アンとリビア
今回短めです。
「前からずっと気になってたんですけど、アンさんとリビアさんって何者なんですか?」
とある昼下がりにリビングで暇になっていた俺はそう言う。
「はて?急にどうしたのでしょうか?」
アンさんが不思議そうな顔をしながら言う。
「料理も家事もこなす万能メイドの2人が、どうやってアリーと出会ったのかなって思って」
「確かに気になる〜」
と他の人も興味津々だ。
「これといって面白い話は無いですよ」
「まぁまぁ、教えてくれても良いじゃんか〜」
オルフェさんに促されて、アンさんが口を開く。
「そう言うのであれば・・・まず、私とリビアは孤児として教会で暮らしていました」
「ちなみにアンとは姉妹というわけでは無く、たまたま歳が近かったので仲良くなった感じです」
「その教会には他にも孤児が沢山居ましたが、正直財政はよくありませんでした」
「そんな中で、貴族の務めとしてお嬢様がその教会にお手伝いにやって来たのです」
「あの時は確か私が10歳くらいでしたかね?学園の授業の一環で偶然にもそこに配属されたんですよ」
「今思えばかなり危険な事をしましたね。私達の様な者が勝手に話しかけたら不敬罪と言う貴族もいますから」
「そんな中でも、お嬢様は私とアンを雇ってくれたのです」
「アリーはどうして2人を雇おうと思ったの?」
「2人は孤児の中でも珍しく読み書きも出来ていたんです。それに、歳の近い専属のメイドがいればなとその時に思っていたので、ピッタリだったんですよ」
「やっぱり、その時から凄かったんだ。逆に2人はどうしてアリーに雇って貰おうとしたの?」
「えっと、その・・・」
2人は、もじもじしながら話そうか迷っている。
「言っちゃえば良いじゃないですか」
どうやらアリーは事情を知っている様だ。
「その、お世話になっていた教会の負担を少しでも減らせないかなと思って・・・」
「貴族の元で働ければ給料もかなり貰えますからね。2人は毎月の給料の一部を今でもその教会に寄付しているんですよ」
「良い子じゃ」
ティーが思わず感極まっていた。
「じゃあさ2人はメイドの仕事も最初から完璧だったの?」
とオルフェさんが聞いた。
「いえ、全然出来ませんでしたよ」
「でも、お2人ならすぐこなせそうな感じですけどね」
メアリーさんが言い、皆んな頷く。
「私達も初めは専属のメイドをさせられるとは思っても無かったので、それにお嬢様のお世話をしていた先代のメイドの方が・・・」
と何かを思い出したのかリビアさんは、ぶるりと震えていた。
「何かあったんですか?」
「とても厳しい方で、私とリビアは沢山しごかれたんです」
「その人は今どちらに?」
「現役を引退して、田舎でのんびりと余生を過ごしています。お嬢様の結婚式の時に手紙を出したのですが、その時は体の調子が悪く来れ無かったそうです」
「なるほど、どんな人か会ってみたいね」
「「う〜ん・・・」」
俺は一度も会った事ないのでそう言ったが、2人は会いたいと会いたくないの両方の気持ちがあるみたいだ。
「それなら、皆んなで会いに行きますか?」
アリーが急にそう言い出した。
「実は今度、実家の方にやって来るみたいで手紙が届いていたんですよ。私も久しぶりに会いたいなと思っていたので」
「それはナイスタイミングだね」
「あっ、勿論アンとリビアがちゃんと働いてるかのチェックもするそうですよ」
「「えっ!」」
「2人は弟子みたいなものですからね、きっと張り切っている事でしょう」
アリーは笑顔でそう言うが、アンさんとリビアさんの顔は真っ青になるのだった。
何はともあれ、2人をここまで育てた先代のメイドがどんな人なのか楽しみだった。




