フワフワ
ある日、リビングでゆっくりしているとシエルさんが目の前にやって来て、
「ねぇ、私も働いた方が良い?」
と言ってきた。
「もしかしてオルフェさんの事、気にしてる?」
「うん、私もオルフェみたいに働いて役に立った方が良いのかなって」
「お金に関する心配は正直しなくても大丈夫ですし、シエルさんは今でも十分働いてるので大丈夫ですよ」
実際、狩りに加えて家事の手伝いや畑の作業など色々と手伝ってくれているので助かっている。
「それにシエルさんは、背中の翼が見つかるとマズイと思うし」
人前に出る事が無い翼人族が働いていると話題になったら色んな事に巻き込まれそうだ。
「そうだよね・・・翼、翼か・・・」
と何やら考え事をしながら自分の部屋に戻って行くのだった。
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それから数日後シエルさんは、
「少しの間、里に戻る」
と言って飛び去って行った。
他の人達にも理由は説明していないらしく心配になったが、とりあえず帰ってくるのを待つ事にした。
シエルさんが帰って4日が経ち心配が積もる中、その日のお昼にやっと帰って来たのだった。
「おかえり。大丈夫?皆んな心配してたよ」
「ごめん・・・里でしか沢山取れない物だったから」
よく見るとシエルさんの後ろに大きな風呂敷で何かを包んでいた。
「後ろの荷物を取りに行ってたの?」
「うん、そう。中身はまだ秘密。オルフェは家にいる?」
「今日はお休みみたいだから、部屋にいるよ」
「分かった。ありがと」
そう言うと、風呂敷を抱えて2階へと上がって行くのだった。
夜、ご飯を食べる時間になるとオルフェさんと一緒に降りて来た。
「2人して何してたの?」
俺がそう聞くと2人は顔を見合わせて、
「まだ秘密だもんね〜」
「うん、秘密」
と言った。
何かを作っているのだが、内容は教えてくれないらしい。
「ただ、楽しみにしてて欲しい」
シエルさんはそう言うのだった。
〜〜〜〜〜〜
それから1週間後のお昼時にシエルさんが皆をリビングに集めた。
「もしかして、作っていた何かが完成したの?」
「うん、そう。だから皆んなに渡そうと思って」
それを聞いて皆んなワクワクしながら待っていると、シエルさんが取り出したのは真っ白な布に覆われた枕だっのだ。
「枕?」
「そう。でも、ただの枕じゃない。私の翼の羽を使った枕」
枕をポンポンと叩きながらそう言う。
「じゃあオルフェさんの部屋に篭ってたのって・・・」
「オルフェは裁縫が得意だから作り方を教えて貰ってた」
「そうだよ〜。シエルちゃんすっごい頑張ってたんだよ!最初の方は針を何回も刺しちゃって血まみれになってたんだから」
「血まみれは言い過ぎ」
アハハとオルフェさんが笑う。
「私達、翼人族の羽はフワフワで気持ちいい。だから里でも抜けた羽は保存して寝具や服なんかにも使ってた」
「じゃあ、しばらく里に戻ってたのって」
「私が保存してた羽を取りに行ってた。里じゃ、他の人に作って貰ってたから私の羽は余ってた」
「そう言う事だったんだ。枕、貸して貰っても良い?」
「うん」
そう言って枕を受け取ると、
「うおっ!何これ!」
と驚きの声を上げてしまった。
今使っている枕は硬めの物だが、シエルさんの枕はフワフワでとても柔らかい。
しかも軽くて持っている感覚があまり無いのだ。
「好みの問題はあるだろけど、俺は凄く良いと思う」
「ありがと」
「妾も試したいのじゃ!」
「全員分あるからちょっと待って」
そう言って皆んなに枕を渡して行く。
「おぉ、確かにフワフワで気持ちいいのじゃ!これは、すぐに・・・ねむく・・・」
とティーが速攻で眠りに落ちた。
「これは凄いな。冒険者時代に1つあったらかなり嬉しかっただろう」
「これがあれば野宿も快適ですよね」
とエレオノーラさんとリッヒさんは言う。
他の皆んなも満足そうな顔をしている。
「シエルさん、ありがとう」
「私も皆んなが喜んでくれて嬉しい。次に作る物も考えてるから期待してて欲しい」
と言いながら微笑んだ。
その日の夜、早速シエルさん作の枕を使ってみるとあまりの快適さに1分も経たずに眠りにつき、朝までぐっすりと眠るのだった。
 




