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第二の人生を得たので、自由に暮らしていこうと思います  作者: コル


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エルフの町

ある日の午後、我が家に勇者のアイラさんがやって来た。


「いらっしゃい。アリーに用事?」


「コタケ様、お久しぶりです。今日はアリシア様ではなく、リッヒさんに用事があるんですが今大丈夫でしょうか?」


「呼んでくるから、リビングで待っててね」


アイラさんを招き入れて、2階へリッヒさんを呼びに行く。


「すみません、お待たせしました」


リッヒさんと戻って来ると、アイラさんはアリーと話していた。


「あ!リッヒさん、急にお呼びして申し訳ございません」


「いえ、今日は特にする事も無かったので大丈夫ですよ。それで、私に用事があるとの事ですが?」


「実はリッヒさんに、エルフの町までの案内をして欲しいのです!」


「案内ですか・・・ちなみに町の名前は?」


「リントルという町です」


「なるほど・・・あそこには2、3回行った事がありますが自信が無いですね」


「そこってどんな町なんですか?」


「リントルはエルフの町の中でも大きい方で、フォリウスと言う森の中にあるんですが、その森全体に方向などを惑わせる魔法が掛かっていて、迷いの森とも呼ばれているんです」


「それで、アイラさんはリッヒさんに助けを求めに来たと」


「はい、その森はエルフの案内が無いと通り抜けられないと聞いていて、本来であればリントルから使者が来る予定だったんですが急遽来られなくなったみたいで、リッヒさんならば案内出来るかなと思ったんです」


「私も2、3回しか行った事が無いので、正直案内出来るかは分からないですね・・・」


「そもそもアイラは、エルフの町に何をしに行くのですか?」


「何でも人間とエルフが戦争をしていた時代に、エルフの町から盗まれた宝物を返しに行く命を受けたのです」


「それは重要ですね」


「・・・そう言う事でしたら、何とかしてみましょう」


「本当ですか!ありがとうございます!」


とアイラさんは深々とお辞儀をした。




それから数日後のお昼過ぎ、俺は森の目の前にいた。


「それでは、今からフォリウスの中に入りますので皆さんはぐれない様に気を付けて下さい」


「よろしくお願いします!」


「迷ったら森全体を焼き尽くせばオッケーなのじゃ」


「いや、絶対にやめてね?」


「冗談じゃ、多分な」


今回、案内役のリッヒさんに加えて移動兼護衛役のティーとリビアさんが付いて来ている。

宝物はエルフの町の長に渡すのだが、それは到着した翌日になるらしくお世話係として付いて来て貰ったのだ。


「それじゃあ、出発します」


リッヒさんを先頭に森の中に入って行く。

魔の森よりも暗くは無いが、普通の森とは違って何かがいる様な不思議な感覚があった。


「俺、エルフの事ってあんまり知らないんですけど、今から行く町ってどれくらい大きいんですか?」


「私達が普段の買い物で使う街よりも小さいですね。規模としては、1000人いるかどうかと言った感じですね」


「それで大きい方なんだ・・・」


「そもそも、エルフの人口自体が少ないですからね。ちなみにリントルにいるエルフの殆どは、皆さんが1番初めに想像する様な金髪で色白の美形の者達です」


確かにエルフのイメージはそちらが強い。


「ダークエルフ以外にも、違った見た目の方達もいるのですか?」


とリビアさんが質問する。


「そうですね、人間と同じ様にエルフも住んでいる場所によって見た目が異なっていて、スノーエルフと呼ばれる真っ白な肌と髪を持つ寒い地域に住んでいる者達など様々ですね」


