パーティー
授与式を終えて、部屋で過ごしているとパーティーの時間が近づいてきたので、別の衣装に着替えて会場へと向かう。
会場と言ってもさっきまでと同じ謁見の間を使用するらしい。
中に入ると長テーブルと円形のテーブルが並んでおり、長テーブルの方は料理が沢山並び、そこから各自皿に盛り付けて、円形のテーブルに置いて話したりしていく立食式だ。
既に、他の人達が集まっている。
「わぁー、おいしそー!」
会場に入るなり、匂いに釣られてベルが長テーブルに一直線に駆け、一緒にオルフェさんが後を追う。
「お2人とも走らないで下さい」
リビアさんが2人の世話をする為に追いかけて行く。
「あの2人、はしゃぎおって」
「ティーは慣れてる感じだね」
「まぁ、妾は国でも色んなパーティーに出ておったしな」
「ワタルさん、陛下が入室されましたので挨拶にお伺いしましょう」
といつの間にか、国王と王妃がやって来て玉座に座っていた。
「うん、分かったよ。皆んなは好きな様にしててね」
俺とアリーは2人で国王の元に向かう。
「おぉ、2人ともよく来てくれた」
「この度は、お招き頂きありがとうございます」
そう言って跪く。
「うむ、まずは楽にしてくれ。此度のパーティーは新たな貴族の誕生を祝う為の物なのだから」
「ありがとうございます。それに、アリーの為に色々として下さったみたいで、大変助かります」
「なに、私達がしたかったからしたまでの事だ。それにアリシアには、今まで迷惑を掛けてきたからな」
「陛下、その話はもう終わった筈ですよ」
とアリーが言う。
「はは、すまないな。ともかく、コタケ殿がアリシアの夫になった事は喜ばしい事だ。それの祝いも含めて今日は楽しんで行ってくれたまえ」
国王への挨拶を終え、皆んなの元に戻ろうと道すがら、
「コタケ殿!」
と不意に後ろから声が掛かって振り返ると、金髪の中年の男女が立っていた。
見た事無い顔だが、女性の方は誰かに似ている様な気がする。
するとアリーが、
「ウェルバーン様では無いですか、お久しぶりです」
と言った。
「アリーのお知り合い?」
「はい、こちらはウェルバーン伯爵夫妻です」
「初めまして、ノア・ウェルバーンと妻のカエラ・ウェルバーンと申します。この度は、叙爵おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「以前、娘もお世話になった様でその時もお礼もと声を掛けさて頂きました」
「娘・・・?」
俺が分からず少し戸惑っていると、アリーが少し笑いながら、
「ウェルバーン夫妻は、フランのご両親なんですよ」
「あっ!」
誰かに似ていると思ったのはフランさんだった様だ。
「いえ、こちらこそフランさんには以前お世話になりました」
「ところで、フランは今日来ていないのでしょうか?」
「えぇ、娘も来たがっていたのですが仕事が忙しくて来られなかったのです」
「ふふ、悔しながら仕事をしているフランの姿が目に浮かびます」
「はっはっは、確かにそうですな!今後とも娘共々、仲良くして下さると嬉しい」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
そして、ウェルバーン夫妻と別れて皆んなの所に戻ったのだが、何やらリッヒさん、シエルさん、メアリーさんの周りに若い男ばかりの人だかりが出来ている。
「どういう状況?」
俺が困惑していると、料理を大量に盛り付けて帰って来たティーが、
「ただの貴族の子供の嫁探しじゃ、よくある事じゃ」
そう言い、アリーも頷いている。
「ティーには誰も来なかったの?」
「今の妾の見た目に寄って来る奴がおったら、ただのヤバい奴じゃ」
確かにティーの見た目は幼いので、犯罪チックになりそうだ。
「っと、そんな事言ってる場合じゃなかった。早く助けないと」
「まぁまぁ、見ておれ」
そう言うので大人しく見ていると、
「私は男爵家の長男なんだが、良ければこの後部屋で飲み直さないか?」
「俺は子爵家の息子だ、そんな男よりも俺と良い事をしないか?」
そんな風に男達はシエルさんに詰め寄った来ているのだが、その全てを右から左に聞き流し、男達が喋り終えた瞬間、
「うるさい、邪魔」
と冷ややかな声で一蹴してその場を去り、俺達の方にやって来た。
「翼人族は、心が読めるのにあんなに取り繕っても意味ない」
と何で当たり前の事が分からないのかといった風に言うが、
「お主、今は翼を隠しておるじゃろ」
「そうだった・・・」
とティーに突っ込まれていた。
「じゃあ、悪い事した?」
「いや、悪い事をしようとしたのはあ奴らじゃから気にせんで良い」
「分かった」
と全く気にしてない様子で、ご飯を食べ始めた。
あとの2人に関しては、軽く殺気を放って相手を怯ませその場を去っていた。
「お嬢様、料理を取って参りました」
そんな感じで、振られる男達を見ているとエレオノーラさんとアンさんが料理を持って来てくれて、そこにオルフェさん達も戻って来たので、俺達も食べ始める。
「そう言えば、オーウェンさん達も今日は来て無いんだっけ?」
「何やら領地内で問題が出たそうで、手が離せないそうなんです」
「そうなんだ。大丈夫なのかな?」
「心配しなくて良いと、私も詳しくは聞かされて無いのですが・・・」
「どのみち明日の帰りに寄るわけだし、何があったか聞いてみる?」
「そうですね、手伝えそうな事であれば手伝いたいですし」
そんな感じで、翌日はオーウェンさん達のお手伝いになりそうだ。
そして、その後もパーティーはつつがなく続き、王の宣言で終了となった。
ちなみに、あの後も他の貴族が挨拶に来たが純粋にお祝いしてくれる人の方が少なく、殆どが後ろにいたリッヒさん達を狙って来た人達だった。
「はぁ〜、疲れた〜」
部屋に戻るなり、上着を脱いでソファにもたれかかる。
「お疲れ様です」
「貴族っていつもあんな事してるの?」
「まぁ、上の者に取り入ったり、下の者を取り入れたりと言った感じですかね」
「俺には向いて無いなぁ。表面上の取り繕いばっかりで嫌になってくるよ」
「ワタルさんは、領地も持って無いですし、何処かの上位の貴族に取り入る必要も無いので、今後はパーティーのお誘いは断って大丈夫かと思います」
「新参者だから反感は買いそうだけどね。とりあえず、国王主催とかウェルバーン伯爵のパーティーとかなら出席した方が良いよね」
「そうですね、その他の特に問題の無い家の方達もリストアップしておきましょうか?」
「うん、お願いしようかな」
とその日は、そのまま王城で一泊するのだった。
翌日、帰る前に国王へ挨拶をして行く。
「今回はありがとうございました」
「こちらこそ、来て貰って感謝する。それから、昨日のパーティーでは、他の者達が失礼した」
「いえ、皆んな特に問題なく対処出来ていたので」
国王は皆んなの正体を知っているので、慎重だ。
「うむ、料理が美味しかかったから許してやるのじゃ」
「ハハハ、ありがとうございます」
と国王はぎこちなく笑いながら言うが、ティーは別に何もされていないので、許すも何も無い様な気がする・・・
「さて、コタケ殿には他の貴族の様な責務は無いが、これからはマゼル王国の一貴族としてよろしく頼む」
「こちらこそ、お願いします」
別れの挨拶を済ませて、アリーの実家を目指して王城を出発したのだった。
活動報告にも書かせて頂きましたが、昨日新しい小説を投稿致しましたので、良ければそちらも読んで下さると嬉しいです。




