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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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オルフェ:仕事

「いらっしゃいませ」


店内に響き渡る店員の声が、奥のスタッフルームまで聞こえて来る。


「ひまねぇ〜」


「そうだね〜」


私の目の前に座る、体はマッチョな男だが心は女の店員ヒューゲルが、両手で頬杖をつきながらそう言う。


「コンテストで優勝した後は、お客さんも一気に押し寄せて来てたけど・・・今は全然だからね」


「あの後、気に入ってくれたお客さんは定期的に来てくれる様になったけれど、こうも暇だと嫌になっちゃうわよね〜」


「今日は平日だから仕方ないよ」


「店長〜」


ヒューゲルとぐだぐだと喋っていると、もう1人の店員ナミアがやって来る。


「どうかした?」


「お客さん、何も買ってくれず帰っちゃいました〜」


「またか〜、何か理由とか言ってた?」


「小声でちょっと高いわねって言ってるのが聞こえました」


「うーん、そっかー」


ターゲットの客は女性で普段着から仕事着がメインなのだが、素材にこだわっており価格が少しお高めなのだ。

一般的な服の価格は1着で大銅貨1、2枚の所、私の店では最低でも大銅貨4枚近くの価格となり、高い物では銀貨4、5枚となる。

ならば安い素材を使えば良いと思うが、そこは妥協はしたくないので考えていない。


「これでもギリギリのお値段なんだけどね〜」


「お客さんを呼び込む良い方法はないですかね?」


「これはもうあれね!ワタシがオルフェちゃんの服を着て街を歩くしかないわね!」


「「それは止めて!!」」


「なによ〜、2人してひどいじゃな〜い」


ヒューゲルはぷんぷんと怒っているが、2人して止めるのには理由がある。


ある時、1日だけヒューゲルに店内で接客をして貰ったのだが、お客さんが足を踏み入れた瞬間にヒューゲルを見て一目散に逃げて行き、その日は客数が0だったのだ。

今は常連さんも少し出来て、その人達はヒューゲルに慣れてくれたが、初めてのお客さんは怖がってしまうので、なかなか接客が出来ていないのだ。


「でも、本当に何か考えないとお店潰れちゃうよね」


「え〜、それはいやね。ワタシ、オルフェちゃんの作る服は大好きだし」


「嬉しい事言ってくれるじゃん」


「私も嫌です!折角見つけた働き口は失いたく無いので!」


「ナミアちゃんは正直だね・・・」


そんなこんなで、まぁまぁの売り上げで閉店時間となり店を閉めて家に帰るのであった。


〜〜〜〜〜〜


「ただいま〜」


「あっ、お帰りなさい!ちょうど、ご飯が出来たところなのでダイニングに来て下さいね」


「は〜い」


アリシアちゃんが出迎えてくれて、言われた通りにダイニングに向かう。


「「おかえりー」」


「ママ、おかえりー!」


「ただいま〜、お腹空いたよー」


「沢山作ったので、いっぱい食べてください」


「それじゃあ、いっただっきまーす」


とアンちゃん達が作った絶品料理をお腹いっぱいになるまで食べるのだった。



「プハーッ!やっぱり働いた後のお酒って最高だねー!」


食後はリビングで晩酌をする。


「ほどほどにしなよ?」


「わかってるよ〜」


コタケ君の言葉にそう答える。


「ところで、お店の方は順調?」


「う〜ん、コンテストの後とかは大盛況だったんだけど、それが落ち着いたらボチボチって所かな」


「そうなんだ」


「服を作るのは好きだし仕事も案外楽しいけど、資金面とか色んな事を考えないといけないから結構大変だよね」


「お店を経営してる人って、本当に凄いと思うよ」


「だよねー!今もさ、客足が伸び悩んでて売上も伸びにくくなってるから、何か良い方法がないか考え中なんだ」


「服屋で呼び込みか〜」


「コタケ君の前の世界で参考になる様なものない?」


「服には無頓着だったしな」


「え〜もったいない。オシャレは大事だよ」


「今はオルフェさんが合わせて作ってくれるからね」


「私のセンスは完璧だから!」


「それなら、オーダーメイドを始めるとかは?」


「それも考えたんだけど、売上が伸び悩んでるのが価格が高いからなんだよね」


「なるほどね、オーダーメイドだと更に高くなるイメージあるもんね」


「そうなんだよね〜」


「う〜ん、それなら古着を取り扱うのはどう?」


「ほうほう?」


「いらなくなった服を買い取って、オルフェさんが少し手直ししてまた売りに出す。これなら材料費も全然掛からないし値段も抑えられて良いんじゃない?」


「確かにそれは良い案かも。でも、他人が着た服を着たいって思うものなのかな?」


「安かったら意外と気にしないんじゃないかな?それにキチンと洗ってあれば大丈夫だし。逆に新品じゃないとダメだけど高くて買えないって人には、古着を持って来てくれたら割引するとかそういう事も出来ると思うよ」


「そういう事も出来るんだ!ありがとう!ちょっと考えてみるよ」


そう言って私は部屋へと駆け込み、詳しい事を決めていった。


〜〜〜〜〜〜


それから数日間、張り紙をしたりビラを配ったりしていると、初めてやって来る女性客が、


「あの〜、すみません」


「いらっしゃいませ。何かお探しでしょうか?」


「紙を見て、いらなくなった服を売りに来たんですけど」


そう言ったのだった。


「ありがとうございます!それでは、早速拝見しますね」


服の詳しい状態をヒューゲルと確認していく。


「これは生地に痛みも少ないから状態は良さそうね。こっちのは虫食いがあるから減点ね」


一般的な服の新品の購入価格を踏まえて、1回の査定で大銅貨1枚と銅貨5枚を最低保証としている。


「お待たせしました。査定した結果、合計5着で大銅貨3枚になります」


「まぁ、そんなに貰えるのね」


「このまま引き取りでよろしいでしょうか?」


「勿論よ。元々、捨てる物だったんだから」


「ありがとうございます。それではこちらお代になります。また、お越しくださいませ」


お客さんを見送り、続け様に買い取った服の補修をしていく。

1番状態の良い物で、ほぼ新品に近かったので手直しの必要も無く買い取った価格よりちょっと高い位の値段で売るが、それでも新品を買うよりも安い。

状態の悪い物は、新たな素材で補修をするのでその分の価格を上乗せする。


そんな感じで更に数日が経つと、買取と古着販売の評判を聞いたのか多くのお客さんが来る様になった。

当然買い取るだけでは赤字だが、やって来る人からすればクローゼットに空きが出来るので、ついでに何か買っていこうとなるみたいで、古着や私が作った新品の服を売ったお金を元手に購入したいってくれるのだ。


「急に大盛況になって来たわね〜」


作業場で服の補修をしているヒューゲルがそう言う。


「想像以上に効果覿面でビックリしたよ」


「このまま、もっと大きなお店になるんじゃないかしら」


「うーん、どうだろう?コタケ君が言うには他も真似し出して、他店より高値で買い取りますって言う所も出て来るから、気を付けた方が良いって言ってたしね」


「確かにそれはありそうね」


「だからって今すぐ何かしようって思い付く訳じゃないけど、こうしたら良いとかあったら、遠慮なく言ってね?」


「分かったわ」


「店長〜!助けて下さ〜い!」


「今行くー!」


と忙しくはなったが、自分のお店が繁盛している事が嬉しくて頑張ろうと思えるのだった。

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