アリシア視点④
私達は探索を終えて、無事に拠点へと戻って来ることが出来ました。
その日は、夕食を食べてそのまま自室へと戻り、今日の事を思い出していました。
「コタケ様には危ない所を助けて貰いましたね・・・」
魔物に襲われそうになった私を、危険を顧みず助けて下さったコタケ様には感謝しきれませんでした。
「それにしても、助けてくれた時のコタケ様、格好良かったなぁ・・・」
まるで物語にある様な、ピンチのヒロインの所に颯爽と駆けつけて助けてくれる王子様の様で、助けて貰った時の事を思い出すだけでも顔が熱くなりました。
そんな事を考えていると、その日はいつの間にか眠りについていました。
翌日、疲れからかいつもより遅い時間に目を覚ましました。
寝起きのままダイニングの方へ行きました。
そこには、エレオノーラがテーブルにつき、キッチンの方にはアンとリビアがいました。
「おはよう、エレオノーラ」
「おはようございます、アリシア様。今日は珍しく遅めの起床ですね」
「えぇ、昨日の疲れが溜まっていたのか今日はいつもより多く寝てしまいました」
「まぁ、昨日は色々とありましたので仕方がないですよ」
「ところで、コタケ様の姿が見えないのですが、彼もまだ起きてきてないのですか?」
「コタケ殿なら、朝食を取った後、昨日得た野菜の種を植えるための畑づくりをしていますよ」
探索の際に、アンとリビアが野菜の種を回収していたみたいで、拠点内で安全に食料を得るための畑を作ろうと昨日の夕食の際にコタケ様がおっしゃっていたのですが、それをもう作り始めていたみたいです。
「昨日の事もあってお疲れの筈なのにもうお仕事をなさっているのですか」
「そうですね、コタケ殿は働き者で好感が持てますね。それに昨日お嬢様の危ない所を助けて頂いた恩もありますので、初めに魔族と疑っていた自分が恥ずかしいです」
「そういえば、エレオノーラは初めて会った時にコタケ様を魔族と言っていましたね。でも本人もそこまで気にしてはないと思いますよ」
「そうだと良いのですが・・・」
「それと、エレオノーラに相談なんですが、昨日助けて頂いてからコタケ様を見ていると胸の鼓動が早くなるんです・・・」
「!」
「どうやら私、コタケ様のことが好きになったみたいです」
「それはまたいきなりですね・・・」
「森に来る前にあんな事があって辛い気持ちになっていましたが、コタケ様は会った時から優しくして下さって、さらには命懸けで助けて下さったのですよ、好きにならないわけがありません」
「じゃあ、お嬢様はこれからどうなさるのですか?」
「ひとまず、この思いを今夜コタケ様に伝えようと思います」
「そ、そうですか・・・ご健闘お祈りいたします」
「はい!どのような返事を頂いたとしても、まずはこの思いを伝えないと始まりませんから」
そして、その日の夜、コタケ様は畑づくりで少し疲れたとの事で早めに自室へと戻られました。
私は意を決して、コタケ様の部屋の前までやってきました。
一息ついてからコンコンとドアをノックすると、コタケ様がドアを開きました。
私が、少しお話ししても大丈夫かと確認をすると、快く受け入れて下さり、お部屋の中でお話しする事になりました。
お互い椅子に座り、用件は何かと聞かれ、思いを伝えようとしたのですが、いざとなると緊張して中々言い出す事ができませんでした。
すると、コタケ様が歯切れの悪い私の様子を見て、私達がこの拠点を出て別の国へ向かうのかと言いました。
確かに当初は、魔の森で少し滞在してから辺境の地へと向かう予定でしたが、今ではこの場所から離れたくはありませんでした。
(しっかりと思いを伝えませんと!)
私は、一度深呼吸をはさみ、
「あの!コタケ様!私と結婚して下さいませんか!」
と自分の思いを伝える事ができましたが、コタケ様は困惑した様子でした。
それを見て、私がすっかり弱気な発言をしてしまった所、コタケ様が私をどういう風に思っていて下さっていたかを言って下さり、私には自分よりもっとふさわしい人がいるのでは無いかと言いました。
(そんな!コタケ様の様な方は他にいません!)
そう思い、この短期間の間でどれだけ私達が救われたかを伝えました。
すると、コタケ様も私に気が無いというわけではなかったようですが会ってから日も浅いとの事で、婚約という形で、まずはお互いの事を知っていこうと提案をなされました。
私自身、婚約には良い思い出はありませんでしたが、せっかくのコタケ様からの提案なのでそれを受け、今までよりも深い関係になることができました。
(コタケ様も私の事を気になって下さっていたのですから、これからしっかりコタケ様の心を射止めていきませんと・・・)
こうして、この日はこれで部屋に戻る事になったのですが、帰り際にお互いの名前の呼び方を変えようと私から提案し、私はコタケ様の事をワタルさんと呼び、彼は私の事をアリーと呼ぶことになりました。
いきなり、呼び方を変えるのは少し気恥ずかしかったですが、それと同時に親密な関係になった事を実感できてとても嬉しかったです。
その後、私は自分の部屋に戻らずにエレオノーラの部屋へと向かいました。
「エレオノーラ!私、ワタルさんに思いを伝えてきました!」
「そのご様子だと、結果は良かったみたいですね。コタケ殿の呼び方も変わっていますし」
「えぇ、そうなんです。婚約という形ではありますが、お付き合いする事になりました」
「婚約ですか・・・コタケ殿に限ってあのような事は無いと思いますが・・・」
「エレオノーラが言いたい事はわかります。私も良い思い出はありませんが、それでもコタケ様が提案して下さったのですから、それを受けないわけにはいきません!」
「そうですね、ところでお嬢様はなんと言って思いを伝えたのですか?」
「それはですね、私と結婚をして欲しいとお伝えしました」
「それはまた、男気溢れる言葉ですね・・・」
「そうですか?これが普通では無いのですか?」
「まぁ、貴族社会の中では殆どが結婚前提で話が進むので、それが普通ではあるのですが、平民の中ではまずお付き合いしてから、どちらかがプロポーズをして結婚というのが普通になのです」
「あっ!もしかしてコタケ様があの時困惑していたのは・・・」
「まぁ恐らく、いきなり結婚を申し込まれたからでしょうね・・・」
「そ、そうですか・・・それを聞いたらなんだか恥ずかしくなってきましたね・・・」
そうして、その夜は嬉しさのあまりエレオノーラと色々とお話しをしていたら、いつの間にか疲れて眠ってしまっていました。
これにて、アリシア視点は一旦終わりになります。
次回からは、また本編進めて参ります。
 