「なるほど。それから、これは本で読んだ知識なのですがエルフは世界樹を信仰しているとか?」


「世界樹?」


初めて聞いた単語で聞き返した。


「世界樹とは、この世界を支えているとされる大きな樹です。世界の中心の下で世界の始まりからずっと支えていると言う伝説があるのです。真偽は分かりませんがね」


とリッヒさんが説明してくれる。

前の世界にも似た話があった様な気がするが、この世界には魔法などがあるので本当に存在しそうな気がする。


「エルフはこの世界樹を神と見立て信仰しています」


「と言う事はリッヒさんも?」


「私達ダークエルフは自然の恵みに感謝しつつも特に信仰はしていませんでしたね。人間でも、信徒である者とそうでない者がいる様にエルフもそうなんです」


「なるほどの〜、エルフの事を学べたのは良いのじゃが・・・お主、道に迷っておらんか?」


ティーがいきなりそんな事を言った。


「っ、はい、迷いました・・・」


「さっき妾が付けた筈の印が、またあるんじゃ」


そう言って指差した木にはバツ印が付けられていた。


「すいません、案内を引き受けたにも係らず迷ってしまって・・・」


「いえ、リッヒさんは悪くありません。元はと言えば、私が無茶なお願いをしたのが悪いんです」


とアイラさんが否定する。


「それでどうしましょうか?ここから抜け出せないとなると、ヒルズさんの転移で一度家に帰りますか?」


リビアさんは落ち着いてそう言う。


「もしくはここ一帯を焼き払うかじゃな」


「いやいや、それは無しだからね?」


「じゃが、帰るのも面倒じゃろ」


そうやって悩んでいると、


『こよ・・・人の子よ・・・』


と何処からとも無く、知らない声が頭に響いてきた。


「何これ?皆んな聞こえる?」


「どうしたんですか?」


「頭の中に声が・・・」


他の人達には聞こえていない様で、不思議そうな顔をしている。


『人の子よ、私の声に従うんだ』


「なんか自分の声に従えって言われてるんだけど、どうする?」


「何かの罠かの?」


「もう迷っている訳ですし、罠に嵌める必要も無いのでは」


「もしかしたら、この森に魔法を掛けている精霊の声かもしれません」


とリッヒさんが言った。


「迷っている私達を案内しようとしているのかも・・・」


「じゃあ、とりあえず声の通りに進んでみよっか」


『右に進みなさい』


案内の通りに先を進んで行く。

しばらくした所で、


『あとは左に曲がって真っ直ぐ進めば到着します』


と言われて進み、草木を掻き分けた先から太陽の光と共に町が現れた。


「本当に着いた・・・」


と皆んなでポカンとしていた。


「ここは確かにリントルの町ですね。やはり、コタケさんに聞こえていたのは精霊の声で間違いなさそうです」


「でも、何で俺だけに?」


「コタケさんは、ヒルズさんと契約していますし精霊王と面識もあるので他の精霊からもある程度認識されているのでしょう」


「そう言う事か・・・もう声は聞こえないから、ヒルズを通して助けてくれた精霊にお礼でもしとこうかな」


「それが言いと思います」


気を取り直して、俺達は町の中を進んで行く。

家は木材で出来ており、町の中にも沢山木々が生えているので自然を重んじている事が分かる。

町の中は当然ながら、エルフしか歩いておらず金髪で美形の男女達が珍しそうにこちらを眺めている。


「凄い注目されていますね」


「商人以外で入って来るのが珍しいのでしょう。それに、ダークエルフである私がいるのも珍しいので」


注目されたまま、この町で1番大きな建物へと向かった。

どうやらそこが長の家らしいのだが、今日一日不在にしているらしく、客室で一泊する事になった。

4人は大部屋で、俺は小部屋に通される。


「コタケさん、今から夜ご飯をこちらの部屋に運ぶみたいなので来て貰っても大丈夫ですか?」


しばらくしてから、リッヒさんに言われて大部屋にお邪魔したのだが、テーブルの上に置かれていた食べ物は野菜や木の実、果物だけだった。


「もしかしてこれが夜ご飯?」


「これが、エルフの基本的な食事なんです。普段はこういった物を食べて、祭りや祝い事の時だけ肉を食べるんです」


「そうなんだ・・・なんか、ティーとアイラさんのテンションが低いみたいなんだけど?」


「夜ご飯に肉が無いことがショックみたいだった様です」


「これじゃあ全然足りんのじゃ」


「今から獲物を仕留めに行っても良いですかね?」


なんて2人が言っていると、


「もし良かったら、お肉食べますか?」


とリビアさんが言ったのだ。


「お主、肉を持っておるのか!」


「えぇ、エルフの食事の事を耳にした事があって念の為と思いマジックバックの中に食料や調味料を入れて来ました。キッチンも借りられるとの事なので良ければ何かお作りしますよ?」


「「お願いします・するのじゃ!」」


「コタケ様とリッヒさんはどうされますか?」


「俺もお願いしようかな」


「私もお願いします」


「かしこまりました」


そう言って、リビアさんは部屋から出て行く。


「いや〜、やっぱり旅のお供に優秀なメイドは必須じゃな」


「流石、アリシア様専属のメイドさんです!」


さっきとは一転して元気になった2人は、リビアさんを褒めまくった。

しばらくしてから、リビアさんは肉料理を持って来たので夜ご飯を食べ始めたのだった。


「それじゃあ、また明日」


ご飯を終えて、自分の部屋に戻る。

特にする事も無く暇だったので、窓から外の景色を眺めた後、風呂場で体を洗って、その日はそのまま休みに入るのだった。

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