?ルインちゃんって、生きてる人達と暮らしてるんだよね」


「そうだよー。変わった事って言ったら・・・あっ、ペガサスが新しく暮らす様になったんだよね」


「ペガサスって、あの羽の生えた馬のこと!?」


「そうそうそれそれ、しかも人型に変身も出来るんだよ」


「何それ不思議〜」


と久しぶりに話していると、


「皆んな、今日は新しいメンバーが加わるから紹介したい!それが・・・この子だ!」


集会のリーダーである獣人の幽霊が、10歳位の可愛らしい黒髪の女の子を紹介した。


「なんだー?お前の子供かー?」


「幽霊が子供を作れる訳ないだろー!」


周りが騒ぎ立て、その獣人は笑いながらそう言う。


「この子はこの街で見かけたんだ。まだ幽霊になったばかりで、周りから気付いて貰えずに戸惑っていた所を私が見つけた。ほら、皆んなに挨拶だ」


リーダーの後ろに隠れていた、女の子が前に出てペコッとお辞儀をする。


「すまない、少し人見知りでな」


「それで、その子が幽霊になった原因は聞いたのか?」


この会に初めて参加する人達は、なぜ死んで幽霊になったかを包み隠さず話すのだ。


「この子の話によると、両親を亡くして孤児院に預けられていたそうなのだが、この街の領主に使用人として買われたそうだ。だが、給料も貰えず碌なご飯も出てこない様な待遇でいつの間にか死んでいたそうだ」


「なんと・・・」


「こんな小さな子を!」


リーダーの話を聞いて皆、憤慨している。


「私も少し調べてみたが、どうやらこの子の話は本当な様で、他にも幾つかの黒い噂があった。そこでだ!私はこの街の領主に痛い目を見て貰おうと思うのだが皆はどう思う?」


「賛成だー!」


「お灸を添えてやらなきゃな」


「よし!参加する者は私に付いて来てくれ!」



「ルインちゃん、どうする?」


「私も付いて行こうかな。あんなに小さな子に酷い事をするなんて許せないし」


「だね!」


と私達も後に続いて、領主の館への幽霊の行進が始まった。


〜〜〜〜〜〜


「スー、スー」


ユルサナイ、ユルサナイ


「スー、スー」


ユルサナイ、ユルサナイ


「んん?なんだ?」


ベッドで気持ち良さそうに寝ていた年老いて太った領主が、私達の発する声で目を覚ました。


ユルサナイ、ユルサナイ!


「な、なんだ!?」


自分以外に誰もいない部屋から聞こえる声に領主は慌てる。


ユルサナイ!


「誰だ!出てこい!ワシを誰だと思っておる!」


ベッドから立ち上がり、明かりを手にした瞬間に女の子が一瞬だけ姿を現してすぐに消える。


「ヒィィ!こ、こんな事をしてただ済むと思うなよ!」


更に私達は追い打ちをかける様に、部屋中の物をガダガタと鳴らす。


「衛兵!衛兵は何処にいるんだー!」


そう叫ぶが衛兵達は、先に気絶させているので誰もやって来ない。

そしてそこに、再び女の子が俯いて領主の目の前に現れる。


「な、なんだ貴様は!」


ユルサナイ


「なんだと?」


ユルサナイ!


女の子はそのままバッと顔を上げると、


「ギャー!」


領主は悲鳴を上げる。

それもそのはず、女の子の顔は他の幽霊達の力で血まみれになっているのだから。


「誰か助けてくれー!」


領主は裸足のまま館を抜け出して、夜の街を駆けて行った。



「ハッハッハッ、大成功だったな」


参加した幽霊達がハイタッチをしている。


「どうだ?少しは気持ちも晴れたか?」


リーダーの問いに女の子は頷く。


「それは良かった。だが、消える気配が無いという事はコレが未練だったという事では無いらしい」


幽霊は基本的に未練が無くなれば消えるのだが、女の子にその兆候は無い。


「私、どうなるの?」


「これからは幽霊として暮らしていく他無いな」


そう言われて落ち込んだ表情をする。


「気に病むことは無い。新しい人生のスタートだと思えば良いさ!幽霊の生活は意外と楽しいものさ。食事も睡眠も要らないし色んな所に自由に行けるからな!」


それを聞いて先程よりも明るい表情をする。


「ただし、これだけは約束してほしい。今日みたいな人を驚かせる事はやり過ぎない事だ。今回は悪い奴をやっつける為に行ったが、何度もやり過ぎると悪霊となってしまうんだ。悪霊になれば自我を失い、危険視され冒険者達に討伐されてしまう。それは嫌だろう?」


女の子は縦に首を振る。


「だから、人には迷惑を掛けない生活をする事だ。それさえ守れば何をしたって自由だぞ!分かったかな?」


「うん!」


「よしよし、良い子だ。初めのうちは1人だと不安だろうから私達と一緒に行動すると良い」


リーダーに懐いた女の子は、しばらく行動を共にするのであった。


〜〜〜〜〜〜


数日後。


「こんな事が・・・世の中何があるか分かりませんね」


「どうかしたの?」


新聞を読んでいたアリシアさんがそう呟いて、コタケさんが何があったのかと問う。


「ある街の領主が幽霊が出たと錯乱したそうで、館に調査が入った様なのですが、そこから沢山の不正や犯罪行為の証拠が出て来てしまったそうで捕まったそうなんです」


「へぇ〜不思議だね」


「しかも、その領主は10歳の使用人の女の子を餓死させて放置していたとか」


「それは酷いね」


「まだ、小さな女の子にこの様な仕打ちをしていたなんて怒りを覚えます。この子に少しでも死後の安らぎがあれば良いのですが・・・」


「その子なら大丈夫ですよ!」


2人の話を聞いていて思わずそう口走ってしまい、口を手で抑える。


「え?ルイン、その子の事知ってるの?」


「い、いえいえ知らないですよ〜」


「でも、今・・・」


「そうであれば良いなぁって思ったんですよ!」


うんうんと1人で頷きながら早口でそう言う。


「アリー、さっき幽霊がどうとか言ってたよね?」


「えぇ、そうですね」


「んー?」


2人が目を細めて私を見てくるが、ソッポを向いて知らん振りをする。


「まぁ、良いや。あんまりやり過ぎない様にね?ルインの身にも何があるかもしれないんだから」


「それは大丈夫ですよ!幽霊仲間と一緒に・・・って何でもありません!」


思わずまた口走ってしまいそうになり、急いで口を閉ざす。

2人はそんな私を見てかすかに笑い、それ以上は何も言わないのでした。


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